
新泉社 初版 刊行日 2022/3/31 四六判 392頁 ISBN 978-4-7877-2120-4
気候変動問題に対する適応策として、再生可能エネルギーの導入は不可欠となっており、現在は大量動員の時代を迎えている。しかしながら、一部の地域では再生可能エネルギーの開発に対する住民の反対運動が生じたり、事業計画の賛否におって地域社会が二分されたりするなど、さまざまなトラブルが発生している。本書は「エネルギー転換は誰のためになぜ必要で、どうすればうまくいくのか」という問いを掲げ、再生可能エネルギーの導入に伴って引き起こされる地域トラブルなどの「やっかいな問題」を社会的にどう解決していくべきなのか、現場での成功や失敗から学び、実践的な研究を行うことを目指した。
再生可能エネルギーの立地地域には地域に固有の事情がある。固有性を尊重しつつ、複数の文脈を作り出すような、公正で持続可能なエネルギー転換に向けた「小さな営み」を積み重なることが「やっかいな問題」を解きほぐすことになるのである。
〈研究内容紹介〉
本書のテーマである再生可能エネルギーと地域社会の受容性に関する研究の発端は、20年以上前に行った北海道の反原発運動から派生した市民風車運動/事業の調査です。風車に出資をする都市部の住民と風車の立地点の地域社会・住民との関係性が再生可能エネルギー開発にとって重要な論点であると考えたからです。2011年3月の福島第一原発事故後に急速に再生可能エネルギーが導入され、同時に軋轢も増えましたが、カーボンニュートラル社会に向けて、再生可能エネルギー開発と地域社会の受容性という観点は今後も重要な論点だと考えています。
早稲田大学文学学術院教授
西城戸 誠(にしきど まこと)
1972年埼玉県生まれ。北海道大学大学院文学研究科修了、博士(行動科学)。京都教育大学教育学部講師・助教授、法政大学人間環境学部准教授・教授を経て、2021年4月より早稲田大学文学学術院教授。
主著:
『フィールドから考える地域環境[第2版]』(共編著)ミネルヴァ書房、2021年
『避難と支援』(共著)新泉社、2019年(第13回「地域社会学会賞」受賞、第18回「日本NPO学会賞」受賞)
『震災と地域再生』(共編著)法政大学出版局、2016年
『サミット・プロテスト』(共編著)新泉社、2015年
『再生可能エネルギーのリスクとガバナンス』(共編著)ミネルヴァ書房、2015年
『抗いの条件-社会運動の文化的アプローチ』人文書院、2008年(第3回「地域社会学会奨励賞」受賞)
(2023年11月作成)