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鉄道に心酔して40ウン年 朝の通勤電車のわがルーティン

国鉄(当時。現在のJRグループ各社)の小郡機関区にて。C57形蒸気機関車の機関助手席に座る高校生の筆者。現場で実際の車両に触れられるのは最高の喜びでした

理工学術院教授 近藤 圭一郎(こんどう・けいいちろう)

早稲田大学理工学部電気工学科(当時)を卒業後、財団法人鉄道総合技術研究所(JR総研)に入所。16年程勤務した後に、千葉大学工学研究院、その後、2018年から早稲田大学先進理工学部電気・情報生命工学科でパワーエレクトロニクスや電気機器の教育、研究に従事。電車、電気自動車をはじめ電気で動くものとそこで使う電力の制御の研究を通じて、カーボンニュートラルに貢献したいと願う

もともと鉄道、特に車両に興味がありました。中学生になりたてのころ、中央線快速に投入された201系電車は、スイッチのONとOFFだけでモータを制御する、と鉄道雑誌に書いてありました。しかし、中学生の知識では到底理解はできません。その仕組みをどうしても知りたい、という思いが、電気工学への興味になり、その後の仕事(研究)を選ぶきっかけとなりました。当時知りたかったメカニズム(サイリスタ消弧の原理)は、今では、講義で教えられるようになりました。

趣味であった鉄道は、今では仕事=オンになってしまいました。しかし、通勤時間は業務時間内ではないということで、毎朝最寄り駅から高田馬場に向かう道すがら約30分間の乗車中のルーティンを紹介します。

最寄り駅のホームで、自分の乗る列車のドアが閉まる時間を確認します。首都圏のJRの電車は主要駅でのみ運転時刻を管理し、それ以外の駅の時刻は運行上の目安、とされています。従って、表示された時間より早くドアが閉まることもあります。毎朝、この実態をチェックします。私の最寄り駅は表示時刻の00秒頃、閉まることが多いようです。これは一駅手前が主要駅で、そこでの出発時刻は正確であるためと推測しています。首都圏の通勤電車は、短い駅間を走るので、着発時間の自由度を持たせ、運転士の定時運行の負担を軽減しています。シンプルですが、効果的な方法であります。

写真左:デビューして間もない201系電車(1981年頃)。サイリスタという半導体スイッチのON/OFFでモータが回る仕組みに強く引かれました
写真右:JR東日本の351系特急電車(中央線あずさ号)と松本駅にて(1993年10月)。営業開始前に新しい電車に乗れるのは役得ではあるものの、お金(給料)をもらって乗るのと比べると、お金(運賃)を払って乗る方が当然快適に感じます

私のルーティンはまだ続きます。道中には通勤電車の車両基地があります。その路線では1編成10両で約70編成の電車が運行されています。朝の通勤ラッシュ時間帯、車両基地はほぼ空になりますが、2~3編成の列車が残されています。そのうち、1編成は検査のために検修庫という建物の中に収容されていることを確認します。

電車はおおむね月に1度、約半日をかけて消耗品のチェックや、動作の確認のための「交番検査」を行います。自動車や家電製品のように、生産台数が多い製品は、品質維持のコストを製品価格に包含させることが可能です。しかし、鉄道車両は国内の年間の生産両数は約2,000両で、1両の値段は約1億円です。輸出分を合わせても日本の鉄道車両工業の市場規模は5,000億円程度です。この市場規模ですと、市場価格の範囲で十分な品質保証を行うことは難しいです。鉄道事業者が多くの優秀なエンジニアを雇用するのは、この品質保証のためです。毎朝、検修庫に電車が止まっているのを見ると、今日もこうして電車が時間通り動くことのありがたさを感じます。

今まであまり意識しませんでしたが、こうして振り返ってみると、子供の頃から親しんでいる鉄道は日々の一部になっているようです。

通勤風景の1ショット。首都圏の通勤電車は、世界的にも他に類を見ない時間に正確な運行と、高い輸送力を実現しています。それを支えるのがダイヤと検査の仕組みなのです

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