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特集

SNS との付き合い方 経営学博士(Ph.D.)X 就活生、就活予備生

2016年卒業予定者の採用選考期間が後ろ倒しになるなど、スケジュールの大きな変更が行われる就活戦線。異なる過程を歩んだ先輩の体験談は、以前よりも参考にしにくくなるかもしれません。

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を舞台に就職・採用に関する情報発信が活発化している中、SNSブランディングや、情報の真偽の見極め・取捨選択はどのように進めていくべきでしょうか?

SNS事情に詳しい経営学博士(Ph.D.)の入山 章栄 (いりやま あきえ)商学学術院准教授が就職活動中ならびに就職活動を控え、SNS利用に悩む学生二人と語り合いました。

早稲田大学ビジネススクール准教授 入山 章栄 (いりやま あきえ)

早稲田大学ビジネススクール准教授 入山 章栄

専門は経営戦略論、国際経営論。慶應義塾大学経済学部卒業。慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程 修了。三菱総合研究所に勤務した後、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程で博士号を取得。米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授 を経て、現職。著書にベストセラーとなった『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)などがある。

 

 

政治経済学部4年 角 真理子 (かど まりこ)さん 
文化構想学部3年 棚網 良子 (たなあみ りょうこ)さん

●どのSNSを何に活用すべきか?

入山 お二人は就職活動にSNSを積極的に活用していますか?

棚網 Twitterで企業の人事や就活アドバイザーをフォローしているくらいです。いわゆるセルフブランディングのようなことはしていません。

 私は就職ではなく進学に切り替えたのですが、一時期、就職活動をしていました。その当時の使い方としては棚網さんと変わりません。

入山 自己アピールに利用しないことには、何か理由があるのですか?

棚網 身近な成功例を聞いたことがないからです。それこそ「セルフブランディングが実って第一志望の企業に入社した」という先輩でもいれば、考え方が変わるのかもしれませんが…。

 分かる。学生の多くは積極的に自己アピールしようとは考えてないよね。

棚網 でも、やらないと就職活動で遅れを取る気もしてモヤモヤしています。

入山 そこは大丈夫でしょう。人事は人の中身を見るプロですから、本当に魅力がある人は採用されますよ。就職活動において大事なのは面接の機会を得ること。面接の機会獲得を左右するのは、今のところSNSの発信内容ではなくエントリーシートですからね。

棚網 すると、SNSでの自己アピールはあまり意味がないのでしょうか?

入山 一概には言えませんが、例えばメディア業界やIT業界では、面白いコンテンツを発信する力や、多様な情報の中から有用なものを拾い上げてまとめる編集力が求められます。従って、伝え方や切り口にセンスを感じさせる投稿あるいはシェアなどは、こういう業界では良いアピールになるでしょう。

 自己アピールとは少し異なりますが、Facebookのアイコン画像やカバー画像に関して、「充実した日常を感じさせるものである方が人事の心証が良くなる」といったうわさを耳にしました。

入山 そのお話は、経済学の「情報の非対称性」と呼ばれる側面で考えられます。例えば学生はどの面接でも「貴社が第一志望です」と言いますよね?けれども実際は志望企業に序列がある。さらに学生がいくら面接で自己アピールをしても、その能力が本当に備わっているか分からない。そこで、企業は学生の本心や能力を探るため、その人に関わる「外に見える」情報にアクセスしようとします。このような情報を「シグナル」と言います。例えば企業が「学歴」を重視するのは、それがその人の目に見えない能力のシグナルになっているからです。そう考えると、企業によってはSNSを「その人の本心」のシグナルと見なすことも考えられます。

棚網 では、SNSで自分をさらけ出すなんてとてもできないですね。

入山 程度の問題です。仮にSNSをシグナルと見なす企業も、あくまで採用間近の学生のネガティブチェックの範囲でしょう。ただ、情報劣位者が情報優位者のシグナルを集めようとするのは自然なことで、お二人も当然行っていると思います。就職活動中は活動を有利に進めようと多様な情報を得ようとしますね。その中に一見して妥当と思われる二つの正反対の内容の情報があったとしたら…、そんなときは情報ソースを確認しませんか?

 確かにSNSで気になる投稿を見たら、情報ソースの有無は確認します。ソースがない情報は怪しいですから。

棚網 私はフォロワー数の多さを見ます。あまりに少ないと信ぴょう性に欠けます。あとは偏見かもしれませんが、ベンチャー企業より大企業の方が情報の信頼度が高い気がしています。

入山 そうですね。まさに「ソースがあるか」「フォロワー数の多さ」がシグナルになっているわけです。

棚網 ただ、判断がつかないこともありますよね。私の代から新卒者の採用期間が短縮されたことで、インターンシップの重要性が増していると新聞などでも目にしました。それを受けてなのか、ある就活アドバイザーが「多くの企業はインターンシップ参加者からのみ採用する」という趣旨のツイートをしたんです。こういう人はフォロワー数も多くて真偽の判断に迷います。かといって、就職活動の話題は進捗状況に話が及ぶこともあって、友人同士で触れにくくて…。

入山 結論から言うと、うのみにしない方がいいと思います。情報源へのアクセスの自由度が高いTwitterは、経営学の世界では「弱い結びつきのネットワーク」といわれ、幅広く情報を集めるのには有効なツールです。ただし、日本のTwitterは世界有数の匿名性の高さから飛び交う情報が玉石混交であり、かつFacebookなどと比べてセンセーショナルな内容が評価されやすい。これを就活市場に当てはめると、「初めての経験故に情報劣位者となりやすい学生に対し、企業や就職活動支援を掲げる企業あるいは個人が情報優位者となっている」状況です。つまり、就職活動時の不安はこうした不均等な情報構造に根差す部分が大きいと考えられますね。

 だとすれば、どうすれば不安を取り除けるのでしょうか?

入山 大事なのは信頼できる大人に会って話を聞くことではないでしょうか。Twitter等で幅広く情報を得た後、深掘りしたい事柄について話を聞ける人をFacebookのような信頼性の高いSNSで見つけるのはどうでしょう。これからの時代、ネットの情報は誰もがアクセスできるため価値が下がります。だからこそ、就職活動中はSNSを活用して多くの人に会い、そこでしか得られない情報をたくさん集めることが大切なのです。

●SNSの情報をさばく心得3カ条
其の一
情報の真偽を判断する際は、情報源の「シグナル」を確認せよ!
其の二
本当に必要な情報はSNSで人脈を作り信頼できる人から直接聞こう!
其の三
就活中の不安は不均等な情報構造によるもの。自分を卑下する必要はない!

キャリアセンターより
●就職活動におけるSNS利用と注意点
企業情報の発信や採用情報の公開、さらにインターンシップの募集のために、SNSを活用する企業は年々増えています。日々更新される企業のSNSは、ホームページのような型にはまった情報とは違い、担当者の生の書き込みがあり、企業を身近に感じることができます。また、IT企業やベンチャー企業をはじめ一部の企業は、SNSを使って採用活動を行っています。このようにSNSは、企業の採用における一つのツールとして活用されています。SNSを活用することで就職活動の幅を広げることができます。

しかし、一方で注意も必要です。キャリアセンターの就職相談で次のようなものがありました。「SNSに、羽目を外した写真をアップしてしまい、それが友人を通して拡散されてしまった。削除し切れないので、選考に影響があるのではないか」─。最近は、企業の人事担当者が応募者のSNSをチェックしているところもあります。SNSは、いつ、どこでも、誰もが見ることができます。あなたのSNSも見られている可能性があるという事実を意識して、書き込みは慎重にすることが大切です。

調査方法:
Waseda-netポータルを通じてアンケートに回答
調査期間:2014年7月16日~8月5日
回答者:早大生58人

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