1922年に慶應義塾大学との最初のラグビー早慶戦が行われてから100回目、関東大学対抗戦での明治大学との早明戦は100周年となる2023年。この記念すべき年、6万人以上収容できるという大舞台、国立競技場で「早慶戦」が11月23日(祝・木)、「早明戦」が12月3日(日)に行われます。
スローガンを『WASEDA FIRST』とした今年のラグビー蹴球部。主将の伊藤大祐選手(スポーツ科学部4年)、副将の永嶋仁選手(社会科学部4年)に早慶戦・早明戦への思いを語ってもらいました。また、主務の鈴木大世さん(基幹理工学部4年)には試合で注目すべき4人の選手についても聞きました。思い切り声を出して応援できる今年、国立競技場で大きな声援を選手たちに送りましょう!

(左から)伊藤主将、永嶋副将。上井草グラウンドにて
『WASEDA FIRST』を掲げ、目指す早稲田のラグビー
スポーツ科学部 4年 伊藤 大祐 (いとう・だいすけ)
主将・スタンドオフ(SO)・センター(CTB)・フルバック(FB) 桐蔭学園高等学校出身
社会科学部 4年 永嶋 仁 (ながしま・ひとし)
副将・フランカー(FL) 東福岡高等学校出身
主将 伊藤×副将 永嶋が語る今年の早稲田ラグビー
――今年のラグビー蹴球部のスローガン『WASEDA FIRST』に込めた思いを教えてください。
伊藤 早稲田が日本一になることが僕らの目標です。キックオフ後の最初のプレー、その試合のファーストタックルからこだわっていく。そのためには練習中でも試合のように意識しなければならないですし、全てにおいて早稲田というチームのために、早稲田を1番に考えて行動する。それら全てを含めた『WASEDA FIRST』という言葉を4年生の総意で決めました。
――そのスローガンの下、今年のチームの強みは?
伊藤 今度の試合はこれを達成しようという意見に対して、みんながしっかりとコミットできる点ですね。
永嶋 大祐が言うように「コミット力」をすごく感じますし、プレー面ではフォワード陣のモール(両チームが立ちながら押し合い、ボールを奪い合うプレー)の強化に春から取り組んできました。夏合宿を経て、対抗戦に入って少しずつ結果もついてきているので、僕たちの武器の一つになっています。

2023年10月14日関東大学対抗戦、青山学院大学との一戦で奮闘するフォワード陣
――では、個人として意識しているプレーは?

相手を振り切り、果敢に攻める伊藤選手
伊藤 僕はとにかくボールに数多く触って、チャンスメークに絡んでいく。それと同時に、常に自分が動いて、チームの空いているスペースや突破されそうなところに立ち、ディフェンスし続けることも心掛けています。
永嶋 大祐の1番の持ち味は、状況を打開してくれるボールキャリーです。チームが劣勢でしんどい場面でも、大祐がボールを持ったら何かしてくれるんじゃないかと、同じフィールドに立っている仲間だからこそ期待してしまいます。応援に来る皆さんも大祐がボールを持った瞬間に、ぜひ注目してください。
僕自身としてはタックルにこだわっています。自分が引いてしまったら他の選手もネガティブになってしまうんじゃないかと思うので、特にファーストタックルでは相手をとにかく向こう側に倒す! そんな意識を持って試合に臨んでいます。
伊藤 仁のプレーは一見目立たないですけど、チームにとって1番必要なプレーです。チームとして本当にありがたいですね。
節目の早慶戦、出し切る早明戦
――11月23日のラグビー早慶戦は今回が節目の100回目ということもあり、国立競技場開催です。例年以上に特別な早慶戦になるのではないでしょうか?

2021年11月7日帝京戦(Bチーム)で勝利したことで永嶋選手は奮起したという。赤黒ジャージだけでなく、「ラグビー以外の部分でもお互いを認め合えるような早稲田に憧れました。浪人生が多かったり、伝統の下で新しいことに挑戦したりできる組織なのかなと思って志望しました」 と語る
伊藤 早慶戦は本来の実力を出した上で、それ以上の何かがないと勝てない試合です。特に今回は国立開催。慣れ親しんだ秩父宮ラグビー場と違って、緊張感からいつもと違うプレーをしてしまう恐れもあります。雰囲気に飲まれないことも大事になります。
永嶋 小さい頃から見てきた早慶戦の節目の年で試合ができることはすごくうれしいですね。毎年、両チームがどんな順位であっても早慶戦は別物で、互いの力が拮抗(きっこう)した試合になります。だからこそ、自分たちができる準備をしっかりしていい状態で臨みたいです。
――では、12月3日の早明戦に向けての意気込みは?

2023年1月8日全国大学選手権大会の帝京大学戦、20-73と大敗を喫したことでマインドを変えたという伊藤選手。早稲田を選んだのは、「自分がどこでプレーすれば1番成長できるかを考え、帝京や明治など、強敵相手にどう打開していくかが求められる早稲田でこそ成長できると思った」から
伊藤 明治の方が高校時代から注目されていた選手や体の大きい選手も多いですが、早稲田としては持っている力の100%全てを出し切る。恐れるものは何もないという意識で向かっていくだけです。
永嶋 早明戦も本当にどちらに勝利が転がるか分からない試合が毎年続いています。一つのミス、一つのプレーが本当に大切になってくる試合だと思います。
――大一番という意味では、先日まで開催されたW杯(ワールドカップ)では早稲田の先輩たちが何人も活躍されました。何か刺激を受けた点はありますか?
伊藤 僕は2年先輩の長田さん(長田智希選手、2022年スポーツ科学部卒)の活躍から大きな刺激を受けました。長田さんが早稲田のグラウンドでもがいていた姿を目の前で見ていますので、学生時代に試行錯誤することは必要なのだとモチベーションをいただきました。
大事なのは、今の自分がやるべきことをしっかり遂行すること。早慶戦・早明戦、そして大学選手権に向けて、目の前のことをしっかり頑張ろう! というマインドになっています。
永嶋 自分の場合は下川さん(下川甲嗣選手、2021年スポーツ科学部卒)。実は小学校のときからラグビースクールが一緒なので、最後の最後でメンバー入りしたことはうれしかったですし、励みになりました。
写真左:2023年8月、フィジー戦での活躍で代表の主軸に飛躍した長田選手
写真右:2023年9月、W杯チリ戦のモールで耐える下川選手(左から2人目)(いずれも写真提供:共同通信)
――W杯を受けて注目度は例年以上に高まっています。応援に来る学生に向けてメッセージをお願いします。
伊藤 「ラグビーはルールが難しい」と思われがちですが、シンプルに人と人とがぶつかり合うスポーツは珍しいはず。そのぶつかり合いはルールが分からなくても楽しめます。僕らの必死のぶつかり合いから何かを感じてもらえればうれしいです。
永嶋 野球の早慶戦と違い、どこで声を出していいのか分からない、という人もいると思います。実は、どこで声を出してもいいのがラグビーの面白さです。そして、グラウンドで戦っていると本当に皆さんの声援はよく聞こえます。一度見始めたらつい見入ってしまうラグビーの魅力を楽しんでいただければと思います。

早慶戦・早明戦に懸ける思いを色紙に込めて。「監督に、チームに恩返しするしかない」という伊藤選手。永嶋選手は「情熱を持って戦います!」と意気込む
選手と一緒に戦う気持ちで応援をしてほしい
基幹理工学部 4年 鈴木 大世(すずき・たいせい)
主務 玉川学園高等部出身
――ラグビー蹴球部主務の役割を教えてください。
練習や試合の環境を整えることが基本的な仕事です。また、分析係やトレーナーなど、さまざまな担当に分かれている学生スタッフを統括する立場でもあるので、日々のスケジュールを組んで監督やコーチと相談を重ねています。
――まさにチーム全体を見ている立場だと思います。その主務から見て、今年のチームの特徴は?

2023年10月14日、青山学院大学との試合中。常に全体に気を配っている
プレー面ではフォワード陣の強化が著しいです。毎試合、モールでトライを奪い、スクラムでしっかり勝つ戦い方ができているのは昨年にない部分です。もちろん、グラウンドを広く使い、バックス陣を中心とした素早いパス展開を得意とする伝統的な「バックスの早稲田」も健在。ルーキーの矢崎由高(スポーツ科学部1年、ウィング<WTB>・フルバック<FB>)など将来が楽しみな存在もいて、フォワードでもバックスでも、どちらでもトライを取れるチームになってきたと思います。
――鈴木主務が特に期待している選手について、それぞれの推しポイントと併せて教えてください。
スポーツ科学部 4年 スタンドオフ(SO)・センター(CTB)・フルバック(FB)
伊藤 大祐 桐蔭学園高等学校出身

2023年9月24日関東大学対抗戦で筑波大学との試合。得意のランでトライを狙った
桐蔭学園高等学校時代は高校日本一をけん引したスター選手として注目されたのが伊藤です。早稲田に入ってからはケガに泣かされることが続いてきましたが、今年はここまで調子も良く、どの試合でも勝利に絡んでいます。
彼のすごい点は、バックスの複数のポジションがこなせる対応力。春は司令塔のスタンドオフ、今はセンターを務めるなど、そのユーティリティー性は本当に素晴らしいです。中でも、相手守備を突破する「ラン」は敵チームにとっては脅威であり、早稲田にとってはチャンスが生まれる瞬間です。本当に必要不可欠な選手だと思います。
社会科学部 4年 ロック(LO)
細川 大斗(ほそかわ・だいと) 早稲田実業学校高等部出身

2023年9月24日の筑波大学戦。ボールキャリーで前進する様子
彼の魅力はコンタクトです。タックルでは低く当たってしっかり相手を倒し、そこからマイボールになってチャンスが生まれる場面がよくあります。早稲田実業時代に主将を務めた経験もあり、体を張るプレーで周りを引っ張っている印象です。
今年は細川以外にも、川﨑太雅(スポーツ科学部4年、プロップ<PR>)など4年生のフォワード陣の奮闘が光ります。今まで4年間継続してきたプライドを持ってプレーできている。そういったメンタル的な要素も、今年のフォワード陣の好調につながっているのだと思います。
スポーツ科学部 3年 スクラムハーフ(SH)
細矢 聖樹(ほそや・せな) 國學院大學栃木高等学校出身

2023年10月1日成蹊大学との一戦で、相手選手にタックルされながらも振り切る細矢選手
細矢はこの秋、スクラムハーフでプレーしていますが、春まではウイング(WTB)。だからこそ、スピードとステップは群を抜いています。スクラムハーフは密集地帯からボールをさばかないといけないので、スピードがすごく重要なピースです。その意味でもウイングで培った特性が生きていますね。
もう一人、島本陽太(スポーツ科学部4年、スクラムハーフ<SH>)も注目です。同期としては島本に頑張ってほしいと思う反面、下からの突き上げもチームにとっては重要です。その切磋琢磨(せっさたくま)、競い合いがいい刺激になっているんじゃないかと思います。
スポーツ科学部 3年 フッカー(HO)・フランカー(FL)
安恒 直人(やすつね・なおと) 福岡高等学校出身

2023年10月14日青山学院大学との一戦、ラインアウトでのスローインをする安恒選手
安恒は高校時代バックスで、入学当初はフランカー。そして現在はフッカーと、ポジション変更を繰り返してきた珍しい選手です。もともとバックスだったからか、ボールを運ぶ能力もあり、モールからの得点シーンに期待です。
また、入学当初は一番下のチームからのスタートでしたが、そこからタックルを武器に少しずつ評価を上げ、ついにAチームに上り詰めた選手です。周りに「下からでも行けるぞ」と見せている姿勢も素晴らしいですし、チーム内での信頼も厚いです。
――今年は早慶戦、早明戦ともに国立競技場開催です。応援に来る学生に向けてメッセージを。
国立という舞台も大きなモチベーションですが、今年は久しぶりに声出し応援が解禁された中での試合です。ラグビーが分からなくても、名前を呼んでもらえるだけで選手はうれしく、力に変わります。
もちろん、「ワセダー!」と叫ぶだけでもいいですし、手拍子でも構いません。観客席とグラウンドの距離が近い秩父宮ラグビー場は地鳴りのような声援もすごいですが、大きな会場でも選手に声は届きます。ぜひ、選手と一緒に戦う気持ちで、国立競技場という舞台で一緒に盛り上がりましょう!
取材・文:オグマナオト(2002年第二文学部卒業)
X(旧Twitter):@oguman1977
試合写真提供:早稲田大学ラグビー蹴球部
試合スケジュール
【早慶戦】11月23日(祝・木) 14時キックオフ @国立競技場
【早明戦】12月3日(日) 14時キックオフ @国立競技場
ラグビー蹴球部Webサイト:https://www.wasedarugby.com/
X(旧Twitter):@waseda_rugby
Instagram:@wasedarugby_1918
▶チケット販売について(関東ラグビーフットボール協会)
▶観戦ルールとマナーについて(関東ラグビーフットボール協会)
【次回フォーカス予告】11月27日(月)公開「ジェンダー入門特集」