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ウクライナ支援団体設立 国境を越えて、国際協力活動に励む早大生

「ウクライナへの思いを形にし、後悔のない支援をしたい」

政治経済学部 3年 小澤 未侑(おざわ・みゆう)

2022年2月24日に開始した、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。戦闘は現在も続いており、日本でもそのニュースを目にしない日はありません。そんな中、学生によるウクライナ支援団体「Take a Step for Peace」が3月10日に設立されました。代表を務めるのは、政治経済学部の小澤未侑さん。「後悔のない支援をしたい」と話す小澤さんは、カンボジアの小学校に自費で図書室を寄贈した経験を持っています。今回のインタビューでは、小澤さんが国際協力活動を始めたきっかけや、ウクライナ支援の具体的な内容、そしてTake a Step for Peaceの今後の活動などを聞きました。

――ウクライナへの支援活動を始めた理由について教えてください。

きっかけはテレビで見た東日本大震災のニュースです。その日は3月10日、震災から11年になる前日でした。当時の私は小学3年生で、東北の人たちに対して何もできなかった。長年心残りだったそのことを、ニュースをきっかけに思い出しました。しかし、現在の私は大学生で、何かやりたいと思ったときに行動へ移す力があります。今起きているウクライナの問題から目をそらして後悔したくない、今度こそ役に立ちたい。そうした思いから、ウクライナへの支援活動団体「Take a Step for Peace」を立ち上げました。

組織のビジョンは、「できることから一つずつ平和な未来へ」。
現在の中心メンバーは早稲田大学の学生がほとんどだという

――具体的にはどのような活動を行っているのでしょうか?

Take a Step for Peaceの活動目的は、ウクライナへの人道支援です。これまで、JR新宿駅付近での街頭募金活動やクラウドファンディングを利用した支援金募集を中心に活動してきました。集まった支援金は「UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)」に寄付し、衣服や食料などの支援に役立ててもらっています。ゼミの同期と2人で始めた小さな団体でしたが、LINEのオープンチャットで有志を募ったところ、多くの協力者を得ることができました。実際に活動に参加してくれた人は100人を超えています。

募金活動を行う小澤さん

街頭募金にはこれまで大勢の方が応じてくれました。活動中は早稲田の卒業生の方々が頻繁に声を掛けてくださり、早稲田の持つ強い絆を感じましたね。また、自分たちの活動がメディアに取り上げられたことで、遠方からわざわざ寄付をしに来てくださった方も。何より、私たちを応援してくださる声が大きな励みになりました。そんなたくさんの支援を受け、4月末には当初掲げていた目標金額100万円を大きく超える180万円以上の寄付金が集まったんです。

――今後の活動についてはどのように考えていますか。

現在、早稲田の飲食店に募金箱を設置させてもらうプロジェクトを準備中です。これには、継続的に支援金を確保すると同時に、募金箱を目にすることでウクライナ情勢への関心を持ち続けてもらいたいという意図もあります。

実は、街頭募金活動は4月末で一度打ち切っているんです。その理由は参加人数の不安定さ。活動開始からしばらくすると、ウクライナのニュースを見慣れてしまったのか、参加者が少しずつ減っていきました。時には、2人だけで募金活動を行ったこともありましたね。反対に、人道回廊の設置やミサイル攻撃などの新たな情報が流れると、参加人数が20人を超えるなんてことも。人々の関心の振れ幅は、組織を運営する上でも非常に悩ましいことでした。そうした背景もあり、これまでとは違った試みとして募金箱プロジェクトを立案したんです。また、戦争が長期化すれば、それだけ必要とされる支援も多様化していきます。人道支援にこだわらずに別の形で支援をしていくことも視野に入れつつ、今後も活動方針を模索していきたいです。

――小澤さんは過去にカンボジアの子どもたちに「図書室」を寄贈していますが、どのようなきっかけがあったのでしょうか?

カンボジアの子どもたちと

始まりは、高校入学前の春休みに参加した、カンボジアでのボランティアツアー。そのツアー中にガイドの方と仲良くなり、観光客が訪れないようなベトナムとの国境地帯に連れて行ってもらう機会があったんです。そこでは、水牛の亡きがらが横たわっていたり、小さな子どもたちがはだしで外を走り回っていたりと、最初は日本との大きなギャップに衝撃を受けました。しかし、現地の人は言葉の通じない私とも明るく接してくれ、また、短い期間ではありましたが子どもたちとも交流し、楽しい時間を過ごしました。

そして帰国後、親交を深めた現地の人たちのために何かしたいと考えるように。それが、カンボジアでの活動のきっかけであり、国際協力活動に興味を持ったきっかけでもあります。

――現地の人との交流が小澤さんの原点だったのですね。では、どうして図書室を寄贈したのでしょうか。

自分で勉強できる環境を子どもたちに作ってあげたいという気持ちからです。現地には公立の小学校がありましたが、先生はたったの1人。子どもたちはあまり多くのことは学習できない状況にありました。それでも、彼らは学びへの意欲がとても旺盛で、日々勉強を楽しんでいたのです。そんな姿を見て「もしここにたくさんの本があれば彼らはもっと勉強できるはずだ」と考え、地域の子どもたちが利用できる図書室を贈ることにしたんです。

現地の方々の協力を受け、プロジェクトを開始したのは高校1年生の頃。場所の選定や設備内容などを検討する会議はスカイプを使って行いました。かかった期間は9カ月ほどで、完成した図書室をみんなが喜んでくれたときは感慨深い気持ちになりました。

プレイベン州チャム村にある小学校にて。図書室設置費用(約67万円)はお年玉など小澤さんが貯めてきたお金で賄った

このプロジェクトの成果の一つとして挙げられるのが、子どもたちの中学校への進学率です。図書室設立前の現地の進学率は10%ほどでしたが、5年たった今では40%にまで上昇しました。私の活動がこのような形で貢献できていることには誇らしさを感じています。

自分が主体となって大きなプロジェクトを行ったのは、これが初めての経験でした。慣れていないためにつまずくこともありましたが、一つの組織をマネジメントするという実践的な経験が積めたのは大きな収穫だったと思います。今回のウクライナ支援においても、このとき学んだ組織構築のノウハウに助けられた場面が何度もありました。

――最後に、今後の進路や目標について教えてください。

小澤さんは高校時代にも米国へ留学しており、カンボジアの図書室寄贈プロジェクトは留学先で進めていたという

早稲田大学のGLFPプログラムを利用し、今年の9月から米国・ワシントン大学に留学する予定です。向こうでは、以前から興味のあったジェンダー学や政治心理学などの分野を学ぼうと考えています。起業にも関心があるので、将来的にやりたいと構想している事業についての勉強もしたいですね。

留学中はTake a Step for Peaceの活動と少し距離を置くことになってしまいますが、組織には信頼できる仲間がいるので心配していません。私が抜けた状態でも、彼らがやることは私がやりたいことと重なっていくと思います。もちろん、私自身も活動に関わっていきたい思いはあるので、米国からも可能な限り参加していきます。

第819回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
法学部 3年 佐久間 隆生

【プロフィール】
大阪府出身。帝塚山学院高等学校卒業。学生たちの個性あふれる雰囲気に魅力を感じ、早稲田大学に入学したという。食べることが大好きで、趣味で運用しているInstagramのグルメアカウントはフォロワー5,000人を超えている。

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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