Waseda Weekly早稲田ウィークリー

学生注目!

『頭文字D』で伊香保温泉をPR 学生発案プロジェクトが実現

創造理工学部 4年 岩瀬 直人(いわせ・なおと)
企業が実際に抱える課題について、早稲田大学の学生たちがチームを組んで課題解決に取り組むプロジェクト「プロフェッショナルズ・ワークショップ(※1)。このプロジェクトから生まれたアニメを資源とした地域活性化企画が、群馬県渋川市の伊香保温泉を賑(にぎ)わせています。伊香保温泉などを舞台に車で峠道を高速で走行する“走り屋”の若者たちを描いた人気漫画・アニメ『頭文字D(イニシャルディー)』(※2)に着目した8人の学生が発案した企画で、同温泉地にはスマホ片手に関連スポットを巡ってスランプラリーなどをする観光客が訪れるようになりました。メンバーの一人で創造理工学部4年・岩瀬直人さんに話を聞きました。

※1 プロフェッショナルズ・ワークショップは、企業(社会人)と大学が共通する一つの目的に向かって、プロジェクトを遂行する早稲田大学の社会連携教育プログラム。プロフェッショナルズ(企業人など)の指導や監修のもと、課題抽出・分析・フィールドワーク・グループワークなどを通して、課題解決の具体的提案を導き出し、最終報告では経営トップに対して提案を行う。通称「プロプロ」。

※2 1995年より『週刊ヤングマガジン(講談社)』で連載が始まり、アニメ化されたほか、実写映画やアニメ映画なども公開された。

――なぜプロプロに応募したのでしょうか。

2年生のときに参加したのですが、早いうちから少しでも社会に貢献する仕事というものを体験したいと思って、企業と大学が連携して教育プログラムを行っているプロプロに応募しました。このプロジェクトはチームではなく個人として、あらかじめ各参加企業から提示された興味のあるプロジェクトを選ぶので、メンバーが誰になるのかは事前には分かりません。私が参加したのは「新たな視点で伊香保温泉を盛り上げる」という旅行会社JTBによるプロジェクトです。メンバーは8名で、全員が初対面でした。

伊香保温泉でフィールドワークを行ったプロジェクトメンバーの一部。中央が岩瀬さん

――JTBのプロジェクトを選んだ理由は?

私の出身地は、富山県南砺(なんと)市にある合掌造りで知られている五箇山という地域で、物心ついたときから観光そのものが身近な存在でした。また、地方出身者が集う学外の学生団体「SUKIMACHI」では、「地元好き集まらん会」というイベントなどで大好きな地元の魅力を発信しています。こうした経験から、日本の観光業をどのように盛り上げていくかという視点は、卒業後の就職先にも関わってくる可能性があると考えていました。そこで「⽇本の魅力を再発見・発信して訪日外国人向け旅⾏サイトを作る」という、JTBのプロジェクトに興味を持ちました。具体的な課題は、良いところはたくさんあるけれども発信できていない「伊香保温泉」の魅力が伝わるWebサイトのラフ案を考えてほしい、というものでした。

――どのように伊香保温泉の魅力を探し出したのでしょうか。

最初に東京で行われたワークショップでは、伊香保温泉現地で行うフィールドワークに向けて、各メンバーで地域の魅力を探りました。すぐに分かったことが、世界的に人気のある『頭文字D』の舞台だということでした。『頭文字D』は、特にアジアでは関連のイベントが行われるほどの人気ぶりで、香港や台湾、韓国からは伊香保温泉のロケ地巡りをするために、観光客が日本を訪れていました。この魅力を最大限に生かしていけば、訪日外国人の増加につながるのではないかと思いました。

――どのようなフィールドワークを行ったのですか。

伊香保温泉の石段街

伊香保温泉に1泊2日で行ったフィールドワークでは、作品に登場した場所を実際に見て回りました。『頭文字D』の主人公は「伊香保温泉近くにある豆腐屋の息子」という設定で、モデルとなったかつて実在していた豆腐屋が「伊香保おもちゃと人形自動車博物館」(群馬県吉岡町)に再現されていました。主人公の愛車「スプリンタートレノAE86」(愛称・ハチロク)も展示されていました。榛名湖や伊香保温泉石段街など他の登場スポットも巡り、作品をモチーフにしているスポーツカーをテーマにした人気カフェにも行って、店員の方にインタビューしました。外国人観光客の反応や地域の魅力を聞き、実物のハチロクをレンタルして観光スポットを巡るツアーが人気であることなど、さまざまな情報を集めることができました。

――出来上がったWebサイトのラフ案とは?

東京に戻ってからのグループワークでは、『頭文字D』を核としたアニメツーリズムによって、どのように伊香保温泉を活性化していくかを考えました。プロプロでは最終的には企業のトップの方にプレゼンテーションをします。なぜ『頭文字D』なのかという根拠、訪日外国人数の伸び方、どういった国から来ると予想できるか、ということをデータで示せるように準備しました。プロジェクトであらかじめセッティングされていたグループワークの時間以外でも、早稲田キャンパスにみんなで集まって、発表に向けて夜遅くまで議論をすることもありました。最終的に提案したのは、『頭文字D』のデザインを前面に押し出したWebサイトで、作品の関連スポットが一目で分かるようなサイトでした。現地の写真の中に作品の登場人物を入れて、榛名湖や伊香保温泉石段街なども風景写真と漫画を比較できるようにしました。今、実際に使われているWebサイトには、当時のコンセプト案が生かされていると思います。

「頭文字D×舞台めぐり×るるぶトラベル」より

――プロプロを通じて学んだことはどのようなことですか。

訪日外国人の方が伊香保に訪れたとき、どのように感じるのか。自分の視点とは違う、他者の視点を考えるということの重要性を学びました。今ではニュースを見ても、自分ではない他人の視点で見たら、どのように感じるのかなど、多角的に物を検討することを自然とできるようになりました。大学と企業が関わっている産学連携プログラムだったのですごく責任感を感じていました。自分たちの企画案が実際に伊香保温泉で実現され、とてもうれしいです。少しでも多くの観光客に伊香保温泉を訪れてもらいたいですね。卒業後は建設コンサルタント会社に就職するので、都市計画や観光振興にも関わっていくことがあると思います。プロプロの経験を生かしていきたいですね。

――では、今回のプロプロの経験を踏まえて、大好きな地元「五箇山」をPRしてみてください。

五箇山の合掌造り

富山県・五箇山の魅力は何と言っても、多くの人が頭の中でイメージするような「ザ・田舎」が残っていることです。世界遺産にも登録されていて、日本で一番大きな合掌造りもあります。同じく合掌造りで有名な「白川郷」は観光地化が進んでいますが、五箇山では生活用途として、依然として利用されている合掌造りも多くみられ、素朴でのどかな雰囲気が魅力です。イワナのおすしや山菜などもおいしく、日本で一番古いと言われる「こきりこ節」などの民謡もあり、私も「胡弓(こきゅう)」という弦楽器を弾いて、踊ることもあります。

ちなみに「こきりこ節」は、昭和初期には歌える人が少なくなり伝承が途切れかけていたそうなのですが、詩人・作詞家で早稲田大学教授でもあった西條八十(※3)が五箇山を訪れて楽譜を書き取ったことがきっかけとなり、後生に残すことができたそうです。五箇山までは東京から新幹線と車で約3時間。昔ながらの日本の原風景を求めている方はぜひ、お越しを。

※3 さいじょう・やそ。1892~1970年。早稲田大学文学部卒業後にフランスに留学。その後、早稲田大学教授としてフランス文学の研究を行った。詩集出版のほか、童謡から流行歌まで幅広く作詞を手掛け、『青い山脈』『王将』など多数のヒット曲を生み出した。日本音楽著作権協会会長なども務めた。

第713回

【プロフィール】富山県出身。県立砺波高等学校卒業。在籍する創造理工学部社会環境工学科では、都市計画・交通計画など建設系の分野を学んでいる。趣味はランニングで、フルマラソンの経験もある。高校までは、陸上競技やクロスカントリースキーなどに取り組んだ。

©しげの秀一/講談社 ©舞台めぐり

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