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2024年度小野梓記念学術賞を受賞【先進理工学研究科 長谷部翔大さん】
Wed 16 Apr 25
Wed 16 Apr 25
早稲田大学先進理工学研究科 先進理工学専攻 一貫制博士課程5年 長谷部 翔大さんが小野梓記念学術賞を受賞しました!
2025年3月26日の早稲田大学卒業式・大学院学位授与式にて賞状とメダルが贈られました。長谷部さんに、今回受賞された研究や今後の予定などのお話を伺いました。
※小野梓記念賞は、建学の精神を顕揚することを目的に1958年に制定され、学術、芸術、スポーツの三部門において、特に抜群の成果を上げ、学生の模範と認められる者に対して贈られます。


研究テーマについて
先進理工学研究科・朝日研究室に所属し、朝日透先生と小島秀子先生のご指導のもと、光で動く「フォトメカニカル結晶」の開発に取り組んでいます。
結晶の身近な例としては氷や塩、ミョウバンが挙げられ、「かたい」「割れやすい」「光に反応しない」イメージがあります。しかし一部の有機結晶は光を当てると、割れることなく生き物のようにしなやかに動くことができます。これらの光で動く「フォトメカニカル結晶」は、見ていて楽しいのみならず、光を直接運動エネルギーに変換できることから、光で動くロボットなどへの応用展開も期待されています。
参考1) 研究内容をまとめたアニメーション:https://youtu.be/wE0ijVJpsxk
参考2) 個人websiteの研究紹介:https://sites.google.com/view/shodaihasebe/research_1

小野梓記念学術賞の賞状・メダル、学位記
小野梓賞で評価されたポイント
1点目はフォトメカニカル結晶の性能向上です。従来のフォトメカニカル結晶は動きが遅く (< 5 Hz)、利用できる光が紫外光に限定される欠点がありました。私は光熱効果と固有振動というこれまで注目されてこなかったメカニズムを活用することで、3桁の高速化 (> 1000 Hz) と、利用できる光の波長の拡大 (紫外、可視、近赤外、白色光) に成功しました。2点目は論文数です。先生方のご指導のお陰で、現在までに国際英文誌に筆頭著者として9報、共著として6報、計15報 (いずれも査読あり) の論文を発表した点を評価して頂きました。
研究に没頭した理由は?
研究は、勉強、いわゆる受験勉強や学部での学びとは、「真逆」でした。勉強は、答えが分かっているものを、制限時間内に正確に解く行為ですが、研究は、答えが未知の課題を、時間無制限で考え続け、自分なりの答えを見つけ、論文という作品を発表する営為です。そのことに、学部4年生のころに気づき、せっかく研究室に所属して研究を行うのなら、博士まで5年間集中して研究に携わりたい、そして自分なりの作品を作りたいと思うようになり、研究に没頭しました。

研究風景(結晶を顕微鏡で観察している様子)
研究テーマとの出会いは?
生物に限らず幅広い研究ができそう、と考え、朝日研究室を志望しました。そこで、結晶学、材料化学の分野に出会いました。もともと綺麗なものが好きだったので、光を当てると色が変わったり動きを示す綺麗な結晶を扱いたいと思い、今の研究を志望しました。
今後どのような研究をしたいですか?
「きれい」、「面白い」と思ってもらえる研究をしたいです。大量消費社会の現代だからこそ、私は画家、映画監督、作曲家などの作品を生み出す仕事に憧れがあり、自分は論文という作品を出し続けたいです。研究は、「誰もしていないことに取り組み、結果を論文という作品に纏めあげる」ことが重要であるため、芸術性やセンスも大事な面であると思います。

長谷部さんが趣味で撮影した写真
趣味は?
美術館巡りです。特にアンリ・ルソーの『眠るジプシー女』が好きなのですが、ニューヨーク近代美術館で実際に、生で見たときに、色や表現に魅了されました。写真撮影も好きで、現在絶賛練習中です。名作と呼ばれる絵画や写真は見る人に強烈な印象を与えますが、私も相手に強い印象を与えられるような写真、そして研究成果を出せたらと思っています。
今後の予定は?
研究を続ける予定です。今年の9月までは朝日研究室にて次席研究員として、その後は、日本学術振興会・海外特別研究員としてコロンビア大学(ニューヨーク)にて材料化学の研究に取り組みます。前例のない新機能を持つ材料を開発したいです。
後輩たちへのメッセージ
研究は、勉強ができるGPAトップ層が向いているイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。成績が良くなくても、好奇心があったらぜひ研究に一生懸命取り組んでみてください。創作が好きなら、研究に向いているかもしれませんよ。