Organization for Islamic Area Studies早稲田大学 イスラーム地域研究機構

News

ニュース

「メガシティとしてのイスラーム都市―ジャカルタとカイロを中心に」2014年度第2回研究会

2015年1月31日、早稲田大学において開催された、文部科学省共同利用・共同研究拠点の事業である共同研究課題『メガシティとしてのイスラーム都市―ジャカルタとカイロを中心に』の2014年度第2回研究会「南アジアのメガシティ カラチ」について以下の通り、報告します。

最初に、深見氏より研究会の趣旨説明が行われた。続いて内山氏より、カラチの人口分布および土地被覆の特徴について、18のメガシティにおける位置付けおよび同じく乾燥地域に位置するカラチとの差異が説明された。とくに、カラチにおいては、カイロほど、地形的な制約がなく、高密化の条件は大きく異なることが指摘された。また、高密化の条件のうち、とくに気候、地形、植生などの生態環境に関する要素について、全球の400万人以上の都市を対象とした分析の進捗状況が報告された。とくにカラチに該当する高密化の条件には、少ない降水量および高い平均気温があるが、人口密度を説明するモデルにおける生態環境の説明分は50%程度であることから、家族制度、家族形態などの社会的な条件を考察する必要性が示唆された。

山根氏からは、カラチの長期的な歴史について、詳細な報告がなされた。とくにカラチは、同都市が位置する州において、州を代表する都市というよりは、周辺地域との差異が大きい大都市であることが説明された。その差異とは主に居住する民族の構成であり、カラチでは、ムハージーの構成割合が比較的高いという特徴がある。歴史的にも周辺地域とは異なる民族がカラチの主要民族として居住していたとされる。大都市としての歴史が比較的浅いことにもより、大地主がほとんど存在しないことにより、政府主導の大規模開発が中心部でも進められたため、現在も広大な緑地と空地を有する歴史的な建築が立地する。大都市ならではの民族間の経済的対立が存在するカラチでは、周辺の南アジアの大都市と比較しても、民族の移動による居住者の構成の変動が激しいことが示唆された。

山田氏からは、カラチにおける居住環境について、1月の調査において訪問した住宅を中心に報告がなされた。植民地時代から継続的に使用されている家主と使用人の居住形式の存在や、イスラムの性別によって動線を分離する形式の存在などが報告された。カラチは、9割以上が、公共の土地であり、政府主導の開発が有力であることが文献資料を基に報告された。カラチの周縁的な環境に位置する居住環境も紹介され、都市の周縁に各都市の特徴が表れ、そこには環境に適合した住宅がみられること、さらに、そのような住宅とそれを成立させている状況において、今後のメガシティの居住を考える際の手掛かりがあることが指摘された。

討議においては、とくに民族間の経済的対立が存在する都市、カラチでは、多民族であっても共通する住まい方が存在し、それによって高密な都市域が形成されていること、カイロと比較した場合は、高層建築がみられないカラチにおいて、カイロに匹敵する人口密度の環境を形成している条件としては、建造環境に表れにくい社会的な住まい方が存在することが議論された。また、そのような住まい方はイスラム教に端を発するというよりは、インドからの移民によってもたらされた面もあることも示唆された。首都移転によって、デリーなどの文化が当地よりも消えずに残っていることや、ヒンドゥー教の寺院が市内に存在することなど、イスラム教が支配的な状況のカラチにおいて、インドの文化は独特の系譜を有し、それがどのように居住環境に表れているのか理解を進めることが課題として認識された。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/ias/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる