公募研究「イスラームと観光」の代表者である福島康博氏(東京外国語大学)が、3月15~18日、沖縄に出張しました。
本調査は、2016年3月15日~18日の日程で、沖縄県那覇市周辺を対象に、非イスラーム諸国におけるムスリム観光客の受け入れ対応の状況を、現地調査で把握することを目的に行った。具体的には、ゲストであるムスリム観光客に対してホスト側である沖縄県の観光関連施設が提供する礼拝室、ハラール・レストラン、および土産物に焦点を当てて調査を行った。
礼拝室は、ムスリムがある程度の時間滞在する場所に設置されている方が使い勝手が良い。那覇市周辺においては、空の玄関である那覇空港と大手ショッピングモールに常設されている。簡単に出入りができるところ(空港)や、通常は施錠されており係員に願い出て開錠してもらうところ(モール)など、施設によって対応の違いはあるものの、基本的に誰でも利用できる環境が整えられている。また、キブラ(礼拝を行うメッカの方向を示す矢印)や絨毯を準備しているホテルも増えており、客室内での礼拝を可能にしている。
ハラール・レストランは、那覇市内外に複数存在している。調査の結果、①もともとムスリムを含めた外国人の利用者が多い施設に併存している、②オーナーやシェフがムスリムである、③添加物を使用しない自然食を提供する、など、以前からハラールと親和性が高いレストランにおいて、ムスリム対応を積極的に実施している例が確認できた。他方、日本料理・琉球料理を中心とするレストランでのムスリム対応の事例は、限定的であった。
土産物は、観光を構成する重要な要素であるものの、開発が遅れている分野である。沖縄では、洋菓子やジュースなどがハラール認証を取得しており、空港や那覇市の国際通りの土産物屋で扱われている。
沖縄県を訪れる外国人観光客は、2015年は約150万人で過去最多となったが、台湾、韓国、中国、香港といった東アジア諸国が全体の約85%を占めており、ムスリム観光客はわずかである。しかしながら、今後もムスリム観光客の増加が予想されていることから、沖縄側のさらなるムスリム対応の充実に期待が持たれている。