「トルコ班」第2回研究会(2017年9月20日開催)
◆報告者:小松香織(早稲田大学教育・総合科学学術院)
「オスマン海軍史の研究動向」
◆報告者:長谷部圭彦(早稲田大学イスラーム地域研究機構)
「オスマン陸軍史の研究動向―Mehmet Mert Sunar氏とUğur Ünal氏の研究を中心に」
◆会場:早稲田大学9号館 103号室
◆参加人数:4名
◆内容
本研究会では、オスマン帝国の海軍と陸軍につき、その研究動向が検討された。まず小松香織が、İ.H.ウズンチャルシュル、İ.ボスタン、A.İ.ゲンジェルによる代表的研究と、A.ビュユクトゥールルなど海軍関係者による海戦史研究を紹介した。また、海軍関連の雑誌や、海軍の教育施設に関する研究についても言及した。海軍史研究について言えば、トルコ人による研究は包括的であるのに対し、外国人による研究はテーマが限定されがちであるとの指摘もなされた。
次に長谷部圭彦が、このたび本学に招聘するM.M.スナルとU.ユナルの単著を紹介した。スナルによる『前に進め―ムハンマド常勝軍の組織・教練・教練書』(2016年)は、スレイマニエ図書館所蔵の5つの写本のラテン文字転写を主としつつ、イェニチェリが廃止されムハンマド常勝軍が創設された頃(1826)の軍事教育を検討したものであるが、ページ配分のため、史料集的な印象を与えてしまう点が惜しまれると評された。ユナルによる『アブデュルアズィズ期の陸軍1861-1876』(2016年)は、その時期の陸軍に関する体系的かつ詳細な研究であるが、当時のオスマン社会における軍の位置や機能についても考察がなされていれば、同書の価値はさらに高まったであろうとの指摘がなされた。質疑では、地方名士(アーヤーン)の私兵などが話題となった。
本機構トルコ班では、招聘する外国人研究者の著作の概要をあらかじめ共有すべく、このような研究会を開催しているが、それは招聘前の活動として有効であるので、今後も継続する予定である。(文責:長谷部圭彦)