Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

「これ、何の授業?」学びの中に気付きがある 早稲田で学ぶ多様性とは?

早稲田キャンパス 6号館前にて。左から、佐藤さん、秋谷さん

数ある授業の中で必修科目以外に何を選択するか。早稲田大学では多様性を重んじており、学生の興味に沿ってさまざまな科目を選択することが可能で、所属学部以外の授業も受講できます。今回は、ダイバーシティに関する理解を深めるための科目を紹介! どんな授業内容で、何について学べるのか、さらに、受講して気付いた点などを実際に受講した学生にインタビュー。また、担当教員にも授業についてコメントしていただきました。関連する科目はたくさんあるので、気になる授業を探してみてください。

また、早稲田大学には早大生のためのスチューデント・ダイバーシティ・センター(以下、SDC)があります。人種、エスニシティ、国籍、ジェンダー、セクシュアリティ、障がいの有無、宗教、年齢などにかかわらず、多様な学生の豊かな学生生活環境の確保と、多様な価値観や生き方を受容するキャンパスづくりの推進を目的に、ICC(異文化交流センター)、アクセシビリティ支援センター(ARC)、ジェンダー・セクシュアリティ・センター(GSセンター)、学生相談センター(SCC)の4つのセンターを設置。現在、SDCでは「ダイバーシティ月間」を開催中です。ぜひチェックしてください!

INDEX
▼「生活支援工学」「ジェンダー・スタディーズⅠ」
▼「ジェンダー論」
▼「ジェンダーと法Ⅰ」
▼ダイバーシティに関する理解を深めるための科目一覧
▼SDC「ダイバーシティ月間」開催のお知らせ

「生活支援工学」「ジェンダー・スタディーズⅠ」

佐藤さんは人間科学部開講の「生活支援工学」を、秋谷さんは教育学部開講の「ジェンダー・スタディーズⅠ(身近なことを視座にして)」を受講。実際にどんな授業だったのか、また、受講してみて気付いたこと、視点が変わったことなどを聞きました。

人間科学部 2年 佐藤 友香(さとう・ゆか)
教育学部 1年 秋谷 陽向(あきや・ひなた)

左から佐藤さん、秋谷さん

気付いたのは、障がいのある・ないではない 「誰にとっても」という視点

――それぞれの授業を受けようと思った理由を教えてください。

「受講前は、ジェンダーやダイバーシティという言葉は慎重に扱うべきというイメージでした」と話す佐藤さん

佐藤:もともと生活支援工学に興味があったんです。祖父が足を動かせなくなったことがあって、その時に生活に不自由を感じている人を支援できる仕事に就きたいと思ったのがきっかけでした。

秋谷:僕は特にジェンダーに強い関心があったわけではないんです。社会系の授業を取る必要があって探していた時に、難しくなさそうという安直な理由で履修を決めました。

意外にも、ジェンダーについて触れない時間が長い⁉
――実際に授業を受けて、どのように感じましたか?

「ジェンダーやダイバーシティについて知識として学んではいましたが、人前では触れてはいけない、配慮が必要な話題という認識でした」と、秋谷さん

秋谷:驚いたのが、ジェンダーの授業なのに、ジェンダーについて触れない時間が長かったことです。先生から授業のきっかけとなる随筆や楽曲が提示されて、その後にグループワークをするんですが、しばらくは「これ、何についての授業?」みたいな感じで。最後に先生から、こんなジェンダーの観点があったと明かされるというような展開なので、身近にあるジェンダーの問題に自分で気付く感覚があり、すごく面白かったです。

ある回では、お気に入りの靴を絵に描くという課題が出て。そういう一見関係のないところからスタートしたのに、最後に靴職人や靴について考えることで、一転してジェンダーの視点が浮かび上がったんです。しかも、このグループが良かったなど評価されることもなくて、授業そのものが多様性にあふれていました。

佐藤:「生活支援工学」もグループワークが多かったです。障がいがあってコミュニケーションを取るのが難しい人とコミュニケーションを取る方法をグループで話し合ったり、実際に障がいがある方の話を伺ったりしました。

正解がない問題に、答えを見つける
――どんな授業内容が印象に残っていますか?

左から、巖淵守教授、藤本浩志教授(いずれも人間科学学術院)。「生活支援工学」の授業はお二人の先生が担当

佐藤:脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう)という病気でほとんど体を動かせない方にお話を伺った時は、たくさんのことに気付かされました。人と話すとか、行きたい場所に行くとか、私たちが日常で行っていることは当たり前ではないんですよね。

今の生活支援工学において、どのような課題があるかを考える授業もありました。グループで課題を提示したら、次はそれに対するアンサーを見つけるように言われて。なんとか解決策をひねり出したんですが、正解がない問題なので、答えを見つけるのは難しかったです。

――授業を受ける前と後で、印象が変わった部分はありましたか?

佐藤:生活支援“工学”だから、最初は難しい計算をするのかもと身構えていましたが、障がいを持つ方への支援という視点が最初にあり、そこに工学を利用するというアプローチだったのが意外でした。それに、障がいのある人のための学問だと思い込んでいたのですが、障がいのある人が使いやすいものは誰にとっても使いやすいという「ユニバーサルデザイン」の考え方が中心にあって、「誰にとっても」という観点が大事だと気付きました。

――秋谷さんは、期末レポートがユニークだったと先生から伺いました。

秋谷:15歳の自分に向けて「ジェンダー・スタディーズ」の授業を考えるっていうテーマだったんです。授業で靴を描いたことが強烈に印象に残っていて、そこから「好きな人を描いてみよう」という授業を考えました。「好きな人を描く」という言葉の中には、当たり前がいっぱい隠れています。好きな人と聞かれて、パートナーとしての異性を思い浮かべる人もいれば、同性を思う人もいるし、家族や親友など、好きの捉え方はさまざま。さらに、描くと言われると、顔や全身など外見に焦点を当てがちかなと思ったんです。だから、身体的な特徴を描くことは禁止して、逆にそれ以外なら何でも良いという設定にしました。

秋谷さんが提出した課題の表紙

例えば、パートナーと散歩する時間が好きだから足元を描くとか、外見を禁止にすることで、その人との関係性を表現してもらえるんじゃないか。描くという行為を通して、誰もが固定観念を持っていることや、人を表すのは外見だけではないってことに気付けるかな、と思いました。

佐藤:私も、顔や全身を描いちゃうかもしれないです。それがダメだったら、色とか言葉で表現するかも。

秋谷: 僕の友達は好きな人のLINEのアイコンを描いていました。友達にとっては、LINEでの会話が相手との関係性を象徴しているんだなって。人を好きになることは、相手と自分との関係を好きになることだという僕の持論があって、それをうまくまとめることができました。

視野の広がりと、自分で考えることの大切さ
――授業を経て、自分の中で変化したことはありますか?

佐藤:今まで、障がいなどで生活に不自由を感じている人は私の周りにはいないと思っていたんです。でも、当事者の話を聞いたことで、本人から聞かないと分からないことがあると知って。これまでは見ようとしていなかっただけで、本当は身近に悩んでいる人がいたのに向き合っていなかったのかもしれないと感じました。見えていなかったことが見えるようになったというか、少しだけ視野が広くなったような気がしています。

階段でしか行くことができない、所沢キャンパス 100号館S棟の1階。佐藤さんは「普段何気なく利用している場所でも、移動しやすいつくりか、という視点から見るようになりました」と話す

秋谷:僕も周りにLGBTQ+を公言する友達もいなくて、授業を受ける前は、当事者には配慮して“あげる”べきだと漠然と思っていました。でも、身近にさまざまなジェンダーにまつわる問題があると知って、「配慮するってなんだろう?」「その配慮は当事者にとってうれしいものなのか?」と考えるようになりました。これでいいんでしょって決めつけてしまう危うさを自分の中にも感じたので、ここからは自分で考える番だと思っています。

▼「生活支援工学」巖淵守教授(人間科学学術院)

この授業では、障がいのある人をはじめ、生活やコミュニケーションに困難を抱える人々の支援に、技術(テクノロジーと技法)がどのように役立ちうるかについて考えます。例えば、けがや病気によって自身では通学が困難と感じる状況が生まれても、学びを続けられ、就職をかなえるなど、自らが望む活動を支えることに私たちは何ができるのか? 早稲田大学の環境を例として議論しながら、受講生の皆さんの将来の活動の場も含めて、誰もが暮らしやすいインクルーシブな環境づくりに本授業が役立てばと願っています。

▼「ジェンダー・スタディーズⅠ(身近なことを視座にして)」金井景子教授(教育・総合科学学術院)

何年か前の受講生から、「この授業は、自分の性も他人の性も理解し、誇りをもって生きるための練習問題なんですね」と言われて、うれしかったことを思い出します。毎週のシラバスで、「〇〇からの贈り物」と題しているのは、ジェンダー・セクシュアリティについて気付きを与えてくれる先人たちを紹介し、先人たちが生涯をかけたチャレンジの贈り物を受講生たちと受け取って、共に喜び、もっと素晴らしい贈り物にして、次世代に手渡したいという気持ちを込めています。

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「ジェンダー論」

文化構想学部開講の「ジェンダー論」を受講した谷口さん。ジェンダーについて基礎的に学ぶため、1年生の時に受講したそうです。

文化構想学部 4年 谷口 未奈(たにぐち・みな)

戸山キャンパス 33号館前にて

気付くことに意味がある

「ジェンダーとは何か」をさまざまなトピックから理解していく構成で、自分に当てはめて考えることができました。ジェンダー論を「世界を斜めから見る学問」と評していた友人がいたのですが、確かに私も、世の中の新しい見方に気付かせてくれるのがジェンダー論の面白さだと感じるようになりました。

毎回のディスカッションには、学年も専攻も多様な受講生がいました。さまざまな考えに触れることで、自分の思い込みに気付き、驚くこともありました。回を重ねるうちに、自分の発言が誰かを傷つけうることにも目が向くようになっていったんです。「苦しいということは、今まで気付かないうちに誰かを踏みつけていたということ。足を退かせられるのが一番良いけれど、まずは踏みつけていると気付くことに意味がある」という先生の言葉がとても印象的でした。

当時を振り返ってみると、周りに合わせて無理しなければならないと思ってしまっていた部分がありました。授業を受ける中で、そうではないと気付かせてもらえて、とても気が楽になりました。授業をきっかけに思い込みに気付くことができて良かったな、と思っています。

▼「ジェンダー論」豊田真穂教授(文学学術院)

ジェンダー論では、日常の中で、あまりに自然で、これまで何も感じたり疑ったりしなかったことに目を向ける視点を身に付けてもらえたらうれしいです。世界がきっと、これまでとは違って見えてくるでしょう。この学問に触れることで、私自身、救われたように感じた経験があります。皆さんも学ぶことで、人生や心が軽くなることもあれば、これまで気付かなかった抑圧に気付くこともあるかもしれません。そうして知識を重ね、視点を広げていくことで、誰かの痛みを知り、新しい自分に出会うための入り口に立てるのかなと思っています。この授業が、皆さんの世界が広がるきっかけになればうれしいです。

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「ジェンダーと法Ⅰ」

法学部開講の「ジェンダーと法Ⅰ」は、先生から一言いただきました。

▼「ジェンダーと法Ⅰ」石田京子教授(法学学術院)

法律は、誰にでも同じように適用されるものだと思っていませんか? しかし、誰がルールを作り、誰の経験や声を踏まえて解釈・適用するのかによって、見えてくる姿は変わります。「ジェンダーと法Ⅰ」では、ジェンダーの視点から法の「当たり前」を問い直します。今ある法律の解釈にとどまらず、法はどうあるべきかを一緒に考えてほしいと思っています。ジェンダーに関心のある人も、法律や身近な社会の仕組みに疑問を感じている人も歓迎です。

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ダイバーシティに関する理解を深めるための科目一覧

早稲田大学にはさまざまな学部があり、多様な授業がそろっています。下記は一例ですが、その他自分の気になるキーワードから関連する授業を探すこともできます。シラバス検索の参考にしてみてください。

▼ダイバーシティに関する理解を深めるための科目はこちらからチェック!

ダイバーシティ関連科目

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SDC「ダイバーシティ月間」開催のお知らせ

早稲田大学スチューデント・ダイバーシティ・センターでは、「ダイバーシティ月間」を開催しています。詳しくは、SDCのWebサイトから!

SDC主催! ダイバーシティ月間 -Re:think Diversity- ◆2026年10月~12月

 

取材・文:末光 京子(1998年理工学部卒)
撮影:小野 奈那子

【次回フォーカス予告】11月2日(月)公開「学園祭特集」

早稲田が分かる大学公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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