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雅楽芸人カニササレアヤコ お笑いを続けるためにエンジニアの道へ 

「得意な笑い」に気付けたのは、
サークル仲間の助言のおかげ

芸人 カニササレアヤコ

お笑い × 雅楽。まさかの組み合わせによる化学反応で、一人芸日本一決定戦「R-1ぐらんぷり2018」のファイナリストにまで上り詰めたお笑い芸人、カニササレアヤコさん。その唯一無二のネタだけでなく、当時はどの芸能事務所にも属していなかったこと、普段はロボットエンジニアとして一般企業に勤める会社員だったことでも話題になった。

そんなカニササレさんの「雅楽ネタ」は、早稲田大学で所属していたお笑いサークル時代に生まれたものだったという。ネタ作りの背景と学生時代の思い出、そして、エンジニアとお笑いの二刀流を続ける理由とは?

※インタビューは2020年2月25日に行いました。

雅楽ネタの原点は「自分にしかできない笑いって何だろう?」

平安装束を身にまとい、笙(しょう)と呼ばれる雅楽器を奏でる芸で話題を集めるカニササレアヤコさん。中学生の頃、文化祭で友人と漫才を披露したことをきっかけに笑いの魅力に目覚めると、高校でも友人とコンビを組んでお笑いの大会に出場するようになった。

「今はこんな芸をしていますが、高校時代は『大学ではコントを書いてみたい』と、正統派なお笑いを目指していたんです。そこで自分なりに調べてみたところ、小説などの創作を学べる文化構想学部の堀江敏幸先生のゼミならコントの脚本も書けるかもしれないと思い、早稲田大学を目指しました」

また、当時大学生のお笑い大会で日本一になった「お笑い工房 LUDO」(公認サークル)があることも、早稲田を目指した大きな要因だった。2012年4月に入学すると、カニササレさんも同サークルに籍を置き、お笑いに精進する学生時代がスタートした。

「早稲田祭2015」でもLUDOのライブで雅楽ネタを披露

「先輩には本当に面白い人が多くて、圧倒されましたね。高校時代にも同じ舞台に立っていたGパンパンダさんをはじめ、今も精力的に活動されている先輩たちを追い掛けて、なんとかここまで続けてこられた気がしています。また、1つ下の代にも、にゃんこスターのアンゴラ村長がいたりと、個性的な人たちばかり。私はというと、お笑いもしつつ、アルゼンチンタンゴのサークル(公認サークル「オルケスタ・デ・タンゴ・ワセダ」)で幹事長になるなど、いろんなことに首を突っ込んだ学生時代でした」

お笑い工房 LUDOでは、当初の計画通り、まずはコント作りに励んでいたというカニササレさん。ただ、「自分がしたい笑い」と「得意な笑い」の違いに気付き、サークル仲間の助言をもとに在学中に生み出したのが、今の「お笑い×雅楽」というネタだった。

2016年に迎えた卒業式で、LUDOの同級生と

「今もネタで使っている笙は、大学の入学祝いに買ってもらったもの。もともとは、私の母が趣味で『篳篥(ひちりき)』という雅楽器を始めて、その影響から笙に興味を持つようになったんです。こんな特殊な楽器を持ち歩いている人間なんてそうそういませんから、『自分にしかできない笑いってなんだろう?』と考えたときに、笙を使ったネタにたどり着きました。正直なところ、最初の頃は『これって面白いのかな?』と自分でも半信半疑でしたが、周りのみんなが笑ってくれたし、全国規模の学生お笑い大会『NOROSHI』でも審査員特別賞をいただくことができたんです。それで少し自信がつきましたね」

お笑いを続けるために選んだエンジニアの道

大学でお笑いに打ち込んでいたとしても、卒業後もそのまま「お笑い芸人」の道に進むのはほんの一握り。カニササレさんの仲間たちも、プロを目指す人がいる一方で、ほとんどは「一般就職」を選んだという。だが、カニササレさんはどちらでもない、第三の選択をした。会社員として働きつつ、お笑いも続けるという道だ。

「ちょうど私が卒業する前後から、会社員でも出演できるお笑いライブができ始めたんです。卒業して働いてもお笑いを続けたいよね、という空気ができつつあったのは大きかったと思います。それに、お笑い一本だと、どうしても収入面で断念してしまうケースをたくさん見てきました。アルバイトをするよりも企業に就職した方が経済的に安定するだけでなく、休日や有給休暇をうまく活用すれば、無理なくお笑いを続けることができるんです。だから私は、お笑いを続けていくためにも就職しようと思いました」

その言葉通り、就職先を選ぶ上では、フレキシブルな働き方ができるという視点からエンジニア職を志望。文化構想学部出身にもかかわらず、独学でエンジニアの基礎と知識を学んで就職先を決めるなど、お笑いを大事にする根幹にはブレがなかった。

「実は最初に就職した会社は忙しさもあって、ほとんどお笑いに取り組めなかったんです。しかも、人としゃべる機会も少なかったので、脳の働きも鈍ってしまった気がして…。これは環境を変えなければダメだと思い、同じエンジニアでも“人を楽しませる目的”に向いているコミュニケーション・ロボット(Pepper)の仕事ができる会社に転職しました。Pepperの行動を考えることは、お笑いの発想と似ているような気がしています」

楽器芸人のライブ「音鳴さん」に出演するカニササレさん

こうして、転職2年目の2018年、大学時代以来2度目の出場となった「R-1ぐらんぷり2018」で決勝進出という快挙を達成したカニササレさん。この活躍をきっかけに芸能事務所とも契約を交わし、賞レースだけでなく、『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ系)などのお笑い番組にも出演を果たし、さらに活躍の場を広げていった。日々のネタ作りでは、早稲田で過ごした経験が生きる場面も多いという。

「堀江先生のゼミは、文学の空気に浸る静けさがとても印象的で、どこか今の芸風にも通じるところがあるのかなと思っています。また、ゼミ以外でもジェンダー論などさまざまな授業を選択したことで、言葉の持つ力というか、危うさについて考えられるようになりました。芸人は言葉を扱う職業なので、SNSでツイート一つするにも気を配らなければいけない。言葉選びの違いで、人を喜ばせることも傷付けることもあるということに気付けたのは、大学での学びのおかげですね」

今後もエンジニアとお笑いを両立していきたいと語るカニササレさん。その先に見据える目標とは?

「お笑いでもエンジニアでも、自由に楽しく、『人を楽しませる』仕事をしていきたいですね。エンジニアとしては楽しくロボットアプリ作りを、お笑いでは、いつか早稲田の偉大な先輩であるタモリさんの番組、『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)に出られるよう、頑張ります!」

取材・文=オグマナオト(2002年、第二文学部卒)
撮影=石垣星児

【プロフィール】
1994年埼玉県生まれ、神奈川県育ち。早稲田大学文化構想学部卒業。フリーの芸人を経て、現在はサンミュージック所属。「R-1ぐらんぷり2018」ファイナリスト。笙以外にもピアノ、バイオリン、バンドネオンなどもたしなみ、絶対音感で何でもすぐ弾けるという。趣味も多彩で、学生時代にはアルゼンチンタンゴに熱中。モンゴル乗馬もこなす。Twitter:@Catfish_nama

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