Waseda Weekly早稲田ウィークリー

News

ニュース

所キャン湿地保全活動の代表を務める早大生 次世代に豊かな自然を!

「自然と人とのつながりを生み出すのが私たちの使命です」

人間科学部 2年 杉浦 美羽(すぎうら・みう)

所沢キャンパス B地区にて。天日干しされた稲をバックに

早稲田大学所沢キャンパスには、B地区と呼ばれる広大な湿地と雑木林が広がっている場所があります。そんな早稲田大学所沢キャンパスB地区湿地保全活動(以下、湿地保全活動)の代表を、大学2年生にして務める杉浦美羽さん。所沢キャンパス内の自然環境を保全するために、早稲田米の田植えから収穫、ホタルの鑑賞会など、毎月さまざまなイベントを開催し、地域の方を巻き込みながら活動をしています。そんな杉浦さんに、湿地保全活動に興味を持ったきっかけや、代表に抜てきされた経緯、今後の展望などを聞きました。

――湿地保全活動に興味を持ったきっかけを教えてください。

東京都出身ですが、家の近くに川が2本流れていて身近に豊かな自然環境があったことや、家族が生物好きだったこともあり、小さい頃から自然が大好きでした。多摩川で自然に触れられるワークショップに参加して、魚を取ったり川の石を観察したりしたこともあります。

高校では生物部に所属し、ヒラメやオニオコゼといった海の生物を対象に飼育、養殖、標本づくりといった活動に取り組んでいました。他にも、イモリ、ヘビ、ハリネズミなどさまざまな動物と触れ合ったことも。高校では海と向き合う機会が多かったので、大学では森という別の視点から自然を研究したかったんです。なので、入学前から湿地保全活動に携わりたいと思っていました。

高校時代、生物部で海洋生物の採集に江の島へ行った時の一枚

――湿地保全活動とはどのような活動ですか?

所沢キャンパスには、教室や野球場などがあるA地区とは別に、B地区という3ヘクタールもの広大な湿地と雑木林が広がっている自然豊かなエリアが存在するんです。湿地保全活動では、所沢キャンパスの自然環境の調査と研究を行っている、早稲田大学自然環境調査室のバックアップの下、30人ほどの早大生が中心となってB地区の保全と調査を行っています。月に一度、一般学生や地域の方向けに、多様な自然の大切さを体感してもらうためのイベントを開催しており、毎回20名前後の方が参加しています。

写真左:2025年5月24日に開催した田植えイベント
写真右:2025年2月15日に開催した鳥類観察会。地域の方と学生が交流しながら観察を行っている

一年間の大まかなイベントスケジュールとしては、5月に田植え、7月に蛍の観察会、10月に稲刈り、11月にジネンジョ掘り、2月に鳥類観察会を行っています。湿地保全活動の一環として行っている稲作では、早稲田大学で作った米・早稲田米として、埼玉県のブランド米である「彩のきずな」という品種を育てているんです! 粘りが強くもっちりとした弾力が特徴で、爽やかな甘みとうまみがあります。

早稲田大学所沢キャンパスB地区湿地保全活動2025年度の前期活動予定(左)、後期活動予定(右)(※クリックして拡大)。湿地散策や草木染め、オオムラサキの観察のイベントなども開催している

――どのような経緯で代表を務めることになったのですか?

以前から自然環境調査室の活動に興味があったので、大学入学前に職員の方に連絡してお話を伺っていました。実際に所属してみると思っていた以上に楽しくて、気付いたら一度も欠かすことなく活動に参加していたんです。そのような姿勢が評価されたのか、2025年秋学期から湿地保全活動の学生代表を務めないかと声を掛けていただきました。

代表としての主な役割は、活動全体の取りまとめです。イベントでは、小さいお子さんからご高齢の方まで、幅広い年代の地域住民の方々が参加してくれるため、安全に活動できるようにスタッフの配置を考えたり、エリアを整理したりしています。また、広報ポスターの制作やイベント参加希望者への対応、参加者に向けた活動の紹介など、団体と参加者の橋渡しも行っています。

このように活動を続ける中で、自信を持って人前に立てるようになったと感じます。重要な役割を担っているのだという責任感が芽生え、活動への熱意もより一層高まりました。

写真左:2025年10月の稲刈り前の稲。水田3枚を稲作に利用している
写真右:2025年10月に開催した稲刈りイベント

――湿地保全活動の意義は何でしょうか?

湿地保全活動によって、より多様な生物が暮らせる豊かな環境を作ることができます。森林や草地しかない単調な環境では、特定の生物のみが存在する乏しい生態系になってしまいます。実際に活動を続ける中で、B地区の環境に変化を感じるようになりました。初めは見掛けなかった水生昆虫やカエル、メダカなどの生物が水面を泳いでいる姿を観測できるようになったんです!

また、森という視点から自然と触れ合う中で、人間と自然は相互に支え合っているのだと実感するようになりました。一見すると、自然は人間に保護される立場だと思われがちですが、逆に保護することでおいしいお米を収穫できたり美しいホタルを見ることができたりといった恩恵を私たちは受けています。だからこそ、自然と人とのつながりを生み出すことも、湿地保全活動の重要な意義だと思います。

写真左:水田にいたシュレーゲルアオガエル。水田作業をしていると度々現れるのだそう
写真右:収穫した早稲田米。イベント参加者に配布することもある

――今後の展望を教えてください。

豊かな自然環境を次世代に残していくためには、活動をより多くの人に知ってもらい、その担い手を増やすことが重要です。現在のイベントは地域の方の参加が目立ちますが、もっと早大生の興味を引き出したいと思っています。せっかく早稲田大学に通っているのに、B地区という自然環境に触れないのはもったいない! 所沢キャンパスだけでなく、他キャンパスの学生にも広く発信することが、私たちの使命です。

活動を認知してもらおうと、今年は所沢キャンパス祭2025に団体として初めて出店しました。草木染のワークショップを開催し、100名近くの方に参加してもらうことができたので、団体のことを知ってもらう良い機会になったのではないかと思います。

これからさらに多くの人を巻き込んで活動するためにも、授業や湿地保全活動におけるフィールドワークなどを通して、私自身の知識やスキルを磨いていきたいです。

写真左:所沢キャンパス祭2025での草木染のワークショップ。会場の一角では、自然環境調査室が所有する剥製の展示も行った
写真右:草木染された布。セリ、ドクダミ、セイタカアワダチソウなどのB地区で拾った葉っぱを使用している

第916回

取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
文化構想学部 4年 浮谷 雛梨

エレクトーンを楽しんでいる杉浦さん

【プロフィール】
東京都出身。東京都立日野台高等学校卒業。大学入学後は平塚基志教授(人間科学学術院)の授業などを通して、森林環境科学に関する知識を深めている。趣味はバードウォッチングで、休日には山へ行き、さまざまな種類の鳥の観察を楽しんでいる。鳥の他にも、最近は特に、国蝶であるオオムラサキの幼虫の観察にハマっているそう。3歳で始めたエレクトーンは、現在も趣味として継続中。

 

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/inst/weekly/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる