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早稲田にアーカイブズあり(前編)

早稲田大学歴史館 助教 佐野 智規(さの・とものり)

はじめに-「早稲田に? 歴史? あり? 」

「早稲田に歴史あり」というタイトルは、あらゆる謎を含んでいます。

まず「早稲田に」の「早稲田」とは、どのようなものでしょうか。「学校法人早稲田大学」のこと? 「東京専門学校」や旧制大学は含むとしても、高等学院や本庄高等学院等といった附属校も含まれるのでしょうか。多くの系属校や、かつて存在した工手学校・専門部・高等師範部などは? あるいは「早稲田キャンパス」のこと? それは狭すぎます。地名としての「早稲田」? ちなみに會津八一記念博物館では、旧石器時代の「早稲田」についての展示が行われています。

【企画展】 早稲田大学を訪れた旧石器人 ―校地内遺跡出土資料から― 2023年9月28日(木)~11月12日(日)

▲所沢キャンパスの地下に眠るお伊勢山遺跡や宮林遺跡、早稲田キャンパス中央図書館の地下に所在した下戸遺跡など、早稲田大学の校地内遺跡から出土した資料を展示している

次の謎は「歴史」です。「歴史」は何を指すのでしょうか。過去記事を見ると、さまざまな人物や出来事、制度や文化が扱われています。けれども皆さんご存じの “あの事件” や “あの人物” が取り上げられていないことに気付くでしょう。そういった物事は「まだ歴史ではない」のか、あるいは注意深く「歴史」から省かれているのでしょうか。何を語るかということ以上に、何を語らないかが意味を持つこともあり得ます。

新たな視角と新たな資料―『早稲田大学百五十年史』第一巻刊行を迎えて

▲『早稲田大学百五十年史』では、『早稲田大学百年史』刊行から数十年の間に発見された資料と、研究の発展で新たに明らかになったこと、時代の変化や学問を取り巻く世情の変化によって新たに注目されるようになったテーマなどについて、「150年目の現地点」ならではの視角によって歴史を振り返っている

最後の謎は、「あり」という力のこもった断定です。「あり」というその根拠は何なのでしょうか。どうして「なし」ではないのでしょうか。言い換えれば、「早稲田に歴史あり」と宣言することを可能にする前提条件とは、どのようなものなのでしょうか。

アーカイブズのご紹介

謎に満ちたこの「早稲田に・歴史・あり」を可能にする前提条件が、歴史館に設置されたアーカイブズです。アーカイブズというと、歴史資料をたくさん収蔵した施設のことかな、と思う方も多いでしょう。しかしここでは、施設としてのアーカイブズそのものについてではなく、それに関わる仕事、すなわち資料を施設に収蔵するまでのプロセス、そして収蔵した後の多岐にわたる一連の作業を、前編・後編に分けてご紹介しましょう。

  1. 受け入れ-資料をいただく

寄贈資料の受け入れ

歴史を語るために必要不可欠なもの、それは歴史資料です。早稲田大学では毎年多くの資料を受け入れていますが、ここでは歴史館への「寄贈」のケースを見てみます。

ご自身の所有物について、早稲田に縁があるとお考えになった篤志の方から、歴史館に対して寄贈の打診があったとします。アーカイブズ部門の担当者は、寄贈の意向が確実なものであるか、また歴史館の収集ポリシーに合致するかどうかを確認し、簡単な調査結果を添えて、歴史館の資料選定会議に受け入れの諾否を諮ります。慎重な検討の結果、受け入れ決議がなされたものは、資料をお送りいただくよう、関連書類の送付とともに寄贈を打診された方に対してご連絡します。

  2. 整理計画の策定-少ないリソースで合理的な作業を

資料を受領したら、整理計画を策定します。資料の秩序(受け入れ時点での配列)をできる限り尊重しつつ、どの粒度でもろもろのデータを取れば後々データベースで検索がしやすいか、あるいは整理着手前に清掃や殺虫、除菌、防カビ、補修などの処置が必要かどうか、それにかかるコストや時間などについて、チーム全員で相談します。いわば医療現場におけるカンファレンスです。月に1、2度、作業の進捗を連携しつつ、どの資料群についてどの作業に着手するか、優先度や難易度を明確にして、工程を適宜再設計します。

移管資料リストと資料現物の照合

なお、受け入れ資料には「寄贈」の他に「移管」という形態もあります。これは学内の部署から、文書などの管理を引き継ぐことを指します。移管資料は寄贈資料に比べて総量が多いので、整理計画の設計は、それ自体一苦労です。また整理途中の資料の情報が漏洩しないよう、機密保持に細心の注意を払います。

続きは2023年12月21日に公開予定です。お楽しみに。

▼後編はこちら

早稲田にアーカイブズあり(後編)

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