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「メガシティとしてのイスラーム都市―ジャカルタとカイロを中心に」

2015年1月17日、早稲田大学において開催された、文部科学省共同利用・共同研究拠点の事業である共同研究課題『メガシティとしてのイスラーム都市―ジャカルタとカイロを中心に』の2014年度第1回「メガシティカイロ研究会」について以 下の通り、報告します。

最初に、深見氏より研究会の趣旨説明が行われるとともに、同氏が取り組まれているメガシティの誕生に至る世界各地の都市の発展の仕方の概説がなされた。とくに都市形態の歴史的な変遷が、地域的な軸によって整理されて論じられた。

次に、内山氏より、グローバルに整備されたGISデータを基に、18のメガシティの中でのカイロの特徴が報告された。カイロが位置するデルタの地形および周辺の土地被覆の状況が紹介され、とくに高密な都市域を有するカイロの生態環境は、メガシティの中で特異なものであり、同じ乾燥地のカラチとの地形条件の差異が説明された。また、同氏はカイロの高密化に至る条件として、市街地と周辺の砂漠や農地との間に明確な境界を設定する住まい方に加え、複数世帯の同居や親族が同じ建物内や近隣に住まうという家族形態を仮説として提示した。

西本氏は、ナイル川の流域の変動とそれにともなう周辺都市の位置関係の変化の概要について説明した。その後、過去には変動の大きかったナイル川の東に位置するヘリオポリスにおける複数の様式が混合する住宅について言及し、石やコンクリートといった多様な材料が使用されていることが紹介された。そして、カイロにおける伝統的な住宅として、現在のような多層の住宅ではなく、2層の住宅が新王朝時代の頃より存在したことを指摘し、中庭型住宅については、存在自体はしたものの広く分布していたことは裏付けられていないことが説明された。また現在、家畜小屋が住宅の屋上や周辺に建築化されている状況から、カイロにおける建築化する文化の存在が示唆された。

アーデル氏は、カイロ大都市圏の市街地および農地の歴史的変化について、衛星データを基に観測した結果を報告した。カイロ周辺にはナイルデルタの肥沃な農地が広がり、それらの農地が都市開発によって失われていくスピードが近年加速していることを指摘した。エジプト全体においても、生産性の高い農地において農業生産を進めることが、地域および地球環境への負荷を低減させることにつながると考えられるが、政府の都市計画担当部局と農地管理部局の連携の問題により、肥沃な農地の保全と都市開発が両立していないことが説明された。

岩崎氏は、ナイルデルタの村などからの移民によって構成されているカイロにおいて、同郷組合は、社会的問題に対応するコミュニティとしての意義があり、とくに、共同墓地を管理において重要な役割を担っていることが指摘された。流入人口によって拡大するカイロ大都市圏は、移民によって社会的な多様性が増しているとともに、移民が出身地とカイロを往来することによって、ナイルデルタの町村における多様性も醸成されていることが説明された。

討議においては、同郷組合の経済的な支援の意義が物価の上昇にともない薄れてきていること、フォーマル、インフォーマル住宅のうち、農地に投機目的で建設されるインフォーマル住宅の問題が議論され、とくに近年、新規に建設された高層のインフォーマル住宅に空き家が広く散見されていることから、人口増加よりも市街地化の方が早く進むことで、カイロ大都市圏全体としては低密化する趨勢にあることが、アーデル氏の提示したデータを参照しつつ議論された。また、都市の高密化において、家族形態が作用しているとしても、親族が集合して住まうこと自体はイスラム教とは関係が薄いことが指摘された。具体的なデータを用いつつ、カイロに特徴的な社会組織である同郷組合に関する議論と社会的な変化と連動する物理的な市街地の長期的な変化に関する議論を接合させ得る可能性が見出された。

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