早稲田大学には在学生が作成した「性的同意ハンドブック」がある。『What’s Consent?―よりよい人間関係を築く方法』と題された小冊子は、Webサイトからも日本語版・英語版をダウンロードできるのでぜひ読んでみてほしい。
「性的同意」というのは、身体接触や性に関することを話題にするときに、お互いの同意が必要であることを伝えるための言葉である。ハンドブックにも記されているように、「内輪ノリ」を重視する「大学生っぽい」文化では、性的同意は軽視されがち。「みんなで恋バナ」、「下ネタ嫌いな人いないよね?」、「競うように悪ノリ」…。こうした同調圧力の中、友人ともっと仲良くなりたい! という大学生ならではの気持ちも手伝い、アルコールや身体接触を強要する雰囲気がつくられていくということは、私自身も大学生だったときに身をもって経験してきた。
性的同意ハンドブックを作成した学生チームは、2022年度から性的同意について学びを深めるための出張授業型ワークショップを、早稲田大学の約50の授業で実施してきた。参加型のアクティビティーは受講生にも好評で、飲み会の場面を再現するロールプレイでは、同意なく後輩にからんでくる先輩役と、その先輩をどうにか止めようとする学生役を演じながら、ハラスメントを阻止するための具体的なテクニックについて学ぶことができる。
同意なきノリが一体感をつくることもあるだろう。でも、ノリやアルコールがなくても人間関係を築くことができることを、私たちが知ることも大切だ。誰もが被害者にも加害者にもならないために。
(YS)
第1149回