Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

「発達障がい学生」 広がる支援の輪 早稲田大学ができること

発達障がいを抱える学生の悩みはさまざま。個々に応じた支援が必要です

「こだわりが強く、対人コミュニケーションがうまく行かない」「同時に複数のことを行おうとすると混乱してしまう」「記憶力は優れているのに、物事を相対的に理解するまで時間がかかる」。こうした悩みを抱えている学生は、本人の怠慢や努力不足、家庭の養育の問題が原因と捉えられる傾向にありますが、生まれつき、またはごく早期から持っている「発達障がい」の可能性があります。このような障がいを抱える学生は近年、増加傾向にあります。本特集では「身体障がい」よりも周囲の理解を得られにくい「発達障がい」について、不安を抱える本人や周囲の友人など学生の皆さんがどこへ相談すればよいのか、どのような支援を受けることができるのかをご紹介します。

他の学生と同等の学習環境を得られるように

相互的な対人関係やコミュニケーションのつまずき、また興味や行動力の偏り(こだわり)を特徴とする「自閉症スペクトラム障害(ASD)」、年齢に見合わない多動・衝動性や、状況への不注意を特徴とする「注意欠如・多動性障害(AD/HD)」、読字困難・書字困難・算数困難などを伴う「限局性学習障害(SLD)」など、さまざまな症状がある発達障がい。日本学生支援機構の2014年度調査では、発達障がいを抱える学生は、全国の大学、短期大学および高等専門学校に2,722名在籍しており、5年前の約4.8倍になるなど急増しています。早稲田大学では従来、発達障がい学生の修学支援は「保健センター学生相談室」を中心に行っていましたが、障がい学生支援室に発達障がい学生支援部門が設置された2014年6月以降は、障がい学生支援室が中心となって発達障がい学生を支援する体制になりました。

そして、障害者差別解消法の施行(2016年4月)に伴い、早稲田大学は「早稲田大学障がい学生支援に関する基本方針」を策定・施行しました。そこでは、広く社会に開かれた学問の府として、本学の構成員(=学生・教職員)ならびに構成員となることを志す者に対して、障がいの有無に由来する差別を行わないとともに、障がいの有無を問わず、構成員の多様性が教育研究において重要であることを深く認識し、これを能動的に維持・増進させることを目的としています。そして、学生を「早稲田大学の学生ならびに、高等学院、高等学院中学部、本庄高等学院の生徒および芸術学校の学生」と広く定義し、早稲田大学や高等学院、高等学院中学部、本庄高等学院、芸術学校への入学志願者も対象としています。詳細は、早稲田大学障がい学生支援室Webサイトを参照してください。

学生が所属する各学部や研究科、学校にはそれぞれ学生の相談窓口があり、大学全体を見渡すと、保健センター学生相談室やこころの診療室(医療部門)、キャリアセンターなど、学生の相談窓口や支援機関が豊富に用意されています。障がい学生支援室ではこうしたセクションと連携しながら、発達障がいのある学生が他の学生と同等の学習環境を得られるよう、全学的な支援環境の整備に努めています。

障がい学生支援室 発達障がい学生支援部門

発達障がいの診断のある学生については、修学上の困り事を聞き取りながら、合理的配慮が必要なことについては関係箇所と調整するとともに、自分自身でできる対処方法も学生と一緒に検討していきます。

発達障がいの診断のない学生については、相談内容に応じた適切なセクションを紹介しています。

修学上の困り事や悩み事があって相談先を探している場合は、まずはお気軽に「障がい学生支援室 発達障がい学生支援部門」までお問い合わせください。また、発達障がいに関する広報活動や啓発活動、研修も実施しています。

Tel:03-3208-0587
E-mail:[email protected]

障がい学生支援室Webサイト

学生相談室

学業や進路、対人関係や心理的な問題に至るまで、学生生活上のどんな悩みにも応じる“よろず相談室”です。臨床心理士によるカウンセリングだけでなく、弁護士による法律相談も行っています。

発達障がいの診断のない学生の修学・学生生活支援はここで行っています。また、発達障がい学生(またはその傾向を自覚している学生)を対象としたグループカウンセリングも実施しています。障がい学生支援室を利用している学生も利用可能で、対人関係や生活面などの相談を受けています。

Tel:03-3203-4449

学生相談室Webサイト

こころの診療室

「こころの診療室」を含む保健センターは、学生が生涯を通じて心身の健康を自己管理できる力を身に付けられるよう支援しています。こころの診療室では、保健師が窓口となって心の相談に応じ、併せて精神科医(精神保健指定医・男女)が診療にあたっています。また、保険診療で処方も行います。

「やる気が出ない」「授業に出席できない」などの内容で相談に来る学生の中には、発達障がいがあると診断される場合もあり、AD/HDについては必要な場合、適応薬の処方も行っています。

また昨年度より、成人の発達障がい専門外来を持つ晴和病院(東京都新宿区弁天町)との連携を開始しました。具体的なソーシャルスキルを身に付けるための発達障害専門の集団療法プログラム(デイケア)への紹介も行っています。

Tel:03-5286-8743

こころの診療室Webサイト

発達障がい学生が抱える修学上の困り事

集中できることは長所でもあるのですが、過度な場合は悪影響も

過集中で心身共に疲れ切ってしまう

「集中できることはいいことではないか?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、普通の集中状態とは違い、体や心の健康を保てないことがあります。「3日も寝ずに取り組み、気が付いたら気を失っていた」「こだわりが強く、日常生活など他のことには無頓着になってしまう」など、過集中によって体力や気力を消耗してしまう人がいます。集中できることは長所でもあるのですが、授業への出席や健康面に悪影響を及ぼすため注意が必要です。

情報を整理して適切に判断することが苦手

必要な情報に自らアクセスすることが苦手であるため、レポート課題や補講があることを先生や友達に指摘されるまで気付かなかったり、情報を適切に取捨選択することが難しいために、偏った情報に振り回されたり独り善がりに陥ってしまうことがあります。

困り事や悩み事があるときはどのように支援を求めればいいですか?

修学面あるいは学生生活面で悩みや不安がある場合は、教員や学部・研究科・学校の事務所に相談してください。学生が相談できる身近な存在として、各学部にはクラス担任あるいは学年担任、学生担当教務主任の教員がいて、充実した学生生活を送るためのアドバイスを行い、修学上の問題を抱える学生の早期発見に努めて適切な対応を行っています。また、各学部・研究科・学校の事務所でも相談に応じています。困った事があったときは一人で悩まず、身近な教員や学部事務所に相談してみてください。きっと良い方策を一緒に考えてくれるでしょう。

障がい学生支援室においても、修学上の悩み事の相談を受け付けています。

学生はどのような支援が受けられるのでしょうか?

サングラスや耳栓の使用許可も合理的配慮の一例です

早稲田大学は、障がいのある学生が他の学生と同等の教育・研究に参加できる機会を確保するために、合理的配慮を検討し実施しています。合理的配慮とは、大学にとって実施に伴う負担が過重ではなく、教育や評価の基準を変えない範囲において必要かつ適当な変更・調整を指します。また、課題や評価の要求レベルを変えることなく方法や手段を変更・調整して支援することであり、障がい学生支援の大きな柱となっています。

合理的配慮は個々の学生の状態や特性などに応じて提供するもので、多様かつ個別性が高いため、全ての内容を網羅して示すことは困難ですが、一例としては次のようなものがあります。

自閉症スペクトラム障害があり、感覚過敏が顕著で授業中に集中力を保つことが困難な場合

⇒ すぐに移動できるような座席の配慮、耳栓やサングラスの使用が認められることがあります。

限局性学習障害があり、読み書きの困難が顕著で時間内の課題遂行が困難な場合

⇒ 講義の録音許可、講義資料の提供、試験の問題用紙や解答用紙の拡大、試験時間の延長が認められることがあります。

合理的配慮は、障がい学生支援室によるアセスメントや本人の要望に基づいて、本人が所属する学部・研究科や学校との調整によって提供され、一人一人の障がいの状態やその時々の教育的ニーズに応じて適時、見直しを行うことになります。

発達障がい学生支援部門を利用している学生の声

「分からないことを友人や先生に聞くことができず授業についていけなくて困っていましたが、支援室では遠慮せずに相談することができ、基礎的なことからレポートの作成の仕方など、分かるまで個人に合わせてきめ細かく対応してもらえて助かっています」

「他人とコミュニケーションを取るのが苦手で、先生に質問や相談ができないのですが、いろいろな方法で先生とのやりとりを仲介してもらい、疑問点を解決することができました」

「支援室とのつながりは、自分の苦手なところを和らげるのに役立っています。支援室でのサポートは日常の中にごく自然に溶け込んでいるため、私には「支援されている」という特別な感覚はありません」

「勉強に行き詰まって、一時期は退学することも考えていましたが、支援室で困り事を調整し、環境を整えてもらったおかげで解決の方向に向かい、今は順調に学業を続けられています」

「支援室の面談を通して、自分がどこでつまずいているかが分かりました。今では勉強へのモチベーションが高まっています」

【次回特集予告】6月27日(月)公開 「学内だけで英語力を伸ばすには」

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