早稲田大学各学生寮 新入寮生・在寮生の皆さんへ
― 今、伝えたいこと
2020年の春は、例年と比べて特別な様相を呈しています。新型コロナウイルスの脅威を多くの人が感じ、警戒と自粛の雰囲気が世界中に広がっています。
すでにご存じのように、早稲田大学は、学生の皆さんや関係各位の安全と教育環境の整備を重視し、卒業式や入学式を中止するとともに、新学期の授業開始日を繰り下げました。
レジデンスセンターでも、やむなく新寮生の皆さんの入寮日を延期し、在寮生の皆さんには可能な限り実家などへの帰省を要請しています。「いつになったら行けるのか」「今後どうなるのか」と案じる気持ちはよく分かります。また、「早く寮に入りたい/戻りたい」と心待ちにしている皆さんの心情を思うと、胸が痛みます。
しかしながら、生活空間を共有する寮の性質や、現在の日本と世界における感染拡大状況を考慮すると、キャンパスにおける授業開始の日程が定まるまでは、安全のため今しばらくの待機をお願いせざるを得ません。ご理解をお願いいたします。
私は、学生寮に住む皆さんが、この何とも先が見えないような時間を、みずからにとっての蓄えの時ととらえてほしいと願っています。このような時こそ、良い本を読んでください。噂に惑わされることなく、十分な予防をしたうえで、静かで落ち着いた生活を送ってください。
何人かの方も言っているように、新型コロナウイルスの最大の脅威は、感染それ自体よりも、感染への恐怖と感染に伴うさまざまなシナリオへの恐怖が社会生活や人間関係を汚染し、私たちが、お互いを仲間ではなく潜在的な侵略者とみなしてしまうことかもしれません。互いの間にそうした「見えない壁」をつくらないためにも、一人一人が静かに考え、将来に備えた良い基礎を自分のうちに築く時として、この日々を大切にしてほしいと思うのです。
親元を離れて、多様な背景を持つ仲間たちとかけがえのない寮生活を送る皆さんを、心から応援しています。寮内にふたたび楽しい笑い声が戻ってくる日を心待ちにしつつ、一緒にこの時期を乗り越えましょう。
早稲田大学レジデンスセンター長
厚見 恵一郎