本研究では、コラーゲン由来のジペプチドがアミノ酸単体に比べ、高い免疫調節機能を持つことを、RAW264.7細胞※1やPBMC※2などの細胞培養系を用いて明らかにしました。
研究結果の概要
これまでの研究で分かっていたこと
激しい運動やトレーニングによって筋損傷や炎症が誘発され免疫機能が低下しますが、その予防に機能性食品が活用されており、我々はその作用機序を解析しています。炎症は免疫細胞が炎症性サイトカイン※3を分泌することが一因とされており、炎症を制御するために、免疫細胞の機能を調節する方法が求められています。近年では、アミノ酸の一種が免疫機能を調節することが明らかになってきました。さらに、2つのアミノ酸が結合したジペプチドは、アミノ酸単体よりも高い生理活性を持つ可能性が明らかになってきました。
今回の研究で新たに実現しようとしたこと、明らかになったこと
これまでに、ジペプチドがアミノ酸に比べ、高い免疫調節機能を持つかどうかは明らかになっていませんでした。そこで、本研究ではマクロファージやリンパ球の細胞培養系を用いてジペプチドの高い免疫調節機能を明らかにしました。
そのために新しく開発した手法
本研究では、RAW264.7細胞※1やPBMC※2の細胞培養系で炎症性サイトカイン※3の分泌を評価する手法を構築しました。
研究の波及効果や社会的影響
本研究では、ジペプチドが高い免疫調節機能を持つ可能性が明らかとなりました。今後は、ジペプチドの持つ他の生理活性の検証や、機能性食品としての応用が期待できます。
今後の課題
本研究は生体外の細胞培養系で実験を行ったため、生体内でジペプチドがどのように作用するのかが明らかになっていません。今後は、生体内における免疫細胞の免疫調節機能を明らかにしていく必要があります。
研究者のコメント
激しい運動やトレーニングによって炎症が誘発され免疫が低下しますが、その予防に機能性食品が活用されており、我々はその作用機序を解析しています。過去の我々の研究成果は以下の論文をご参照ください。
Suzuki K. Recent Progress in Applicability of Exercise Immunology and Inflammation Research to Sports Nutrition. Nutrients. 2021; 13:4299. https://doi.org/10.3390/nu13124299
用語解説
※1 RAW264.7細胞
マウスマクロファージ様細胞
※2 PBMC
末梢血単核細胞(Peripheral Blood Mononuclear Cells)
※3 炎症性サイトカイン
細胞から分泌される、炎症を引き起こすような生理活性物質の総称
論文情報
雑誌名:Int. J. Mol. Sci.
論文名:Collagen-Derived Dipeptides and Amino Acids Have Immunomodulatory Effects in M1-Differentiated RAW264.7 Cells and PBMC.
執筆者名(所属機関名):
冨永貴輝(早稲田大学)、黄嘉鵬(早稲田大学)、王碩(早稲田大学)、野口実和(ユニテックフーズ株式会社)、童 奕珊(早稲田大学)、浅野桃子(ユニテックフーズ株式会社)、鈴木克彦(早稲田大学)
掲載日時:2023年4月8日
掲載URL:https://www.mdpi.com/1422-0067/24/8/6925
DOI:https://doi.org/10.3390/ijms24086925
研究助成
研究費名:ユニテックフーズ株式会社との共同研究資金
研究課題名:コラーゲンペプチドが運動誘発性筋損傷・炎症反応に及ぼす影響
研究代表者名(所属機関名):鈴木克彦(早稲田大学)