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抗がん剤投与によるがん幹細胞様特性獲得の促進メカニズムに迫る~学生インタビュー~
抗がん剤を使用して生き残った細胞から分泌される特定のタンパク質が、がん細胞の増殖を促進することを明らかに
Tue 21 Nov 23
抗がん剤を使用して生き残った細胞から分泌される特定のタンパク質が、がん細胞の増殖を促進することを明らかに
Tue 21 Nov 23
早稲田大学 教育学部・大学院先進理工学研究科所属の伊藤悦朗教授の研究室では、生物医学分野をはじめとする専門分野を対象に、独自の技術で極微量のタンパク質を測定する研究を進めています。今まで検出できなかった極微量タンパク質の検出・測定が可能となることで、脳神経やがん領域において革新的な進歩が期待されるほか、製薬やヘルスケア、食品・環境領域といった各分野での応用まで見据えられます。
今回は伊藤研で活躍する先進理工学研究科 生命理工学専攻 修士課程1年 佐藤朱音(さとうあかね)さんに、TWInsでの研究をはじめとする様々なお話を聞きました!


まずは早稲田大学教育学部理学科生物学専修を志望した理由を教えてください。
もともと生物学と医学に興味があり、高いレベルの教育が受けられ、かつ少人数制の学科を志望しました。
現在、どのような研究をしていますか?
細胞同士のコミュニケーションを研究しています。特に現在は、がん細胞に対象を絞って研究しています。
実験が楽しいと思うのはどんな瞬間ですか?
仮説通りの結果が得られた時と、育てている細胞の調子が良い時です。細胞の調子は、顕微鏡で覗くと目で分かります。細胞の調子が良いと実験の結果もうまく出ることが多いです。

伊藤悦朗教授の指導のもと、実験をする佐藤さん
今回学会で発表された研究について詳しく教えてください。
抗がん剤を使用して生き残った細胞から、抗がん剤のストレスを受けて分泌される「エクソソーム」の中の「GRP78」というタンパク質が、周囲の細胞に悪影響を及ぼすことを発見しました。これを受け取った細胞は「がん幹細胞」化してしまい、がんが悪化してしまうのです。
今回の成果に繋がったきっかけなどあれば教えてください。
一つの研究を研究室のメンバーで繋いできました。メンバーの努力の積み重ねが、今回の成果に結びついたのだと思います。
研究を行う上で苦労した点を教えてください。
培養細胞の世話が大変でした。細胞の調子が良い状態で実験をしたいので、培地を変えたり、場合によってはフラスコ自体を変えたり、様子を見ながら細胞の環境を整えました。

ご自身が描いたグラフィカルアブストラクトで、わかりやすく説明してくれる佐藤さん
今後の目標を教えてください。
まずは今回の発見をきちんと周知できるよう、論文にまとめたいです。今後薬学会での発表などもあるので、わかりやすく説明できるよう頑張りたいです。
普段の生活についても教えてください。
休みの日は、友人と朗読劇やコンサートに参加したり、聖地巡りをしたりしてリフレッシュしています。絵を描くことや書道、消しゴムはんこを作ることも趣味で、製作している間は心が落ち着きます。研究室のメンバーはとても仲が良く、バーベキューなどは大変盛り上がります。
将来の夢を教えてください。
大学院修了後は企業に就職し、大学での知見を活かした仕事ができればと考えています。まずはインターンなどに参加したいです。

趣味の消しゴムはんこで佐藤さんが作成した年賀状
終始笑顔で、研究内容や今後の目標について楽しそうに話してくれた佐藤さん。研究することがとても楽しいのだそうです。インタビュー中のやり取りで、指導教員の伊藤教授との深い信頼関係も伺えました。
また、休みの日は趣味を思いきり楽しんでいて、磨いたスキルはグラフィカルアブストラクトの作成など研究活動にも活かされており、素晴らしいと思いました。
今回、日本生物物理学会で佐藤さんが発表した本研究には大変な注目が集まり、日刊工業新聞で大きく取り上げられました。この発見は、伊藤研究室が持つ極微細な測定技術があってこそとのことで、今後ますますの発展的な研究に期待しています!