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【報告】Golnar Mehran氏特別セミナー(2017年1月14日開催)

Golnar Mehran氏特別セミナー(2017年1月14日開催)

講演者:ゴルナール・メフラーン氏(イラン、アル=ザフラー女子大学准教授)

講演題目:The Paradox of Tradition and Modernity in Shaping Iranian Women’s Educational Experience

 

1月14日に開催された特別セミナーでは、イラン教育研究の第一人者であるゴルナール・メフラーン氏(イラン、アル=ザフラー女子大学准教授)を招聘し、講演“The Paradox of Tradition and Modernity in Shaping Iranian Women’s Educational Experience”を行っていただいた。

講演では、まずイスラーム革命後におけるイラン政治の変化の概要と、革命後の社会における女性の役割に関する分析概念としての「伝統Tradition」と「近代Modernity」なる用語の説明があった。前者は母・妻として家庭を守る女性を理想とするイスラーム的な「伝統」を指す一方で、後者は国家の「近代」化の指標となる公共空間における女性の存在意義の向上を意味する。この二つの矛盾した概念を念頭に置きながら、革命後のイランにおける女子教育の変化と社会の変容、そしてその背景の探求が本講演の主題となった。

上記の相矛盾する方向性のうち、最初に革命後の教育における「伝統」実現のための方策が取り上げられた。その方策は、男女の別学化、女子のヴェールおよび学校での制服着用の義務化、教科書における家庭の庇護者としての女性の描写の強調といったイスラーム的な女性観を重視した形での教育制度の設計に顕著に示されることになった。しかし、次にこの「伝統」尊重の教育制度が、女子の就学率、大学進学率を向上させ、さらには基礎科学や医学など理系の分野への女性の進出を促すことになり、結果として「近代」化の推進に至ったことが統計データにより具体的に明らかにされた。

「伝統」具現化のための教育制度の制定がなぜ「近代」化の促進に結び付いたのか、この点についてメフラーン氏は、「伝統」の導入が保守的な社会層に属する父兄に女子の就学に対する理解の深化を促した点、被抑圧者の庇護を謳う革命の理念により女性も国家からの特別な配慮の対象となった点、加えて近年の女性の活躍が「伝統」に代わる新たな女性像を示してきている点を指摘した。

本講演は、革命後のイラン女子教育の「伝統」への回帰が、女性の就学率・社会進出の向上を促し「近代」化を進めるという「矛盾paradox」に至った背景を、新たな教育制度の制定や就学率の具体的なデータ等を踏まえて考察した点で十分な説得力を持つものであった。また、単なる革命後のイラン女子教育の検討に留まらず、その社会的な効果にまで鋭く切り込んだ点で、示唆に富むものであったと言えよう。(杉山隆一)

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