Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早稲田の学問

学生同士で語り、考える グローバルの「入り口」から見えたこと<後編>

多様な国と地域から学生が集まる早稲田大学には、その国際性を生かして、グローバルへのさまざまな「入り口」が用意されている。代表的な存在といえるのが、学生同士が交流するICC(異文化交流センター)。前編に続き、ICCでイベントを企画・運営する学生スタッフに、異文化交流から得たことを聞きました。また、OB・OGには、現在の活躍ぶりを伺いました。

>> 前編はこちら

商学部 4年 郁 驍(イク・キョウ)
中国の中学校の語学選択で日本語を割り当てられ、高校時代に留学した際、日本の暮らしやすさを気に入り、また、ビジネスを勉強したかったことから早稲田大学へ。米国への留学経験もある。

感情に流されず、冷静に物事を見る

僕は海外で心掛けていることがあります。1つはその国について理解し、現地の習慣に合わせること。もう1つは、中国人としての目線を忘れないこと。二方向から見る力が付いたおかげで、物事を客観視できるようになりました。例えば、日中の領土問題に関しては、どちらが正しいかという見方ではなく、軍事バランスを保つためとの見方が成り立ちます。このように感情に流されず、冷静に判断する力はグローバル社会でとても大切だと思います。

また「偏見」の多くは、国家間の経済力のギャップに原因があると感じます。だからこそ僕は将来、ビジネスの世界で中国と日本をつなぐような仕事に就き、両国の経済発展に貢献したい。その結果、良好な日中関係が築かれるとうれしいですね。

文化構想学部 3年 チェ・ユナ
韓国からファッションの勉強を目的に来日。日本語の専門学校に通う中、ファッションの中でも、出版などメディアの仕事に携わりたいと考えるようになり、早稲田大学へ入学。

まず大切なのは、「自分を形成」すること

異文化交流をする上では「自分」を形成することがまずは大切だと考えています。視野が狭い状態でさまざまな文化・人々と触れ合っても、かえって偏見が助長されるだけだと思うからです。以前は、私も興味のあること以外には全く関心を示さない性格でした。そんな中、「英語力を伸ばしたい」と参加したICCでたくさんの刺激を受け、当初の目的を越えて活動するようになりました。人と接する際は、相手の価値観の土台となっている生活環境や文化に思いをめぐらせ、アイデンティティーを理解するようになったことは、大きな変化です。

将来は、メディアでファッション関連の発信をすることが目標です。服を通じてアイデンティティーを表現する。そんなファッションの新しい可能性を追求したいです。

政治経済学部 4年 加藤 遥菜(かとう・はるな)
家族の仕事の関係で、0歳からイタリア、オランダ、イギリスで暮らす。グローバルで活躍するには、自国の歴史・文化について正しく理解することが必要と考え、15歳で日本に帰国。

一歩を踏み出す大切さを教えられた

日本で暮らしていると、周囲の帰国子女への先入観から、息苦しく感じることがあります。日本人の私ですらそうなので、マイノリティの人々はもっと大変な思いをしています。日本は住みやすいですが、生きやすい場所とは言えません。しかし、社会の圧倒的マジョリティである日本人にはそれを知らない人も多いと感じています。そんな問題意識から、ICCではマイノリティの立場について理解を深めるイベントを企画してきました。

また、「属性」に関する情報が一切ないまま、学生たちが交流する「ノーボーダー」(※)というイベントでは貴重な体験をしました。「知りたい」という思いさえあればどんな人とも交流できる。その手応えは大きな収穫です。4月に、社会に出てからも国や文化の架け橋として活躍したいです。

※ 互いの国籍や学部、学年、年齢、実名さえも教えないまま学生同士が交流するイベント

 

ICCの学生スタッフOB・OGからのメッセージ

さまざまな価値観に触れることで世界への道が開ける

2013年 大学院アジア太平洋研究科卒 加藤 真理子(かとう・まりこ)さん

青少年の交流と相互学習を促進するプロジェクトのモニタリングにてウズベク民族の青少年たちと

私はICCの学生スタッフ時代、在日フィリピン人の歴史や課題、日本のホームレス支援をする米国人NGOワーカーの活動など、特定の人・人々の生き方や文化に着目したイベントを多く企画していました。現在はユニセフ・キルギス共和国オシュ事務所で平和構築担当官として、教育、子どもの保護に関連するプロジェクトの企画立案・実施などに従事。ICCで多様な文化背景をもつ仲間との交流が、業務でも非常に役立っていると感じます。

在学生の皆さんに一番伝えたいのは「世界=海外」ではないということ。同じ国の人同士が、必ずしも同じ文化や価値観を共有しているわけではありません。多くの人の価値観や生き方に触れ、さまざまなことに挑戦することで世界への道が開けていくと思います。

 

多様な人と協働する機会が世界で仕事をする土台を育てた

2010年 政治経済学部卒 菅原 雄一(すがわら・ゆういち)さん

UNMISS西エクアトリア事務所のオペレーションルームにて、同僚と

国連の情報分析官として、南スーダン共和国の西エクアトリア州で、政治および治安情勢の分析を担当しています。多種多様な価値観が交錯し、予想もつかないことが毎日のように起こる環境ですが、ICCでの国際協力に関係するイベントの実施を通じて多くの人と協働する機会があったからこそ、国連で最も重要視される基本姿勢の一つである「Respect for Diversity(多様性の尊重)」が実現できていると感じます。将来は国連本部や研究機関で、現場の知見と学術研究の橋渡しができるような専門家として活躍したいと考えています。

在学生の皆さんも自分の興味・関心に正直に、世界観を広げるような体験を貪欲に求め続けてください。きっと将来「早稲田にいてよかった」と思えるような学生時代を過ごせると思います。

成長する学生たちはICCの財産そのもの

ICCセンター長/国際学術院 教授 三神 弘子(みかみ・ひろこ)


ICCは設立から丸10年が経過しました。今回、誌面に登場してくれた学生たちのコメントを見るだけで、本当に素晴らしい人材育成の場になっていることを実感します。ICCの活動を通じて、それぞれが葛藤しながら、さまざまな気づきや学びを得て、未来につなげようとしてくれている。そんな学生を数多く輩出してきたことが、10年にわたる活動の何よりの財産だと感じます。ICCではこれからも学生を主体とする活動を続け、皆さんがグローバルな社会で多様な生き方を見つける一助になれればと思っています。

(『新鐘』No.83掲載記事より)

※記事の内容、登場する教員の職位および学生の所属・学年などは取材当時(2016年)のものです。

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