仏教美術における最も根源的な主題ともいえる仏伝について、文学と造形の両面から考えるセミナーを実施した。第1部(講演)では、長らく仏伝文学の研究を牽引してきた小峯和明氏が、龍の造形に着眼した仏伝文化の東アジア的な広がりについて幅広い資料を提示しながら通史的に概観した。特に、早稲田大学図書館でも近年富岡鉄斎旧蔵の善本を購入した『釈氏源流』を中心に、その図像成立と伝播の過程を、仏伝テクストとの関係からひもといた。第2部(フォーラム)では、2023年に出版された『釈迦信仰と美術―作品解釈の新視点』(思文閣出版)の編者である稲本泰生氏が中国における仏伝図の伝統について、また同書著者のひとりである増記隆介氏が平安時代の史料からうかがわれる仏伝図制作の実態について話題提供した。その後に続く全体討議では、小峯氏が示した龍のイメージを伴う国土観や景観認識と造形のかかわり、中国から日本への仏伝文学、造形が伝播する際にいかなる取捨選択が行われたかなど、幅広い論点が喚起された。
(早稲田大学文学学術院教授 山本聡美 記)
開催詳細
- イベント名:仏教芸術学会 講演とフォーラム「仏伝の文学と造形」
- 日時:2023年12月23日(土)13:30-17:00
- 開催方式:併用(戸山キャンパス38AV教室とWebinar配信)
- 使用言語:日本語
- 主催:仏教芸術学会
- 共催:早稲田大学総合人文科学研究センター 角田柳作記念国際日本学研究所/早稲田大学美術史学会
内容
参加者数:会場50人/オンライン100人
内容:第1部 講演
・開会の辞 肥田路美(早稲田大学教授/仏教芸術学会運営委員)
・講演 小峯和明(立教大学名誉教授/角田柳作記念国際日本学研究所招聘研究員)「「仏伝と龍の形象―『釈氏源流』を起点に」
第2部 フォーラム
・稲本泰生(京都大学教授/仏教芸術学会運営委員)「「六朝隋唐時代の仏伝図」
・増記隆介(東京大学准教授/仏教芸術学会運営委員)「平安時代の仏伝図―法成寺を中心に」
・全体討議 司会 山本聡美(早稲田大学教授/仏教芸術学会運営委員)
・閉会の辞 藤岡穣(大阪大学教授/仏教芸術学会会)