ウズベクプロフ(palov)が持つ団結する力
大学院法学研究科 博士後期課程 2年
クチコロフ・ミルショド
日本ではあまり知られていない中央アジアの国ウズベキスタンは、26年前の1991年に国家として独立した「若い国」です。英国の経済紙『ファイナンシャル・タイムズ』が勧める2017年の旅行先ランキングでは2位にランクされています。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録されているサマルカンド(Samarkand)やブハラ(Bukhara)といった歴史的な観光地だけではなく、シルクロードの影響を受けた、さまざまな文化が融合した独特の文化や伝統的な料理は、他の国からの観光客にとって魅力的に映るはずです。
今回は、ウズベキスタンの伝統料理「ウズベクプロフ(palov)」についてご紹介したいと思います。
1.種類が豊富なプロフ
プロフは日本でおなじみのピラフの基になったお米を使った料理で、お米を肉や野菜などと一緒にブイヨンで煮て作ります。ウズベキスタン以外にも中央アジアのほぼ全域において広まっており、その国や地域によって呼び名や作り方などが異なります。ウズベキスタン国内でさえ、地方によって作り方が違うので、さまざまな種類のプロフがあります。

ウズベキスタンでは「料理の王様」とも称されるウズベクプロフ(写真:©Arbuz.com)
2.プロフの「料理」を超えた意味

イベントで振る舞われるウズベクプロフ(名古屋大学で開催されたインターナショナルフェアにて)
2016年に「プロフに関わる文化・伝統」がユネスコの「無形文化遺産」に登録されました。つまり、長い歴史を持つこの料理は、ただの食べ物としてだけではなく、それ以上の意味を持っているということができるのです。例えば、ウズベク人の家庭では、毎週木曜日にプロフを作ることが習慣となっています。おいしいプロフを食べるために家族全員が集まり、プロフを食べながら団らんの時間を過ごすのです。家族の集まりだけではなく、結婚式の前日に「オシュ(ウズベク語ではプロフを「osh」とも呼びます)パーティー」を開催することもあります。パーティーは休日や夜に行われるのが一般的ではないでしょうか? しかし「オシュパーティー」は、仕事などに間に合うように、通常早朝に行われます。プロフはこのようにハレの日に食べる料理でもあるのです。他にも友達同士や同僚などが一堂に会し、1カ月に1回など、プロフを作って食べる会もあります。

料理の仕込みをみんなで行うのも大切なプロセス
私は、プロフそのものよりも、それを一緒に作って食べる過程が非常に大事だと思っています。つまり、人々を結び付ける力がプロフにはあるのではないかと思うのです。最近では、外国にいるウズベク人にもプロフパーティーをやる習慣が広まっています。知らない人たちがプロフをきっかけに集まることで、そのネットワークを広げています。

ウズベク人の友人たちとはウズベクプロフを通じて親睦を深めます(前列中央が筆者)
◎ ウズベキスタンはこんなところ ◎
1991年にソビエト連邦より独立したウズベキスタン共和国は、中央アジアに位置します。日本の約1.2倍の44万7,400平方kmの国土を有し、ウズベク系の民族を中心に約2,940万人が住んでいます。ユネスコの世界文化遺産には、プロフ以外にもヒヴァ、ブハラ、シャフリサブス、サマルカンドが登録されています。