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【開催報告】ワークショップ「日本中世の女性の文学を今どう読むか?―『阿仏の文』の英訳と日本語注釈において―」

13世紀半ばに、宮廷女房としてキャリアを積んだ阿仏が、娘に対して女房の心得を伝えた手紙が残されている。その『阿仏の文』の注釈(『阿仏の文〈乳母の文・庭の訓〉注釈』、田渕句美子・米田有里・幾浦裕之・齋藤瑠花著、青簡舎、2023)を刊行された田渕句美子氏と、現在『阿仏の文』の英訳に取り組んでおられるクリスティーナ・ラフィン氏を迎え、「日本中世の女性の文学を今どう読むか?」をテーマとして、トークと対談、ディスカッションを行った。

田渕句美子氏は、「中世の女房たちを考える―『阿仏の文』から―」と題して、注釈や現代語訳を作成する過程で得られた知見や苦労を披露されるとともに、『阿仏の文』が宮廷社会およびその中に生きる女房の実際を伝えるきわめて貴重な書物であること、『阿仏の文』を通して、文学、文化、社会、教育などさまざまな領域におよぶ時代を超えた思考、考察が可能であることを述べられた。続いて、クリスティーナ・ラフィン氏は、「『阿仏の文』の英訳について」と題して、海外における日本古典文学の翻訳の事例や達成の中に自身の取り組みを位置付けられるとともに、英訳において文体をいかに考え、選択していくべきか、また宮廷の女性作家による『阿仏の文』という著作を世界の視点からいかに捉え説明していくべきかといった、具体的な課題を提示された。

その後の対談では、『阿仏の文』の魅力、抽象的心理的な描写をいかに訳していくか、現代の読者に『阿仏の文』が残したメッセージの意味など、さまざまな角度からやりとりがなされた。続くディスカッションでは、『阿仏の文』が記された際の手紙の形態についてや、また、注釈書の共著者である幾浦裕之氏や齊藤瑠花氏からも、注釈・現代語訳作成における工夫についてコメントがなされた。

ワークショップは、『阿仏の文』という一作品を対象とするものであったが、現在に残されたこの言説に向き合い、深く切り込んでいくことによって、日本の中世の女性の文学が有する意義と、それをいま読み、伝えていくことが有する可能性の広がりが理解され、共有される時間となった。

(河野貴美子 記)

                                         

開催詳細

  • イベント名:ワークショップ「日本中世の女性の文学を今どう読むか?―『阿仏の文』の英訳と日本語注釈において―」Medieval Japanese Women’s Writing and Abutsu’s Letter:Approaches to English Translation and Japanese Commentary
  • 日時:2024年7月24日(水)16:00-17:30
  • 開催方式:対面
  • 会場:早稲田大学戸山キャンパス33号館第1会議室
  • 発表者:田渕句美子氏(教育・総合科学学術院教授)、Christina Laffin(クリスティーナ・ラフィン)氏(UBC准教授)
  • 閉会のことば:陣野英則氏(文学学術院教授)
  • 司会:河野貴美子(文学学術院教授)
  • 演題:田渕句美子氏:中世の女房たちを考える―『阿仏の文』から―、Christina Laffin氏:『阿仏の文』の英訳について
  • 参加人数:40名
  • 主催:早稲田大学総合人文科学研究センター 角田柳作記念国際日本学研究所
Dates
  • 0724

    WED
    2024

Place

早稲田大学戸山キャンパス33号館第1会議室

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Posted

Fri, 26 Jul 2024

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