「ワセメシの新常識、ぜひ食べに来てください!」
教育学部 4年 藤村 連(ふじむら・れん)

「東京海老トマト」早稲田店前にて
2023年10月、早稲田キャンパス正門から早大通りを徒歩5分の地にラーメン店、「東京海老トマト」を出店した藤村連さん。看板メニューはその名の通り、海老とフルーツトマトをふんだんに使用したラーメン、東京海老トマト。出店するにあたってラーメン作りを1から学んだ上、資金調達から店舗の内装デザインまで全て自分で行ったそうです。そんな藤村さんに出店の経緯やラーメン作りにおけるこだわり、大学での学び、今後の展望などについて聞きました。
――「東京海老トマト」を出店した経緯を教えてください。

高校3年生のときの夏のインターハイにて
就活に向けて自己分析をした大学2年生の頃に自分の人生を振り返り、サッカー選手になりたいという小さい頃の夢を思い出しました。個性的なプレーで相手をかわしてシュートを決め、観客を沸かすような選手に憧れていたんです。その夢はだいぶ前に諦めたのですが、自分のやりたいことは、個性的な取り組みで多くの人の心を動かすことなのだと気付きました。
それをどのようにしたら実現できるのかを考えたときに辿り着いた答えが、起業家になることでした。起業家であれば自分がゼロから作り出したものによって、社会に影響を与えることができると思ったからです。そして国民食としても人気が高いラーメンであれば、その野望をかなえることができるのではないかと思い、事業内容としてラーメンを扱うことを決めました。

「東京海老トマト」早稲田店、オープン初日の様子
ラーメン激戦区といわれる早稲田の地で一石を投じることができるような新しいラーメンを模索していたところ、新宿にある「東京海老トマト」に出合い、衝撃を受けました。「この味を早稲田でも提供したい! 」との思いで店主に直談判し、2023年の8月から3カ月ほど修行を積みました。でも、出店するためには1,000万円ほどの資金が必要になるんです。そこで、知り合いの社長などに直接交渉して熱意を示し、投資してもらいました。並行して物件を探したり、内装デザインを自分で練ったりして、2023年10月に無事にオープンすることができました。
――経営者として具体的にどのようなことをしていますか?
店舗の運営にまつわる1から10まで全てやっています。具体的には、食材の仕入れやラーメン作り、提供、店の掃除、アルバイト管理、在庫管理などです。また、売り上げ目標を設定してどう達成するのかという計画を立てるなど、財務管理も行っています。さらに、早大生における認知度を上げるための戦略を練るマーケティングも手掛けています。あとは、お客さんのニーズに応えるための取り組みです。例えば、最近は中国人留学生の来店者が増えているため、券売機をリニューアルして、日本語と英語だけではなく中国語表記を加える予定です。

店内に設置された券売機。メニューのみでなく、全四種類のラーメンの説明などが詳しく書かれている
――ラーメン作りでこだわっている点は何ですか?
素材に特にこだわっています。高級食材のオマール海老を頭からふんだんに使用することで、風味をよくしています。また、イタリアの契約農園から取り寄せたフルーツトマトを使用しているのですが、フルーツトマトは普通のトマトよりも甘みが強いので、トマトの酸味が苦手な方でも食べやすいんです。
いつでも「これが最高の一杯だ」と思いながらラーメンを提供しているのですが、工夫できるポイントはいくらでも増えていくのが難しいところでもあり、楽しいところでもあります。例えばこの工程は要らないなとか、これを前もって準備しておけばもっと早くお客さまに提供できるなといったことなど。日々改良が可能なので、難しいゲームをクリアしていくような感覚で取り組んでいます。
写真左:オマール海老でだしを取っている様子
写真右:14席のゆったりとくつろげる店内。シンプルでおしゃれな内装が印象的
――早稲田大学に入学した理由と、大学での学びを教えてください。

入学式当時の藤村さん
早稲田大学を選んだのは、早稲田の文化や空気感が好きで、ずっと憧れを抱いていたからです。 さまざまな議論が繰り広げられる社会の中で、きちんと自分の意見を持てる大人になりたいという強い思いがありました。そして教育制度はこれから新たな転換期を迎えると考え、その仕組みや背景を学ぶべく教育学部を選択しました。
大学では教育に関するゼミに所属し、修学旅行などの授業以外の特別活動について研究しています。具体的には、特別活動の歴史や、特別活動が生徒にどのような影響を及ぼすのかといったことについてです。また、自分の専門分野以外のことも積極的に学ぶことを意識しています。例えば、オープン科目の「起業家養成講座II 1」(商学部設置科目)では、さまざまな経営者の方の話を聞くことで、自身のラーメン店の経営に役立てることができました。特に、株式会社リブセンスで代表取締役社長兼執行役員を務める村上太一さんの創業当初の苦労話が印象的でした。
――学業と経営の両立は大変ではないでしょうか?
定休日を設けていないので、毎日店に立っています。出店して以来、休んだのは今年の1月1日ぐらいですね。目の前のお客さんに最高の一杯を提供するということをいつも意識しており、おいしく召し上がってくださる人たちの顔を思い浮かべると休む気になれないんです。朝早く店に来て仕込みを済ませてから授業に向かう日もあります。何事も一日一日の積み重ねが大切なので、一人でも多くの人にリピーターになってもらいたいという思いで毎日お店を開いています。

厨房(ちゅうぼう)でラーメンを作る藤村さん
――今後の展望を教えてください。
大学を卒業する2025年3月までに、大学の近くに油そば屋を出店する計画を立てています。現在、「マジでうまい油そば」を開発中なんです。早稲田の三大油そばに並ぶ、いや、それ以上のものを必ずや作ってみせます! 自分はオーナーとなり、店舗運営は早大生に任せ、経営を実践的に学べる機会を作りたいと考えています。

試作中の油そば。毎日食べられるヘルシーさを重視し、油ではなく、濃厚な豚骨スープを使用した新スタイルの「スープ油そば」
将来的には、ワセメシ文化を発展させたいと思っています。というのも、早稲田大学の魅力を聞くと多くの学生がワセメシを挙げるほど、早稲田を象徴する文化だからです。しかし、肝心の在学生は基本的に消費者という立場でしかないですよね。もし学生がワセメシ文化の発信者にもなれたら、「学生の学生による学生のためのワセメシ」が実現できるのではないでしょうか。早稲田の文化の発展に寄与できるポテンシャルを大いに感じているので、その期待感を胸にこれからも毎日このブランドの発展のために仕事に励みます。
――最後に、藤村さんの一押しメニューを教えてください。
「東京海老トマト」は、海老とトマトの風味をぜいたくに感じられる一品! スープには、甘みの強いフルーツトマトを丸ごと1個使用しているので程よい酸味で、どんな人でもおいしくお召し上がりいただけます。残ったスープはバケットに染み込ませて食べたり、「チーズ飯」を別途注文してリゾット風にして食べたりすることもできます。もちろん麺との相性も抜群なので、スープの完飲者が続出するのが自慢です。

「東京海老トマト」(980円)と「チーズ飯」(一般:290円、学割:190円)。 また、店内に貼ってあるQRコードを読み取りLINEの友達追加をすると、お得なクーポンがもらえるスタンプカードを表示できる
第877回
取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ)
文化構想学部 3年 浮谷 雛梨
【プロフィール】
埼玉県出身。県立和光国際高等学校卒業。趣味はサッカー。何をするにしても「自分がやる意味」を大切にしており、その思いが「東京海老トマト」の出店にもつながった。
TikTok:@tokyoebitomato.waseda
店舗情報
【店名】東京海老トマト早稲田店
【住所】東京都新宿区早稲田鶴巻町44-45 グランプラス早稲田 102
【TEL】050-6871-9953
【営業時間】11時30分~15時00分、18時00分~21時00分
【定休日】なし
【Instagram】@tokyo.ebi.tomato.waseda
※記事中の価格は全て税込み。