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戦死者慰霊から見る東アジア【社会科学研究科】

大学院ってどんなところ? 現在、早稲田大学には21の大学院があります。今回の「研究まっしぐら」は、社会科学研究科で研究に励む濵田さんのキャンパスライフを紹介。大学院へ進学した理由をはじめ、学問の魅力だけでなく、一日の過ごし方も伝えます。

歴史の問題は過去だけでなく現在の問題でもある

大学院社会科学研究科 博士後期課程 2年 濵田 澪水(はまだ・れな)

私は東アジアの戦死者慰霊について研究しています。主な研究対象は、日本・中国・台湾の戦死者を祭る墓園や神社、または戦争記念館などです。「戦死者」や「慰霊」というと、過去の出来事を探究していることから歴史学的な印象や、「慰霊」という言葉から文化人類学的な印象を持つ人もいるかもしれません。これらの要素を多分に含みながらも、実は私の問題関心は過去から連綿と続く「現在」にあります。

戦後、戦死者を弔う生者の営みである慰霊という行為や思想は、しばしば国内外の政治争点になってきました。そして、時には民間人同士の対立や摩擦を引き起こす要因にもなっています。その原因の一つには、慰霊という行為が、ただ死者を弔うだけでなく、現在を生きる人びとが過去をどう解釈し、現在から未来をどう見据えているのかという意識と大きく関わっていることがあるのではないでしょうか。

また、人びとの意識だけではなく、過去の出来事に端を発して、その時々の国際関係、国内政治、社会の価値観などさまざまな要因が絡み合って現在の問題につながっています。そのため、戦死者慰霊の問題は、過去と現在のみならず、未来の争点にもなりうると考えます。戦争や紛争の絶えない現代において、これらの問題関心は重要な課題ではないかと思い、日々勉強や探究にいそしんでいます。

家で先行研究を整理するときは、タブレットで文献を参照しながらPCにメモをとることが多いです

このような問題に関心を抱くようになったのは、学部の卒業論文で日韓の慰安婦問題をテーマに取り上げたのがきっかけでした。論文執筆の準備段階で、関連資料や文献を読み進めていくうちに、今の自分自身や生活が戦争の歴史の上に成り立っていること、また、今なおその歴史に苦しむ人たちがいることを知り、歴史の問題は過去だけでなく現在の問題でもあることに気付きました。そこから派生して、現代の歴史認識に関わる問題にも興味を持つようになったのです。

留学先の台湾・台北にある中正紀念堂。白すぎて目が痛いほどでした

修士課程では、大学の交換留学プログラムを利用して、台湾の中山大学へ半年間留学しました。台湾は、これまで幾度も統治者が変わってきた地域です。統治者が変われば歴史意識だけでなく、政治や教育を含む社会制度も変わります。そのため、異なる歴史意識に基づく祠(ほこら)や記念館・碑がいくつもあります。滞在中は授業を聞くだけでなく、積極的に歴史分野の先生方にアポイントを取り、台湾の歴史意識の現状やアイデンティティーに関する話などを伺いました。

ここで苦労したのは、自分自身のポジションをどう考えるかということです。文献を読むときも同じですが、得た情報を解釈する際に無意識にバイアスがかかってしまっていたり、自身の価値観に無頓着であったりすることがあります。この点をどう克服するか、正解はまだ見つけられていませんが、自分の解釈について先生や周りの学生と議論することが大切だと思っています。

実際に現地へ足を運ぶことで得られる情報が文献資料の情報と合わさり、また他者との議論を通じて点と点がつながることもあります。今後も文献資料を丁寧に読み込んでいく作業を怠ることなく、それに加えて現地に赴いて対象を観察することで、新しい発見ができるように研究に邁進していきたいです。

ある日のスケジュール
  • 07:00~08:30 起床・朝食・身支度
  • 08:50~12:50 大学のティーチングアシスタント(TA)業務(合間にレジュメ作成や先行研究の整理を進めたり、昼食を取ったりします。大学の予定がない日は、学内の図書館か国会図書館で資料収集や先行研究を整理することが多いです)
  • 13:10~14:50 語学(朝鮮語)の授業
  • 15:15~16:15 指導員とのミーティング
  • 17:00~19:00 ゼミ
  • 19:30~20:30 ゼミ食事会
  • 21:00~22:00 帰宅・就寝準備
  • 22:00~24:00 自由時間・就寝(論文執筆やレジュメ作成など作業量の多い時期は追加作業に、少ない時期はアニメ・ドラマ鑑賞や語学学習に充てています)

写真左:2025年3月に学会で訪問した上海外国語大学。口頭発表を行いました
写真右: 高田馬場へ行くと、駅構内にある「香家」でほぼ毎回冷やし麻辣汁なし担々麺を食べます

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日は毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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