
撮影:布川 航太
2026年3月に早稲田大学を卒業・修了する皆さんへ、各学術院長・学校長からのメッセージを贈ります。これらの言葉を胸に、夢に向かって歩んでください。
前途は実に洋々たり(石橋 湛山)
政治経済学術院長
鎮目 雅人(しずめ・まさと)
石橋湛山は、日本が第二次大戦に敗れた1945年8月、「更生日本の門出―前途は実に洋々たり」と題する論稿の中で、「あらゆる人為的制限は、過去現在の産物を禁止あるいは破壊する力を持つであろうが、人の頭脳の活動を禁止し、それより将来産れ出づる物に対して制限を加える途はない」と述べました。皆さんはこれから、自分自身の道を切り開いていくことになります。学生時代の経験、仲間たちとの交流から得た知見と、自分で考え、判断し、行動する力を信じて、どんな状況にあっても、それぞれの人生を存分に生きてほしいと思います。
Next One!
法学学術院長
田村 達久(たむら・たつひさ)
誰(画家ピカソか、喜劇王チャップリンか)の言葉であるかはともかく、あなたの最高傑作は何か、との問いかけへの回答が、「Next One!(次回作!)」であったといわれる。現状に満足せず、さらなる高みを目指すとの心持ちを表現した言葉だ。皆さんが今まさに飛び出さんとする日本の経済社会はイノベーションを声高に求める。これを成功させるには新たなものを積極的に取り入れるという心構え、すなわち、進取の精神が大切ではなかろうか。この精神を涵養(かんよう)された皆さんのいっそうの活躍を願い、この言葉を贈る。
「大事は軽く、小事は重く」(鍋島 直茂)
文学学術院長
柳澤 明(やなぎさわ・あきら)
「座右の銘」というほどではありませんが、いつの頃からか、この言葉がよく頭に浮かびます。佐賀藩の藩祖鍋島直茂の言葉だということですが、本来の意味はよく知りません。ただ、大きな決断を迫られたとき、あまり悩んでも結局正解は分からないことが多いので、深く考えずに直観に従う方が、かえって良い結果を招くこともあるようです。逆に、一見どうでもいいような小さな事こそ、よく考えて慎重に判断するのが大切だと思います。そうした日常の小さな積み重ねが、大事にぶつかったときの直観を培ってくれるのではないでしょうか。
好奇心というのは道草でもあるわけです(手塚治虫)
教育・総合科学学術院長
箸本 健二(はしもと・けんじ)
手塚治虫の言葉は、「確かに時間の無駄ですが、必ず自分の糧になる」と続きます。一見非効率と思いがちな回り道にこそ、新しい発見や創造の種が潜んでいるという含意です。図書館で、お目当ての本の上下左右に配架(はいか)されている関連書籍の方に興味が湧き、思わず読みふけることがあります。これも一種の道草に他なりませんが、思いがけず得られる知識や視野の広がりは無上のものです。AIが “解答”を器用に探すご時世だからこそ、自身の検索エンジンを磨くであろう「好奇心に駆られた時間」を大切にしてほしいと思います。
至人は行を留めず(荘子)
商学学術院長
横山 将義(よこやま・まさのり)
これは荘子の言葉であり、創意工夫による前進すなわち現代風にいえばイノベーションの必要性を説くものと解されています。昨今のパラダイムシフトの中、皆さんが立ち向かう新たな社会では変革が余儀なくされ、既成概念にとらわれることなく行動することが求められます。これからはおそらく trial and error の繰り返し、場合によっては error and error の繰り返しになるかもしれません。学生生活の中で培った知的探求心を活用し、未知の世界を楽しみながら自らの可能性に挑戦してみてください。皆さんのご活躍を心よりお祈りします。
立派な人間になるための一つの条件は、自分が心から尊敬できる人を持つこと(井深大)
理工学術院長
戸川 望(とがわ・のぞむ)
本学理工出身で、ソニー共同創業者の井深大の言葉です。早稲田キャンパスにある国際会議場・井深大記念ホールは彼の名を冠しています。長い人生において、心から尊敬する「人」あるいは「師」を持つことは、学ぶ上で非常に重要だと思います。そして、一人の「師」でなく複数の「師」を持つことも大切です。さまざまな分野で多くの「師」の師事を仰ぎ、多くの学びを得ることで、自分自身がたくましく成長することと思います。卒業し世界に羽ばたく皆さんが、これから世界中で大いに活躍することを心より期待しています。
I always listen to what I can leave out.
「いつも何を省けるかを聴いている」
社会科学総合学術院長
佐藤 洋一(さとう・よういち)
情報の海、人の渦の中で、泳いでいく。そのためにはそぎ落とすことが必要だ。ジャズの巨匠マイルス・デイヴィスは、ある時期冗舌な表現から、音を減らす方向へとかじを切った。必要なのは、そぎ落とし、大切なものを際立たせること。だがそのためにはよく聴き、真髄を理解しなければならない。AIは無限の情報を提供し、SNSのフィードは絶え間なく流れ続ける。アルゴリズムが推奨し、検索エンジンが答えを示す。しかし、それは本当に「あなたの音」か? よく聴け。そして削れ。余白の中に、あなたの音は響く。
人間性尊重という理想を胸に
人間科学学術院長
扇原 淳(おおぎはら・あつし)
「人間科学」は、人がどのように考え、感じ、行動し、他者や世界と関わるのかという根源的な問いに向き合う世界最先端の学びの体系です。皆さんがジンカで得た、多様な人々との協働によって学融合的に社会課題の解決に取り組んだ経験は大きな財産です。科学技術が急速に発展する今、人々の尊厳や幸福が見失われがちです。だからこそ人間性の尊重という理想を高く掲げることが重要です。緑あふれるトコキャン、ジンカで培った俯瞰(ふかん)する力で、より良い社会の実現に貢献し、活躍されることを期待しています。
自分ができること以上のことに挑戦しなければ、成長はない(ラルフ・エマーソン)
スポーツ科学学術院長
松岡 宏高(まつおか・ひろたか)
“Unless you try to do something beyond what you have already mastered, you will never grow (Emerson).” 皆さんは大学生活の中で、自分の能力を超えるようなチャレンジをたくさんしてきたことでしょう。その結果が皆さんの成長です。卒業して社会人になったからといって、挑戦をやめる必要は全くありません。これからも、自分の限界を設定せず、小さくても構わないので新たなチャレンジを続けてください。そして達成したときの喜びを何度も何度も味わってください。皆さんの限りない成長を楽しみにしています。
Sapere aude!(ホラティウス)

国際学術院長
稲葉 知士(いなば・さとし)
ローマの詩人ホラティウスが書簡詩の中で語った言葉で、「賢明になることを懼(おそ)れるな」という意味から、学部の信条としています。現在、世界は一瞬たりとも未来を予測することが困難な状況にあります。早稲田大学での学びを生かし、多様な国の価値観を理解し、自分の選り好みの判断を超えた地球上に生きる一人の人間として、自分が社会に対して良いと思うことは進んで実践してください。いろいろな人と出会って大いに議論し、自分と仲間の可能性を信じ、世界に貢献するリーダーとして、ご活躍を期待しています。
解剖台の上のミシンと蝙蝠(こうもり)傘の偶然の出会いのように美しい(ロートレアモン)
芸術学校長
宮本 佳明(みやもと・かつひろ)
ロートレアモンの『マルドロールの歌』に収められた有名な一節です。異質なものの出合いに美を見いだす姿勢は、シュルレアリストたちに大きな影響を与えました。それは美術の世界にとどまらず、私たちを取り巻く風景にも当てはまります。全てが計画し尽くされた都市よりも、偶然できてしまった妙な交差点や地形に惹かれることがないでしょうか。人生もまたしかり。異物との予期せぬ出合いの中にこそ、豊かな気付きがあることが多いものです。皆さんも自ら異質な他者と相まみえることで、豊かな人生を切り拓いて行ってください。





