15年前に放送されていた日本テレビ系列のバラエティー番組『進ぬ!電波少年』で東大卒の家庭教師「ケイコ先生」として人気タレントになり、その後、浪曲師に転身した春野恵子さんが2017年10月、早稲田キャンパスを訪れ、大隈ガーデンハウスで行われた早稲田大学ICC(異文化交流センター)主催イベントで日本の伝統演芸を披露しました。三味線の伴奏に合わせた臨場感あふれる語り芸で、“一人オペラ”とも言われる浪曲。多くの留学生が参加したイベントの様子を、早稲田ウィークリーレポーターの細川沙也加さんが伝えます。
『番町皿屋敷』『両国夫婦花火』…引き込まれ、思わず涙
早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ)
文化構想学部4年 細川 沙也加(ほそかわ・さやか)
私は今回のイベントで初めて浪曲を聞きましたが、想像以上に面白く、引き込まれるものでした。浪曲は語りもせりふも一人で行うことから、一人オペラと言われることもあるそうですが、目の前で繰り広げられる舞台に、ただただ圧倒されました。今回披露していただいたのは、『番町皿屋敷』『両国夫婦花火』の2演目です。
参加者に外国人学生が多いこともあり、まず、浪曲の聞き方を春野先生から伝授していただきました。先生いわく「浪曲とは静かに聞くものではありません」とのこと。それぞれのタイミングで掛け声があり、観客と一体になって盛り上がるものなのだそうです。最初に浪曲師が登場したときは、「待ってました!」。前口上が終わったときは、「たっぷり!」。そして演目が終わると、「日本一!」「大統領!」などと声をかけます。演目中にセリフが決まったら拍手するのもお決まりだそうです。
番町皿屋敷は、英語による浪曲でした。井戸から出てくる女性の幽霊の話が有名ですが、今回は武家の主人に愛される腰元の娘が、その愛を確かめるために家宝の皿を割ったことから引き起こされる悲恋の物語でした。聞きとるのは難しかったのですが、それでも物語の内容が伝わってくるほど熱がこもっている演技でした。掛け声や拍手も沸き起こり、会場も盛りがっていました。
次に披露していただいたのは『両国夫婦花火』。こちらは日本語です。この演目は、隅田川の川開きで打ち上げる花火を作る花火屋のお話。皆さんも一度は聞いたことがある「たまや」と「かぎや」の子・夫婦の物語です。迫力のある頑固おやじの声から、はかなくけなげな女性の声まで、一人で演じているとは思えないほどでした。登場人物の一人一人に魂が吹き込まれているような臨場感があり、物語の後半の方では思わず涙してしまいそうになるほど引き込まれました。
最後の質問コーナーでは、英語での質問が殺到。現代をモチーフにした演目はあるのかという質問に、『平成女事情』という30代から40代の独身女性をテーマにしたものなど、コメディー要素が強い私たちにも親しみやすい作品もあるということでした。ぜひ皆さんも聞いてみてはいかがでしょうか。