本研究は、本学文学研究科で採択された21世紀COE(代表、大橋一章)、および大学院教育改革支援プログラムGP(代表、同)の研究成果を基盤とし、現在進行中の本学重点領域研究「文明移動としての「仏教」からみた東アジア世界の歴史的差異と共生の研究」(代表、同)、および基盤研究A(一般)「文明移動としての「仏教」からみた東アジアの差異と共生の研究」(代表、新川登亀男)の研究成果も継承することにより、創造的な”東アジア世界”像の再構築をめざすものである。
COEやGPの共同研究で展開された研究は、東アジアの周辺地域が、中国文明を受け入れながら、漢化ではなく、どのようにして固有の地域文化を形成していったか、という周辺地域を主体とする視点からの検証作業であった。また「文明移動としての仏教・・・」も、インド発祥の異文明の仏教が東方へ移動し、中国文明と摩擦を生じながら新たなその文明の一翼を担い、さらに朝鮮・日本などへ伝播して、それぞれの文明の構成要素となってゆく過程を検証する作業である。
本研究はこれまで蓄積されてきたこれらの研究的資産を継承しながら、多様な統合体としての東アジア世界を、各地域から照射することを通じて、東アジアの歴史・社会・文化の諸相を学際的に共同研究することを目指すものである。
主な研究分野としては、歴史学、考古学、思想・宗教、美術史、文学などを対象とするが、国家の枠組みにとらわれず、地域や民族・集団などを視野に入れて、前近代の東アジア世界を明らかにする。
研究にあたっては、海外の研究機関との協力によるフィールド調査を重視し、出土資料などさまざまなレベルの資料をそれぞれの研究分野に有効に活用するための方法論、すなわち”資料学”の構築をめざす。
研究期間中、年度ごとの研究テーマを策定し、それぞれのテーマに基づき、チームリーダーを撰び、その下で研究チームを編成し、毎月の定例研究会を実施する。またその各テーマに応じて、部門構成員の所属する各コースから博士後期課程学生を若干名を選抜し、その共同研究に参加させることで若手研究者を育成し、また当該研究部門で開拓された研究成果を継承させ、その成果をシンポジウムなどで公開させる。
研究チームを単位として行われる共同研究では、部門構成員の他に当該テーマに関連する国内の研究者を招聘研究員として参加させ、また海外の研究者とも積極的に連係する。
本研究で使用する施設は、アジア地域文化学コース室である。本コース室にはCOE・GPにおいて蓄積された資産として、多くの蔵書、漢籍関係の大型データベース、コピー機などが存し、本研究部門の研究活動はこの研究環境を有効に活用することで十全に推進されるであろう。
新川 登亀男(代表者)