Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早大生リポート

『北の国から』の世界を体験 「富良野スタディツアー」

富良野で変わる、自然観。「自然と共に生きる」

社会科学部 2年 鈴木 大(すずき・はじめ)

写真 鈴木大突然ですが、皆さんは自分の価値観が変わるような体験をしたことがありますか? 留学先で受けたカルチャーショックや悩み相談をした友人からの助言によって、自分の人生観や恋愛観が変わった…というような経験をされた方は多いかもしれません。しかし、「自然に対する価値観が変わった」という経験を持つ方は意外と少ないのではないでしょうか。今回は、私の自然観を変えることとなった富良野での体験についてお話ししたいと思います。

写真②

馬と対話しながら世話をしている様子

私が参加したのは、テレビドラマ『北の国から』(フジテレビ系列)などで著名な作家・倉本聰氏が主宰する「富良野自然塾」と、平山郁夫記念ボランティアセンター(WAVOC)が共同で主催した「富良野スタディツアー」です。この3泊4日のツアーは、富良野の大自然を五感で感じながら環境について学ぶ「環境教育プログラム」、富良野の地に根付く演劇的手法を用いて現地の風土を感じる「表現ワークショップ」、そして電気やガスのない中でエネルギーに頼らない原始的な生活を送る「生活体験プログラム」など、富良野の地ならではのさまざまな体験ができるプログラムでした。

初日には、いくつかの真っ暗な部屋の中に富良野の四季が再現されている「闇の教室」という施設を訪れました。ここでは、完全な暗闇の中を視覚以外の感覚を頼りに進むことで、“光”にあふれた文明社会では鈍ってしまっているそれらの感覚をよみがえらせるという体験ができます。だんだんと神経が研ぎ澄まされていき、細かな温度やにおいなど自然の変化を感じるようになっていく感覚は、非常に不思議で感動的なものでした。

写真①

タマネギ畑で農作業を行う学生たち

このように、今回のツアーでは多種多様な体験を通して、自分がいかに日頃から身の回りの自然に対して鈍感であったかということを思い知らされることが数多くありました。その中でも、私の価値観に最も衝撃を与えたのは、富良野で暮らす人々の「自然と共に生きる」という姿勢でした。例えば、農業体験でお邪魔した農家の方がおっしゃっていた「大地や農作物と対話しながら世話をしている。私たちは自然が生み出したものをおすそ分けしてもらっている」という言葉や、馬小屋を所有しているご夫婦を伺った際に聞いた「馬も人間と同じで感情や意思がある。馬が嫌がることはしない。彼らが私たちに心を許してくれないときは、許してくれるまでそっと待つ」という言葉は特に印象的で、富良野の人々が自然を支配や搾取の対象ではなく、人間と平等、もしくは敬意を持って接する対象として考えているのだなと強く感じた場面でした。「自然と共に生きる」というフレーズは確かにありふれたものではありますが、その意味をただ単に頭で理解するだけではなく、それをここまで徹底的に行動に移している人々の姿に、私は大変感銘を受けるとともに、かなりの衝撃を覚えました。

このことは、私の自然との向き合い方=自然観に大きな影響を与えてくれました。今回のツアーを終えてからは、公園や自宅の庭など、身近なところに存在する動植物を漠然と「自然」として見るのではなく、一つ一つの命として捉えるようになりました。また、自分にとって不快・有害という理由だけでそれらを排除するのではなく、受け入れて共生することが必要だと考えるようになりました。

都会に住んでいる私にとって、日常的に大自然の中で環境問題に取り組むことは容易なことではありません。ですが、どんなに小さな自然に対しても「共に生きる」という姿勢で向き合うことが、大きな環境問題を解決する第一歩になるのではないかと考えています。私はこれからも、富良野の人々から学んだ自然観を大切にしていきたいと思います。

ゴルフ場跡地での植樹作業を終えて。再び森に戻るのは100年後(筆者は左から2番目)

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