Waseda Weekly早稲田ウィークリー

早大生リポート

演劇博物館の中で上演 柄本明氏演出『小さな家と五人の紳士』

ガラスケース越しに見た公演の様子。柄本氏は赤い服を着た女を演じた

早稲田大学坪内博士記念演劇博物館の2階企画展示室を利用した演劇『小さな家と五人の紳士』(別役実作)が10月9日に公演されました。同公演は映画・舞台・テレビにと幅広く活躍する俳優の柄本明氏が座長を務める劇団東京乾電池による上演で、柄本氏は演出を手掛けるとともに役者としても出演しました。サミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」をモチーフに書かれた男5人と女2人の不条理劇が、1日限りの不思議な空間を創り上げました。

※早稲田大学政治経済学部出身

 

 「なんだかすごく不自由な気持ちになった不条理劇

早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ)
政治経済学部4年 當銘 啓太(とうめ・けいた)

tome日本で不条理劇を確立させた別役実さんの脚本を、俳優の柄本明さんが演出・出演したという豪華さにもかかわらず、お客さんは定員40人という実にぜいたくな公演でした。演劇博物館の展示室という場所も独特でした。舞台装置や音響・照明もほとんどなく、役者さんが発する言葉の一つ一つと、シンプルな小道具、木の床を踏むギシギシという音が際立っていました。

企画展示室なので部屋の中央には大きなガラスケースがあり、私の席からはガラスケース越しに舞台が見えました。最後のあいさつで柄本さんが「どこでもやろうと思えばできるものだなと」とおっしゃっているのが印象的でしたが、逆にあのような場所・規模だからこそ生きる演目だという風に感じました。

あらすじを説明するのは難しく、なんということのない会話と突然の出来事が繰り返し起こる舞台なのですが、私が感じたのは、「共感」の難しさです。例えば、「くすぐったい」とはどういうことか、分からない一人の男が登場します。だから、くすぐられて変な感じがしても、それが「くすぐったい」のかどうか分からない。

東京乾電池の俳優たち

「くすぐったい」とは?

その男に説明しようとする周りにいる他の男たちは、「くすぐったいと笑ってしまう」と言います。しかし後で登場する女は「くすぐったいとうめいてしまう。笑っているのは、くすぐったくないから」と言い、「くすぐったい」を理解していると思っていた男たちは動揺します。

同じ言葉や同じものに対して、同じ理解をしている人は実は一人もいません。みんなで同じように思っている、と思っていたことは、実はどこまでも、自分なりに決めたフレームを通してしか理解していません。そうする他ありません。

紳士が作った小さな家

紳士たちが作った小さな家

最後に、5人の男たちは劇中に登場したアイテムを使って家を建てます。タイトルにもなっているそのシーンは、やはり印象的でした。みんな自分の「家」にいて、そこは当然自分のものだと思っていて、「家」の中にいると「窓」からしか物事を見ることを許されない…と、客席から見ている私自身も、なんだかすごく不自由な気持ちになりました。

舞台上で5人の紳士が、お互いに「それは違う」「バカ」「つまりな」と言い合っているのを見ながら、私自身も、信じていた自分と世界の共通認識のいびつさを意識せざるを得ない、不思議な1時間でした。「不条理劇」の世界の一端に、触れられた気がします。

あの感覚を、ぜひ多くの人に体験してもらいたいです。演劇に普段触れない方こそ、過ごしてみてほしい時間です。特に本を読んでぼーっと考え事をするのが好きな方にはお勧めです。是非、東京乾電池さんの今後の公演に足を運ばれてみてください。

また、2018年の創立90周年に向けてリニューアル中の演劇博物館による今後の企画も要チェックです。

終演後に挨拶する役者

一日限りの不思議空間を創った東京乾電池の7名の役者


写真:宇壽山貴久子
写真提供:演劇博物館

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