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【著作紹介】『つなわたりの倫理学―相対主義と普遍主義を超えて』(文学学術院教授 村松聡)

角川新書  サイズ 新書判/ページ数 384p/高さ 18cm
商品コード 9784040825014 NDC分類 150  Cコード C0210 2024/02発売

この本は、徳倫理学について書いたものです。徳倫理学というと、皆さんにはあまりなじみがないと思いますが、倫理学の中でもアリストテレス以来古くから提唱されてきたもので、それだけに私たちがもつ倫理学のイメージとは大分異なっています。簡単に言えば、「しなければならない」と考える倫理ではなく、私たちは本当は何をしたいのだろうか、そう問う倫理学です。別の言い方をすれば、人間はどのようにすれば充実した生を送ることができるだろうか、それを真剣に考えようとした思想です。

日本ではあまりよく知られていない徳倫理学を紹介するとともに現代的な問題に答える足がかりとして、現代的装いでの徳倫理学を構想したいと私は長い間考えてきました。この本はそうした思いを思い切りぶつけてみたもので、私としてはライフワークの一つのつもりで書きました。

序章「したいことをしよう」で徳倫理学全体のイメージを描いて、1章で、徳倫理学の特徴の剔出を心がけ、2章では現代の徳倫理の代表的な論者による、安楽死、妊娠中絶問題についての議論を紹介しています。もっとも、序章や1、2章はどうしても、現代の徳倫理学が直面する問題意識を念頭に書きましたので、ピンとこない叙述があるかもしれません。ですから、初めて倫理学や徳倫理学に触れる皆さんには、具体的な問題から入っている3章から6章までを先に読むことをお薦めします。たとえば、3章「よいことをしようと思うな、悪いことをしよう」は、悪いことしかできない状況でどうすればいいのか、を取り上げています。4章「誠実に嘘をつこう」では、真実を述べると人を傷つける状況で、どのように誠実にその人に向き合うべきか、といった問題を取り上げています。徳倫理学の強みの一つは、こうした厄介な状況に柔軟な発想で答えようとする姿勢にあります。皆さんにそうした柔軟で、しなやかな倫理的姿勢を堪能してもらえれば、と願っています。

〈研究内容紹介〉

専門は近・現代の哲学、倫理学、応用倫理学と生命倫理。パーソン論、他者論、身体論を中心に研究しています。とりわけ、生命倫理などの応用倫理の具体的な問題に取り組むうちに、言葉にならない思いを汲もうとする徳倫理学の姿勢に惹かれるようになり、現在は徳倫理学を中心に実践哲学、応用倫理学の諸問題を研究しています。

本書以外で、最近に刊行したのものとして、早稲田大学文学学術院の先生方との共同研究に基づく共著『心身論の挑戦』(早稲田大学出版、2024年)があり、その中で遺伝子と関連した心身論問題を取り上げています。

早稲田大学文学学術院教授
村松 聡(むらまつ あきら)

東京生まれ。上智大学哲学科、同大学院を卒業後、ドイツ、ミュンヘン大学留学。横浜市立大学国際総合科学部准教授を経て、2011年より現職。医学哲学倫理学会の理事(2008年~2016年)、同学会の教育委員会委員長(2008年~2012年)、国際学術交流委員会、国際紙編集委員長(2014~2016年)を務める。所属学会は同学会の他に、生命倫理学会、比較思想学会など。著書に本書の他、単著として『ヒトはいつ人になるのか』(日本評論社、2001年)、共・編著として『教養としての生命倫理』(丸善出版、20126年)などがある。

(2025年4月作成)

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