導入講義(選択) ―法曹の仕事を知る―【法学部設置科目】
法学部 4年 金子 路佳(かねこ・るか)

早稲田キャンパス 8号館にて。白石先生(左)と金子さん(右)
皆さんは、「法曹」という言葉を知っていますか? 辞書には、「法律実務に従事する者。特に、裁判官・検事や弁護士をいう」(新村出編『広辞苑』第七版、岩波書店)とあります。「なんだ、法律家のことか、法学部じゃない自分には関係ない」「法律って堅苦しくて難しそうで興味ない」。このように思った人は少なくないかもしれません。でも、「法曹」とは法律を扱うことだけを意味するものではありません。法曹の世界は、法律という学問領域を超えてさまざまな分野に関係するのです。白石大先生(法学学術院)の「法曹の仕事を知る」(オープン科目)という授業では、多方面で活躍する法曹の世界を知ることができます。
最初の講義では、法曹とは何か、法曹になるにはどのような過程を踏むのかを、白石先生が説明してくださいます。その後、実際に法曹有資格者として活躍されている実務家によって、法曹の仕事についてオムニバス形式の講義が続きます。来てくださる講師の皆さんの職業は本当に多様です。裁判官、検察官、弁護士、公務員。そして一口に弁護士といっても、離婚問題などを扱う民事事件専門の弁護士から、事件の容疑者を弁護する刑事事件の弁護士までさまざまです。

法曹の方による講義前の、白石先生からの説明
例えば刑事事件を扱う弁護士の方の講義では、なぜ容疑者を弁護するのか、国家と個人という不均衡な権力関係の中で弁護士が果たす役割について知ることができます。一方で検察官の方の講義では、検察官として犯罪にどのように向き合い解決するのか、その実務を実感することができます。このように、実務上正反対にいるそれぞれの立場から物事への向き合い方を聞き、同じ問題に対して異なる視点を学べるのもこの講義の魅力です。
また、弁護士資格を持ちながら公務員や企業で働く法曹のお話も聞くことができます。実際に公務員として消費者庁に勤務経験がある方は、弁護士の資格を生かし独立した立場から消費者事故(※)を調査することで、事故の解明と再発防止に努められていました。
※消費者生活において、安全性を欠く製品やサービスが消費者に被害をもたらした事故。

家事事件専門の弁護士による講義の様子。選択的夫婦別姓問題のような時事的な話題、刑事事件の捜査や裁判といったテレビで見るような世界が実際にどのようなものか、臨場感あるお話を聞くことができます
複雑化する社会で、限られた領域の知識だけでは太刀打ちできない問題が山積みの中、さまざまな知識を用いて解決し、人々に寄り添うことができるのが法曹の仕事であり、まさに学際的な職業であると言えます。そして、法曹が行う仕事は、私たちの生活にも身近な側面を持つのです。法学部ではない皆さんも、この授業で多彩な法曹の世界をのぞいてみませんか?