キャリア形成について情報を発信したり、学生の相談に対応したりしているキャリアセンター。学生が社会の中で、また所属する組織の中で存在感のある人物として活躍できる場を自力で選べるように手助けしています。さらにキャリアセンターでは、学生キャリアボランティアStudent Career Volunteer(以下、SCV)が学生目線でキャリアに関する情報発信、イベントの企画・運営も行っています。
今回、大学院に進学することを検討しているSCVの山森南花さん(文化構想学部3年)と村上愛佳さん(文学部4年)が、大学院文学研究科を修了しNHKに入局した大澤穂高さんにインタビュー。「文系学生にも大学院進学を身近な選択肢の一つとしてほしい」と話す大澤さんに、研究と就職活動の両立や、大学院での学びと仕事のつながりなどを伺いました。
就職しても、研究して得た経験を生かせると気付いた
大学院文学研究科 修士課程 2023年3月修了 大澤 穂高(おおさわ・ほたか)
――大学院進学の道を選択した理由や時期について教えてください。

文学部卒業、大学院文学研究科修士課程修了。 NHK(日本放送協会)にディレクターとして入局、ドラマ部に配属。テレビドラマの助監督やラジオドラマの企画などを担当している(写真は、連続テレビ小説『らんまん』の撮影時の様子)
小学生のときに『龍馬伝』(NHK大河ドラマ)を見て歴史に興味を持ったのがきっかけで、大学院に進学して日本史を専門的に学び、将来は研究者か教員になりたいと思っていました。当初から大学院を目指したのは、研究者であれば専門性は必須ですし、教員にも専門性の高い人材が求められる時代になりつつあると感じていたからです。
――修士課程から学者や教員ではなく、就職の道を選択したきっかけは何でしたか?
学部3年の冬から修士1年の冬までの2年間、学会で知り合った研究者の紹介で当時制作が進められていた『青天を衝け』(NHK大河ドラマ)にリサーチ・考証のスタッフとして携わる機会を頂きました。プロデューサーやディレクターと仕事をする中で、皆さん楽しそうに働いていたことが印象的で、NHKで働いてみたいと思ったんです。大河ドラマや教養番組の制作に携われば、研究者ではなくても日本史を研究して得た経験が生かせるのではないか、と。 なので最初から「NHKに入りたい」と感じて就活を始めたように思います。
―― 大学院に進学したからこそ身に付いた力はありますか?
自分の考えを伝えるために裏付けをする力でしょうか。大学院では論文を書く機会が多く、古文書などをよく読んでいたので歴史の史料などを正確に読む力もついたと思います。就活では、NHKの他にも歴史本などを扱う教育関係の出版社など研究で得たものを生かすチャンスがある会社も一応見ていて、大学が好きだったという理由から大学職員としての就職を考えたこともありました。しかし、在学中は「就活のために何かスキルを得る」という意識は特にはなくひたすら研究に打ち込み、大学院で学んだことが結果的に就活に役立ったという感じです。

取材中の様子。(左から)大澤さん、村上さん、山森さん
――研究と就活はどのように両立したのでしょうか?
早くから大学院進学を決めており、学部のときから準備を進めていました。そのため、修士課程に進んだ時点で修士論文を書くための材料がある程度そろっていて、修士1年の夏から就活と両立できていました。確かに同時進行は大変でしたが、ゼミの発表前には「1日何ページレジュメを書く」と数値目標を決めるなど計画的に進めていましたが、とにかく研究はできるときに進めておくことがとても大切だと思います。
――大学院で学んだことが、今の仕事にどのように生かされていると感じていますか?

仕事中の大澤さん(左端)。ドラマの撮影現場で出演者の立ち位置の確認をしているところ。2023年秋、都内スタジオにて
大学院で学んだことが「どう生かされるか」という受け身でいるのではなく、「どう生かすか」という姿勢で仕事に向き合うのが大切で、まさにこれから実践しようとしているところです。
歴史学の役割は、現代社会を相対化し、今後の社会はどうあるべきかという課題に対する最適解を導くことだと私は考えています。歴史学の研究で得たスキル自体が常に仕事に直結するわけではありませんが、研究で体得した考え方自体反映させようと意識しています。いつか歴史学に関心のある自分なりの視点から現代社会を問い直すことができるようなドラマを制作してみたいです。
――大学院生のうちにやっておいた方がいいことは何ですか?
大学院生は研究をすることが本分なので、研究を突き詰めていくことです。研究がおろそかになると、就職活動をしていても何のために大学院に進学したのか、分からなくなると思います。学会での発表や論文を書くことなど、大学院生ならではのアカデミックな経験を積み、研究に打ち込んでみてほしいです。
――大学院進学を考えている学部生や、大学院に在学中の方へメッセージをお願いします!
大学院で研究することは素晴らしいことだと思います。文系学部にいる学生はそのまま就職する人も多いですが、大学院に行くデメリットはないと思っているので、環境が許すのなら進学した方がいいと個人的には思います。そして大学院に進学したなら、研究者の入口に立ったつもりで、何のために研究し、研究で身に付けたものをどのような形で社会に還元していくのか、目的意識を持って取り組んでみてください。

2024年3月、NHK放送センターの玄関にて。(左から)山森さん、大澤さん、村上さん
インタビューを終えて
SCV 山森 南花(やまもり・なみか)
「大学院に進学したからには研究にしっかり打ち込み、目の前のやるべきことに集中する」という大澤さんの姿勢が印象的でした。大学院進学という多数派ではない選択を検討する中で不安を感じることも多いですが、自分の軸はぶらさずに今やるべきことに向き合い積み重ねることが、将来の自分の姿をつくっていくのだなと感じました。
SCV 村上 愛佳(むらかみ・あいか)
私は大学2年生の頃に大学院進学を決めましたが、3年生になると同級生の多くが本格的に就活を始め、焦りを感じていました。大澤さんの言葉を聞き、大学院進学や研究の目的を自身に問い直し、地に足をつけて大学院進学に向けて再び歩み始めることができました。また「学んだことはどう生かされるのかではなく、どう生かすか」という発想の転換に触れ、自分次第で学んだことは無限大に生かせるのだという自分視点での捉え方ができるようになりました。
SCVのInstagram : @waseda_scv.career
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