POSITIVE/EMPIRICAL ANALYSIS OF POLITICAL ECONOMY
実証政治経済学拠点

グローバル社会の課題を科学的根拠に基づいた提案により解決できる次世代研究者を育成
当拠点は、政治学と経済学のさらなる方法論的融合および理論的融合を目指しています。ゲーム理論を用いた理論分析、実験的手法を用いた実証分析、データサイエンスに基づいたビッグデータ解析など、政治学者と経済学者が分析手法を共有し、国際的に研究成果を発信しているメンバーによって構成されています。また、国内外における様々な学問分野の研究者らとの教育・研究交流を通じ、人類社会の様々なニーズに応えうる政治経済制度の構築および政策の形成を科学的な根拠に基づいて提案し、地球社会の未解決の課題に挑戦する人材の育成を目指します。
ACCOMPLISHMENTS
5つの主な成果
1 エセックス大学大学院と政治経済学部との複合学位プログラムの運用を開始
2016年度より継続して拠点が主催となり本学で開催しているエセックス大学による政治学方法論のサマースクールを経て、その後両大学間での協議が進み、2020年、政治経済学部とエセックス大学大学院との間で、学士・修士4年半の複合学位プログラムの運用を開始しました。本学の学生は、学部4年次秋学期よりエセックス大学経済学研究科または公共政策大学院へ1年間の留学に出発し、半年で本学を卒業となります。その後の半年でエセックス大学の定める修了要件を満たす事により、修士号が授与されます。このプログラムでは毎年度5名を上限とし、派遣を行っています。 2023年3月には、エセックス大学へ派遣可能な研究科として従来の経済学研究科の他、公共政策大学院を追加しました。派遣可能な研究科を拡げることにより、派遣留学生数の増加と、学生の専門分野、学習範囲・機会の拡大が期待されます。エセックス大学はQSランキングの政治分野でも常に上位に位置しています(2021年48位、2022年50位)。

2 エコールポリテクニークとの連携を強化
経済学研究科とエコールポリテクニークの間では、SGUの枠組みで郡山幸雄教授を2018年以降継続して訪問教員として受入れ「ゲーム理論とその経済学への応用」「マーケット・デザインとインスティチューショナル・デザイン」等の正規科目を開講し、本学の学生に教育の機会を提供してきました。また2022年からはエコールポリテクニークの研究室に本学の博士後期課程の学生が派遣され、国際教育研究指導・論文指導を受けています。これらの継続した取組から両校の関係性が強化された結果、経済学研究科とエコールポリテクニークの経済学部は箇所間協定を進めることが可能となり、ENSAE(ポリテクニークとの共同研究ユニットとして組織CREST:フランスを代表する科学機関である経済統計研究センター に含まれる統計と経済学を専門とした機関)を含めた協定として協議を進めています。

3 世界的権威のある学術誌「Science」「Nature」に拠点の広告記事を掲載
2020年9月、学術誌「Science」に前拠点代表野口晴子教授のインタビュー記事を投稿し、グローバルヘルスを始めとする拠点の研究分野について紹介しました。
また、2022年3月には、「Nature」に広告記事を掲載しました。記事には、拠点メンバーの有村俊秀教授の教育研究活動としてカーボンプライシングを取り上げ、拠点および本学のカーボンニュートラルについての取組を国内外に発信するとともに、拠点のSGU事業活動について国際的なPRを行いました。広告記事公開直後から閲覧数が急激に上昇し、世界五大陸すべての35以上国から、延べ2千名を超えるアクセスがありました。
両誌ともに国際的な権威のある学術誌であり、コロナ禍において、拠点活動を世界に広く発信することにより、拠点活動目標である「政治経済学の教育研究拠点としての世界ランキング向上」に寄与することができました。

4 データの民主化時代に即した政治学方法論教育の抜本的転換
本拠点では2019年度以降、山本鉄平教授(マサチューセッツ工科大学政治学部)による夏季集中講義を継続的に実施しており、政治学方法論の分野で国際的に活躍する山本教授から統計的因果推論を体系的に学ぶ機会を多くの学生に提供してきました。同時に、山本教授と本拠点教員とは今後の連携について協議を重ねてきました。
山本教授の議論では、データの民主化時代のデータサイエンスにおける圧倒的多数のデータは社会をめぐるデータであり、故に、社会科学のトレーニングを受けた人材こそが求められ、そのような人材を体系的に養成できるのが政治学方法論とされています。この議論を踏まえ、早稲田大学政治経済学術院・政治学研究科では、2024年度以降に方法論教育改革を行う方向で検討を始めました。既存の政治学方法論の3つの柱(規範・数理・経験)は伝統として尊重しつつも、経験の教育をデータの民主化時代に即した新しいものに転換していくことを考えています。

5 拠点レピュテーションの向上に繋がる事業
本拠点では、海外有名大学から毎年10名以上のJA/訪問教員を継続的に招聘して正規科目を開講し、学生の学習機会を提供してきました。また、海外からの招聘教員によるセミナーやワークショップなどの国際的なイベントも年間約15件から20件開催し、国際交流の機会を提供しました。その他にも、エセックス大学によるサマースクールを、2016年度から継続して早稲田キャンパスにて開催し、集中講義および演習を英語で提供してきました。
このような海外有名大学との連携による取組を継続的に行うことにより拠点のレピュテーション向上に寄与することができました。

GLOBAL RELATIONSHIPS
交流海外機関
OUR LAST SYMPOSIUM
最終成果報告
事業最終年度となる2023年度に最終成果を発表するシンポジウムを開催いたしました。その内容をレポート形式でご紹介します。
MOVING FORWARD
今後の展望
JA、訪問教員招聘による国際的な教育・研究システムの維持、発展
トップレベル研究者のリクルートに成功していることから、拠点としてこれまでおこなってきた国際的に活躍する研究者の招聘については、大学院として引き続き推進して参ります。訪問教員を2024~2026年度に年平均3名以上ずつ招聘する計画です。
データの民主化時代に即した政治学方法論教育の抜本的転換
本学教員と今後の連携協議を重ねております山本鉄平教授(MIT)の議論では、データの民主化時代のデータサイエンスにおける圧倒的多数のデータは社会をめぐるデータであり、そこには社会科学のトレーニングを受けデータを使ってサイエンスできる人材こそが求められ、その教育に体系的に従事できるのが政治学方法論(ポリティカル・メソドロジスト)としております。この考えを踏まえ、2024年度以降、早稲田大学政治経済学術院・政治学研究科では方法論教育改革を行う検討を始めております。現在ある政治学方法論の3つの柱(規範・数理・経験)は伝統として大事にしつつも、経験の教育をデータの民主化時代に即した新しいものに転換していくことを考えております。