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特集

日本人の13人に1人はLGBT 実はとても身近にいる、大切な人との付き合い方

見た目では分からないLGBTは、周りに「いない」のではなくて、「言えない」人が多いことを知ってください

LGBTとは、“Lesbian(レズビアン)”、“Gay(ゲイ)”、“Bisexual(バイセクシュアル)”、“Trans gender(トランスジェンダー)”の頭文字をとった略語で、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)を指す言葉としても使われています。

昨年4月に、渋谷区でいわゆる「同性パートナーシップ条例(正式名称:渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例)」が施行されて話題になったように、LGBTやダイバーシティ(多様性)は、現代社会の課題として注目を集めています。早稲田大学でも今年5月にLGBT問題について考える「WASEDA LGBT ALLY WEEK」を開催。また、7月には「ダイバーシティ推進室」を設置し、障がい者や外国人、セクシュアルマイノリティなどの支援を進めています。

しかし、まだまだその理解は深まっているとはいえないのではないでしょうか。そこで今回の特集では、早稲田大学在学中からLGBTをサポートする活動に取り組み、現在はLGBTの当事者や周りの子ども・若者を支援するNPO法人「ReBit」の代表理事を務める藥師実芳さんに、LGBTを取り巻く環境や、カミングアウト(告白)との向き合い方について話を聞きました。

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藥師 実芳(やくし・みか) 特定非営利活動法人ReBit代表理事。2013年、早稲田大学商学部卒業。在学中、公認サークル「Re:Bit」を創設し、卒業後にNPO法人化。「LGBT教育」「LGBT成人式」「LGBT就活」の3つの事業を中心に、LGBTの子どももありのままでオトナになれる社会を目指す。世界経済フォーラム(ダボス会議)が選ぶ世界の20代30代の若手リーダー、グローバル・シェーパーズ・コミュニティ(GSC)に選出。著書に『LGBTってなんだろう?—からだの性・こころの性・好きになる性』(合同出版)がある。NPO法人ReBitサイト: http://rebitlgbt.org

死んだつもりになってカミングアウト(告白)

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私たち「ReBit」は、LGBTを含めた全ての子どもがありのままの自分で大人になれる社会を目指すNPO法人です。LGBTや「ReBit」の話をする前に、まずは私自身のことについて話をさせてください。

私はもともと女性として生まれ、今は男性として生活をする“トランスジェンダー”です。小さいころから「自分は男性なんじゃないか」と自覚していましたが、当時、インターネットなどで「性同一性障害」について調べると、ホルモン投与による治療をすると30歳で死んでしまうとか、日本では働けないといった誤情報ばかりあふれていました。それで、誰にもばれないように生活をしなければ駄目だと思い、中学・高校は、いわゆる“女の子らしい生徒”を演じていました。

ところがそんな自分に限界が来てしまい、通学帰りの電車に飛び込もうとしたことがありました。それをきっかけに「死んだつもりになって周りにカミングアウトしよう」、そう思ったのが17歳のときでした。

クラスの友達に打ち明けたところ、その友達は間髪入れずに「藥師は藥師だからいいじゃん」と受け入れてくれ、おかげで自分らしく振る舞えるようになりました。その後、早稲田大学に入り、公認サークル「Re:Bit」を立ち上げたのが大学2年生のとき。卒業後の2014年にNPO法人としての活動をスタートさせました。

LGBT支援に先進的だった早稲田大学の取り組み

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LGBTに関する教材。(前列から時計回りに)教育学部の金井景子教授と手掛けたDVD『先生にできること ~LGBTの教え子たちと向き合うために~』、『LGBT就労支援ガイドブック』(特定非営利活動法人 ReBit)、『LGBT問題と教育現場-いま、わたしたちにできること-早稲田大学教育総合研究所 監修』(学文社)、『LGBTってなんだろう?-からだの性・こころの性・好きになる性』(合同出版)、『いろいろな性、いろいろな生きかた 全3巻【いろいろな性ってなんだろう?】【だれもが楽しくすごせる学校】【ありのままでいられる社会】』(ポプラ社)

 

2015年電通総研ダイバーシティ・ラボによると、現在、日本にはLGBTが約13人に1人いるとされています。これは、日本の六大名字である、佐藤・鈴木・高橋・田中・渡辺・伊藤さんを合わせた数より多いんです。にもかかわらず、高校生の約9割がLGBTについて学ぶ機会がないという現状があります。

そこで「ReBit」では、年間200回ほど学校現場や行政でLGBTについて講演を行うほか、早稲田大学の金井景子先生(教育・総合科学学術院教授)や、出版社などと一緒にLGBTに関する教材の製作、「LGBT就活」と題して就活生の支援や企業に向けた研修など、LGBTへの理解を広める取り組みをしています。

もっとも、NPO法人を立ち上げた当初は、公立の小中学校へ講演をしたいと申し出をしても、そのほとんどが断られました。実績のない団体だから、という理由もあったと思いますが、LGBTという言葉の認知がほとんどなかったため、「うちにそんな子はいない」「そんな性的な話はできない」「“寝た子”を起こしたらどうするんだ」といった、無理解から生じる誤解で断られることもありました。

そんな社会状況において、早稲田大学は、LGBTに関して先進的な取り組みを多くされてきました。例えば、日本で最も歴史のあるLGBTサークルの一つである「GLOW」を大学が公認サークルとして認めたのは1991年のこと。居場所のなかったLGBTの学生たちにとって、とても画期的なことだったはずです。

2015年には「Waseda Vision 150 Student Competition」で、学生団体「ダイバーシティ早稲田」が提案した「LGBT学生センターをつくる」が総長賞を授与されました。今年2016年には「WASEDA LGBT ALLY WEEK」 も、公認イベント企画サークル「qoon」など学生が声を上げ、大学を巻き込んだイベントを展開しました。

私個人の経験でも、健康診断で男女分けされる際、「個別対応にしてもらえないか」という依頼を保健センターにしたところ、快く応じていただけました。困った状況に対して対応してくれた早稲田大学に感謝をしていますし、学生と大学が連携し、さまざまな取り組みを進める風土を誇りに思います。皆さんにはそういったオープンマインドな精神がある大学に在籍しているんだ、ということをぜひ知っていただきたいと思います。

「カミングアウト(告白)」との向き合い方

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私は、現在は自身のセクシュアリティをオープンにして生活をしていますが、大学入学時はカミングアウトについて悩みました。今この瞬間も、同じように悩んでいるLGBTの学生も多くいるのではないでしょうか。カミングアウトは選択肢の一つだからこそ、カミングアウトすることが“良い”とは思っていません。一番大切なことは、自分らしく学生生活や社会生活を送ることであり、そのためにカミングアウトをすることを選ぶ人もいれば、しないことを選ぶ人もいます。でも誰かに話したいと思うことがあれば、早稲田大学にはLGBTのサークルや、相談できる専門機関もあるので、足を運ぶのもいいのではと思います。

一方で、LGBTなんて「自分とは関係のないこと」「カミングアウトなんかされたことないし」という学生も多いでしょう。

繰り返しになりますが、LGBTは国内に約13人に1人、約900万人いるといわれています。例えば、あなたのSNSには何人の友人が登録されているでしょうか? 13人以上いるなら、その中にLGBTの友人がいる可能性が高いです。LGBTは見た目では分からないからこそ「いない」とされがちですが、「いない」のではなく「言えない」ということを知ってください。

LGBTの話題は、友人、家族、パートナーといった、あなたにとって身近にいる、大事な人の話かもしれない、という意識を持っていただきたいです。

LGBTの学生に、誰か1人でも相談できる友人がいれば、その人にとってとても過ごしやすい大学となり、生きやすい世の中になっていくはずです。あなたの大切な人の中にもLGBTの人がきっといるからこそ、その人にとってその“1人”であってもらえたらうれしいなと思います。

ryt_108では、カミングアウトを受けたとき、どう向き合えばいいのでしょうか? 大事なことは次の5つです。

1.カミングアウトをする理由は大きく2つに分けられます。1つ目の理由はあなたを信頼して、自分について知ってほしいと思い、伝える場合。その場合は、「話してくれてありがとう」など、信頼を受け止めてください。

2.2つ目の理由は何か困っていることがあり、対応をしてほしい場合。その場合は、「何かできることある? 」など対応策について共に考えてください。

3.カミングアウトを受けた場合、誰に伝えていいのか/いけないのかを確認し、その共有範囲を決めてください。セクシュアリティは個人情報だからこそ、本人の同意なく、第三者に何かを伝えること(アウティング)はしないでください。

4.カミングアウトを受けたとき、戸惑うこともあるかもしれません。そのときは一人で抱えるのではなく、適切な機関を探してください。周りの友達に相談してしまうと、アウティングになってしまうので、専門機関に相談しましょう。

5.カミングアウト前後でその人が変わるわけではありません。だからこそ、変わらず友達でいてください。分からないことは相互にコミュニケーションを取って改善しましょう。

早稲田大学には、今年「ダイバーシティ推進室」が設置されました。また、学生主導でLGBTに関する支援もたくさんしています。学生部で新たな取り組みも始まると聞いていますし、保健センターには「こころの診療室」や「学生相談室」などもあります。LGBTは見た目では分からないし、かつ、なかなか言えないことなので「いない」とされがちですが、約13人に1人いるからこそ、LGBTが笑いのネタにされている環境があったら「それっておかしい! 」と言える人であってほしい。LGBTの人がいるということが当たり前であり、LGBTであってもなくても、同じように安心して自分らしく生活できる大学や社会であってほしいと願います。

学生のための「スチューデントダイバーシティセンター」が開設されます

学生部学生生活課 課長 関口 八州男

LGBT 特集 関口課長PH DSC_32912015年3月に「Waseda Vision 150 Student Competition」において、学生団体「ダイバーシティ早稲田」が提案した『日本初! LGBT学生センターを早稲田に!!』が総長賞を受けたことをきっかけに、学生部を中心に、学内関連箇所や学生サークルなどが連携し、LGBTに関するシンポジウムや講演会などが度々実施されるようになりました。学内の機運が高まる中、多様なマイノリティー学生が、安心して学業に専念できる学生生活環境の確保や、本学に集う全構成員が多様な価値観や生き方を受容するキャンパスづくりの推進を目的として、早稲田大学は「スチューデントダイバーシティセンター(以下、SDセンター)」を、2017年4月に設置することを決定しました。

SDセンターには、異文化交流を促進する国際コミュニティセンター(ICC)や、障がい学生支援室に加え、性的マイノリティー学生、およびその支援者(アライ)のための窓口として「ジェンダーオフィス(仮称)」を新たに設置する予定です。これらを統合することで学生部内の各箇所の活動を一度に知ってもらうことが可能となり、非当事者が当事者の存在(多様性)を自然な形で意識し、多面的・多角的な物の見方を身に付ける場の提供にもつながると考えています。

既に設置されている「ダイバーシティ推進室」は、大学全体のダイバーシティ推進の施策を担い、SDセンターは、その施策に沿って学生支援をする実行組織として位置付けられ、緊密な連携を取っていきます。

一人一人が輝くキャンパスをつくっていくために、多様性を積極的に受容するという理念を担うSDセンターの存在を、多くの学生の皆さんに知っていただければと思います。よろしくお願いします。

【次回特集予告】11月28日(月)公開「就活特集」

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