Waseda Weekly早稲田ウィークリー

News

ニュース

揺れる思いを、分かち合う

歳を重ねるにつれ、人の死や重い病、認知症の話が、すっかり他人事ではなくなってきた。

先日、お世話になった先輩の知らせを聞いた。長年医療に関わっていた先輩は、元気な頃「延命治療は望まない」と明言していた。しかし認知症が進行し、口から食べられなくなり「このままだと数週間」と宣告された時、ご家族は悩み抜いた末に「胃瘻(ろう)造設」(※1)を決断したという。今は無事に手術を乗り越え、ご自宅で療養されているそうだ。

※1 体の外から胃の中に直接栄養剤を流し込む手術

昨今、もしもの時の医療やケアについて前もって話し合う「ACP(人生会議)」(※2)の重要性が叫ばれている。希望を記録し、何度でも見直せるこの取り組みは、決断を迫られる家族の負担を減らすためのものだ。しかし、日本ではなかなか普及していない。「不吉なことを口にすると現実になる」という言霊の感覚から死をタブー視する文化や、「あるがままに受け入れる」という無常観の影響もあるのだろう。

※2 Advance Care Planningの略

先輩の件を通して痛感したのは、たとえ本人が意思を示していても、いざ愛する人の命のタイムリミットを前にした家族が、それを受け入れるのは想像を絶するほど苦しいということだ。

だからこそ、人生会議は「書類に書いて終わり」ではないのだろう。変わりゆく気持ちや、どうしても揺れ動いてしまう家族の葛藤ごと、何度も繰り返し分かち合っていく過程そのものが、残される者への本当の意味での救いになるのだと思う。

(IK)

第1196回

早稲田が分かる大学公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/weekly/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる