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早稲田大学 誕生の時 〜130年前の10月21日に秘められたドラマ〜

早稲田大学の創立記念日である10月21日は、130年前に早稲田大学の前身である東京専門学校の開校式が行われた日に当たるが、そこに至るまでにはさまざまなドラマがあった。今回はその開校までの軌跡を追ってみた。
取材協力:大学史資料センター 助手 伊東  久智

東京専門学校の誕生

今から130年前―1882年10月21日。この日、早稲田大学の前身である東京専門学校の開校式が行われた。記念すべき第1期生は、全国各地から集まった若者約80名。式典には、政界関係者や東京大学の教師、慶應義塾の福澤諭吉らが来賓として迎えられた。

▲『小野梓像』(會津八一記念博物館蔵)  岡 吉枝作 カンヴァスに油彩   79.7×59.5㎝ 制作年不詳

校長や議員(評議員)らの祝辞に続いて最後に登壇したのは、開学の立役者・小野梓であった。小野は壇上で、「学問の独立」を唱え、十数年後には東京専門学校を大学の地位にまで高めたいとの抱負を明らかにした。彼の熱を帯びた演説に、聞く者は手に汗を握った。後に早稲田大学の「建学の母」とも呼ばれる小野は、このとき30歳という若さだった。その小野の日記によれば、式典後の宴を含め、この日の参会者はのべ500人にも上ったという。

転機となった「明治14年の政変」

1881年10月に起こった「明治14年の政変」。これが東京専門学校を誕生させる遠因の一つとなった。大隈重信が政府を追われると、小野もそれに従って勤めていた会計検査院を辞職。日本の近代化のためには政党政治の実現と人材育成が急務だと考えた二人は、半年後の1882年4月16日には立憲改進党を立ち上げ、これと同時に、やがて樹立されるであろう立憲政治の指導的人材の養成を主たる目的とした学校の設立を構想した。

準備からわずか半年あまりでの開校

▲早稲田大学の前身・東京専門学校の外観と大隈重信、教場、書庫の様子。撮影時期:1897(明治30)年頃

小野が日記の中で、学校の設立について初めて触れているのは、7月になってからのことである。翌8月下旬までには校名が「東京専門学校」と決まり、9月に入って学校の設立申請を行うと、9月22日には『郵便報知新聞』に学校の開設と入学者募集を知らせる広告が大々的に掲載された。けれども、その時点ではまだ東京府の設立認可は下りておらず、開校日も決まっていないという状況だった。それほど慌ただしく、急ピッチで開校準備は進められたのだ。

当時、数ある私立学校の中でも、東京専門学校は独自の考え方を持っていた。そのうちの一つが日本語による講義だ。その頃、唯一の大学であった東京大学はもちろん、他の高等な学問を教授する私立学校などでも、教科書は洋書を用いるのが普通であった。そのため、学生はまず外国語を学ぶことから始める必要があり、学問の修得に時間がかかっていた。それに不満を持っていた小野は短期間で人材を育成できるよう、日本語による教育にこだわった。また、学費面でも同時期の東京大学の授業料が1カ月あたり2円50銭だったのに対し、東京専門学校は1円(後に1円80銭となる)という安さだった。日本語による速成の教育と安い授業料は、学生たちにとって非常に魅力的だった。

▲1890(明治23)年頃の東京専門学校の様子。学校の周りには緑豊かな風景が広がっていた

開校時に設置された学科は、政治経済学科、法律学科、理学科の三つで、特に政治経済学科を独立の学科としたことは他の学校にはない特徴だった。このため、学校には大隈や小野らの理念に共鳴し、政治について高い意識を持った若者が多く集うこととなった。

入学試験は開校寸前の10月半ばまでに行われ、21日に開校式が挙行された。学校開設の準備に本格的に乗り出してからわずか半年あまり。「学問の独立」を体現する学校が1日も早く必要だという大隈と小野の熱い思いが、最短とも言ってよい期間での開校を実現させたのだ。

▲1882年9月22日「郵便報知新聞」に掲載された東京専門学校開校を知らせる広告

受け継がれる建学の理念

学校の開校からおよそ3年後、小野は肺結核により33歳という若さでこの世を去った。けれども、生前から彼を慕って学校運営に尽力していた高田早苗、天野為之、市島謙吉、そして後に加わった坪内逍遙らがその志を受け継ぎ、今日に至る礎をつくりあげた。

大隈と小野が強く訴えた「学問の独立」は、その後「早稲田大学教旨」の中にも明記され、130年後の今日へと受け継がれている。

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・建学にまつわる貴重な資料が集結
「早稲田大学創立130周年記念
大隈重信と小野梓─建学の礎展」

早稲田大学創立130周年を記念して開催される本展では、東京専門学校創設前後の大隈重信と小野梓に関係する資料が一堂に展示されます。普段は見ることができない資料がそろう貴重な機会です。ぜひお見逃しなく!

【期間】10月9日(火)~11月10日(土)
10:00~18:00
【会場】大隈記念タワー10階 125記念室
【主催】早稲田大学 大学史資料センター
【URL】http://www.waseda.jp/archives/

連携講演会
「建学の礎を見つめ直す
―大隈重信・小野梓と東京専門学校―」

【講師】井上 琢智 氏・五百旗頭 薫 氏・真辺 将之 氏
【日時】11月5日(月)14:45~17:00
【主催】早稲田大学 大学史資料センター
【会場】大隈講堂(小講堂)
申込不要・聴講無料

※併せて10/9〜11/10、早稲田キャンパス 2号館  會津八一記念博物館内大隈記念室では、大隈重信が遭難時に着用していた服や緋のガウンの実物を展示しています(通常はレプリカを展示)。
【時間】10:00~17:00 ※入館は16:30まで
【会場】早稲田キャンパス2号館
會津八一記念博物館内 大隈記念室
【閉室日】日曜・祝日 ※10/21、11/3、11/4は開室

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