Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田の学問

【グローバル企業を訪ねる】校友に聞く 海外で活躍するために必要なこと(後編)

ファスナーの世界トップブランドであり、71の国・地域で事業を展開するYKK株式会社。グローバル企業を訪ねる(後編)では、商学学術院の谷口真美教授とゼミ生が、校友の山本純一(やまもと・じゅんいち)さんに海外勤務について伺いました。

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海外勤務について先輩に聞きました

YKK株式会社 ファスニング事業本部 事業推進部 汎用資材戦略推進室 鞄グループ レザーグッズ&ラゲッジチーム長/課長職 山本 純一(やまもと・じゅんいち)さん

1999年、早稲田大学社会科学部卒。同年、YKKに入社。大阪で5年間、国内営業に従事した後、2004年から海外駐在を経験。イタリア、南アフリカ、フランスで計10年間勤務。現在は日本の本社に勤務し、ファスニング事業のかばん部門で事業の戦略立案などを行っている。

YKKに入社された動機は何ですか?

海外勤務を経験したかったからです。

就職活動中は、日本が得意とするものづくりの企業で、海外展開をしている会社を志望していました。海外で事業を拡大させている会社で海外勤務に挑戦し、私自身が成長したかったからです。その条件に合ったのが当社でした。とはいえ、私自身は入社前の海外経験は卒業旅行でハワイに行ったくらい。語学もからきしだめでした。

海外でのお仕事において、心掛けていたことは何ですか?

「パス」を供給する黒子に徹していました。

海外で与えられたミッションは、各国の現地法人が立てた事業計画達成のサポートをすることでした。「ゴール」を決めるのはあくまでも現地の社員。私は「パス」を供給する黒子に徹していました。例えば、イタリアでは営業に同行するものの、基本的なやりとりは現地のスタッフに任せていました。その中で課題や問題が見つかれば、製造や開発などに働きかけて、お客さまのニーズに応えることができる下地をつくるという流れですね。

絶対にやってはいけないのが、価値観を押し付けることです。例えば、フランスでは勤務時間中に毎日「コーヒータイム」があって、1時間ほど井戸端会議が繰り広げられます。最初は正直、「仕事をしないで何してるんだ」と思いましたが、彼らにとっては大切なコミュニケーションの時間なんです。そうした「間」を尊重することなど、相手をリスペクトする姿勢は常に大切にしていました。

ただし、譲れないルールもありました。それは仕事の締め切りや待ち合わせの時間を厳守すること。仕事の基本である時間管理については、徹底するようにしていました。

海外勤務で学んだことは何ですか?

現地に飛び込めば、何とかなることを実感しました。

南アフリカ駐在を打診された際は、治安が悪いイメージがあったので、かなり戸惑いました。でも、いざ暮らしてみると危険を感じることは少なく、むしろご飯はおいしいし、自然も豊か。そうやって、現地に行かなければ分からないことって、たくさんあります。取りあえず飛び込んで、一から学ぶ。そんな姿勢さえあれば、「何とかなる!」という自信を持てたことは大きいですね。

過去の歴史から根強く残る差別意識に直面することも珍しくありませんでした。日本では経験することのないマイノリティの立場で世の中を見られたことは、貴重な体験だったと感じています。

これからの目標について教えてください。

再び、海外勤務に就きたいです。

現在、当社のファスナーは9割を海外で生産しています。つまり当社の主要市場は海外ということです。今は日本で海外の市場拡大に向けた戦略を練る立場ですが、再び、現地のニーズを直に感じながら仕事をしたいと考えています。これまでの経験を生かし、今度は経営により近い業務で貢献したいですね。

早稲田大学の後輩たちにメッセージをお願いします。

学生時代は多様な経験と出会いを大切に。

私は英語もろくに話せない状況から、最初の駐在地であるイタリアへ飛びました。仕事と生活をする中で言葉を覚え、文法はでたらめながらも、何とか現地の人とコミュニケーションを取ってきました。語学面や知識面は後からいくらでも鍛えられます。ですから学生時代は、勉強だけでなく部活動やアルバイトなど、なるべくいろいろな経験を積んでください。その時に培った人のネットワークや得た学びは、後々思わぬところで生きることがあります。ただ、本はたくさん読んでほしいと思います。社会人になると、なかなかその時間を確保するのは難しいですから。

早稲田大学の校友は海外にもたくさんいます。世界に広がる稲門ネットワークの誇りと絆を大切に、ぜひ海外へ挑戦してみてください。

訪問した学生の感想(左から)

・海外では、地元人になること、挑戦的であること、環境の変化に耐えられることが大切だと感じました。 (谷村 栞)
・世界で製品を均質化する一方で、「人」は現地のスタイルに合わせることが求められているんですね。 (安福 睦実)
・オープンマインドな姿勢を貫くことが、グローバルで事業を成功させる秘けつだと学びました。 (アンナ・ゲルベル)
・マイノリティの立場は僕にとって未知の世界。海外でしか得られない経験があると気付かされました。 (森合 弘毅)

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(『新鐘』No.83掲載記事より)

※記事の内容、教員の職位および学生の所属・学年などは取材当時(2016年度)のものです。

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