講演では、「文華秀麗集」と「経国集」に収められている渤海詩の詩集における枠組、また世紀初頭の漢詩文化の中に、それらがどのような意味や役割をもち、どのように機能しているか、具体例とともに考察が展開された。そして講演内容のまとめとしては、平安初期における渤海使との関係は、文化的・社会的地位や身分を確立するための手段であり、また日本の漢詩集に収められた渤海詩は文章道出身者と天皇家のつながりを仲介する手段として機能したこと、また、渤海詩は平安前期の文章道(紀伝道)を形成し展開する土台であり、かつその成果であることが述べられた。その後、コメンテーターによるコメントや会場からの質疑応答を通して、今回の講演内容を基軸としてその前後の時代、あるいは、渤海以外の諸国、諸地域との関係をも考察していくためのさまざまな示唆が浮かび上がるものとなった。
(河野貴美子 記)
開催詳細
- 日時:2024年7月22日(月)17:00-18:30
- 開催方式:対面
- 会場:早稲田大学戸山キャンパス33号館第1会議室
- 講演者:ダリオ・ミングッツィ氏(ソウル大学客員研究員)
- 講演題目:「平安時代初頭における渤海詩のエコロジー」An Ecology of Parhae Poetry in Early Heian Japan
- コメンテーター:高松寿夫(文学学術院教授)、田中史生(文学学術院教授)
- 司会:河野貴美子(文学学術院教授)
- 参加人数:34名
- 主催:早稲田大学総合人文科学研究センター 角田柳作記念国際日本学研究所