本部門は、人文科学や社会科学の諸領域における知の生産、蓄積、活用のプロセス、およびこのプロセスで用いられる多様な資料やデータの収集と取り扱いの方法について、学横断的に検討することを目的とする。その過程で、人文科学や社会科学の各領域で実践され形成されてきた知の生産手法、資料やデータの収集・取り扱いの方法および方法論、分析枠組みについて相互理解を深め、新たな比較研究枠組みの構築にむけた相互補強的な研究交流をおこなう。
人文科学や社会科学は、広範な現象を研究対象としてきた。したがって本研究で対象とする資料は、広範囲なものを想定している。社会学、教育学、歴史学、文学、美学の領域での資料として、(広義の)社会調査データ、統計資料、種々の社会活動記録、ライフストーリー、ナラティブテキスト、歴史史料・文書、社会評論、文学作品、絵画、建築物等である。いずれも人びとの営みや生、知の探求、コミュニティ、社会のありように関する情報に富んだ資料である。
これらの資料やデータは、その貴重性と学問的価値にもかかわらず、各々の研究終了とともに私蔵ないし死蔵される危険性を有している。近年ではアーカイブズとして知の遺産の保存や活用に関する理解や関心が広範囲で高まっており、一部についてはすでにデータベース化やアーカイブ化の作業が徐々に進められている。しかし、それらをさらに個別の研究領域を超えて広く共有し相互の研究に活用していこうとする試みはまだこれからの段階である。本部門は、こうした資料やデータの収集・保存、蓄積と活用の活動を個別研究領域・分野を超えて促進し、これを共有財産とした新たな研究の可能性、研究枠組みの構築可能性を探ることにより、人文科学と社会科学とを架橋していこうとするものである。
具体的には、研究員がそれぞれが行ってきた研究、およびその研究において収集活用、蓄積してきた「広義の資料」を相互に開示し、共有可能性を探っていく。共有可能と認められる資料、データについては、各専門の立場から実際に探索的な二次分析作業を試み、共通資料への学横断的、学際的なアプローチの可能性を探る。そうした検討を重ね、資料、データの横断的な利用にむけた方法論や研究枠組みを検討し、さらに、その成果の社会的還元もめざす。こうした作業は、海外研究者や若手研究者にとっても重要な機会であり、広義な二次分析文化の土台作りになると確信している。
2012年度後期から5年間の研究期間において、研究会、シンポジウムを行う。年次フォーラムは最終2017年度に開催予定。
メンバー紹介
部門代表者
嶋﨑 尚子
研究所員
- 池田 祥英
- 岡本 智周
- 沖 清豪
- 草柳 千早
- 坂上 桂子
- 嶋﨑 尚子
- 清水 拓
- 田辺 俊介
- 鶴見 太郎
- 鳥羽 耕史
- 西城戸 誠
- 松前 もゆる
- 村田 晶子
- 山田 真茂留
招聘研究員
- 大坪 真利子
- 笠原 良太
- 川副 早央里
- 栗原 亘
- シーダー チェルシー センディ
- 張 龍龍
- 野坂 真
- 畑山 直子
- 平野 直子
研究報告
2023年度の活動
- 部門研究会
日時:2023 年 5 月 6 日 15:00~17:00
場所:早稲田大学戸山キャンパス第 1 会議室
講師:オックスフォード大学 Man-Yee Kan 教授
テーマ:Gen Time プロジェクトへの招待:時間構造からみた東アジアと欧米諸国のジェンダー不平等 - 芦別研究会
日時:2024 年 3 月 3 日
刊行物:嶋﨑尚子・西城戸誠・長谷山隆博編『芦別──炭鉱〈ヤマ〉とマチの社会史』2023 年 12 月、寿郎社刊行
刊行記念シンポジウム:2024 年 3 月 3 日芦別市立図書館(主催:産炭地研究会、共催:星の降る里百年 記念館・人文研、後援:芦別市立図書館)
*芦別市星の降る里百年記念館資料アーカイブズを活用した産炭地芦別に関する研究会 - 産業・地域・家族研究会
日時:2023 年 12 月 10 日 、 2024 年 3 月 9 日
*パーソナルドキュメントを活用した産業・地域・家族に関する研究会 - その他
台湾研究会(成果物刊行に向けた原稿内容確認)
個別アーカイブズとの連携事業
2022年度の活動
- 樺太研究会
日時:2022 年 7 月 28 日、12 月 7 日、2023 年 1 月 30 日:いずれも Zoom で開催
*樺太引揚に関する文書資料アーカイブズを活用した引揚者の炭鉱定着に関する研究会 - 芦別研究会
日時:2022 年 5 月 22 日、8 月 18 日、2023 年 1 月 7 日、2 月 8 日、3 月 23 日
*芦別市星の降る里百年記念館資料アーカイブズを活用した産炭地芦別に関する研究会 - 産業・地域・家族研究会
日時:2022 年 5 月 26 日 Zoom、7 月 26 日対面、9 月 30 日対面、2023 年 1 月 28 日対面、3 月 24 日対面
*パーソナルドキュメントを活用した産業・地域・家族に関する研究会
2021年度の活動
- 樺太研究会
日時:2021 年 6 月 24 日(木)・8 月 9 日(月)・12 月 28 日(火)・1 月 12 日(木)
2020 年度に引き続き、樺太引揚に関する文書資料アーカイブの構築に着手し、研究会を 4 回実施した。 - 芦別市星の降る里百年記念館収蔵「芦別の 100 枚の写真」説明記録会
日時:2021 年 7 月 3 日(土)
芦別市役所広報課によって撮影された市制施行(昭和 28 年)から昭和末年(64 年)までの記録写真 100 枚(パネル現物)について、長谷山隆博前館長から一枚ずつ説明を受け記録化した。
2020年度の活動
- 樺太研究会
日時:2020 年 7 月 4 日(土)、8 月 11 日(火)、9 月 26 日(火)
三菱財団から「樺太引揚者の炭鉱移動と定着─コミュニティ形成にみる経験の連続性」(2020 年 10 月~ 2022 年 3 月)助成を受けて、樺太引揚に関する文書資料アーカイブの構築に着手し、研究会を 3 回開催した。 - 臺日煤礦博物館國際論壇
日時:2020 年 10 月 24 日(土)・25 日(日)
主催:台湾政府文化部
承催:国立雲林科技大学新平渓煤礦博物園区
テーマ:石炭産業関連資料のアーカイビング方法 - 刊行物
嶋﨑尚子・新藤慶・木村至聖・笠原良太・畑山直子『〈つながり〉の戦後史:尺別炭砿閉山とその後の ドキュメント』(青弓社、2020 年 11 月)
2019年度の活動
- 「知の蓄積と活用にむけた方法論的研究」研究部門主催
国際シンポジウム:産業での労働・経験をどのように記録し、継承するか:石炭産業の場合
共催: New Directions in Coal Mining History and Heritage in the UK and Japan: ESRC-AHRC UK-Japan SSH Connections Grants /産炭地研究会(JAFCOF)
後援:日仏会館・フランス国立日本研究所
協力:オフィス熊谷/東洋大学井上円了記念研究助成
2018年度の活動
- 「知の蓄積と活用にむけた方法論的研究」研究部門主催
第12回部門研究会(2019.1.31) 開催報告書
2017年度の活動
- 研究活動の報告
- 「知の蓄積と活用にむけた方法論的研究」研究部門主催
第11回部門研究会(2017.11.18)
2016年度の活動
- 「知の蓄積と活用にむけた方法論的研究」研究部門主催
第9回部門研究会(2016.12.1) - 「知の蓄積と活用にむけた方法論的研究」研究部門主催
第10回部門研究会(2017.3.4)