世界でも認められるようになった「アフリカの巨人」ナイジェリアの芸術
大学院社会科学研究科 修士課程 1年
オシグウェ ケファス チエメカ
誰もが明るくカラフルなドレスを着ている国、ただすれ違っただけの歩行者同士が一生の友人になってしまうこともあるフレンドリーな国、公用語の英語以外に500以上の言語が飛び交う多様性の国。そんな場所に住んでいることを想像してみてください。
西アフリカのサハラ砂漠の南側に位置するナイジェリアは「アフリカの巨人」と呼ばれています。その理由は多くありますが、アフリカで最も人口が多く、多くの種類の民族が住んでいるからでしょう。また、人口の約半分が19歳未満で、地球上で最大の若者人口を誇っています。
ナイジェリアと聞くと、アフリカ屈指の強豪サッカーチームを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、この国について語るときに私が触れずにいられないのが、芸術の大国であるということ。ナイジェリアが、エンターテインメントや音楽などの芸術的分野で、そのセンスが抜きんでているのをご存じでしょうか。
写真左:ナイジェリアの多様な民族を象徴するかのような、色とりどりのテキスタイル
写真右:日本でもなじみあるナイジェリアのサッカーナショナルチーム
まず、私自身、多くの影響を受けたのが「ノリウッド映画」です。「ノリウッド? ハリウッドやインド映画のボリウッドの間違いでは?」と思う方もいるかもしれません。実はナイジェリアは、年間2,000本以上の映画が作られるほどの映画大国。その映画は、ナイジェリアの「N」とハリウッドになぞらえた「ノリウッド映画」と呼ばれ、世界的な認知も広がっています。アフリカの社会問題をテーマにしていながら、結末はハッピーエンドで締めくくる作品が多く、娯楽性が高いのが特徴。ナイジェリア国民の間だけでなく、他のアフリカ諸国にも輸出されて人気を得ています。今では、Netflixでも多くの作品が配信されていますので、ぜひノリウッド映画でナイジェリア人の生活をのぞいてみてください。
2016年のトロント国際映画祭のオープニングも飾った、ノリウッド映画最大のヒット作といわれる『ウエディング・パーティー』。入念に計画した盛大な披露宴が元恋人、家族、招かれざる客に引っかき回されるドタバタコメディー
また、ナイジェリアは「アフロビート」と呼ばれる音楽の分野でも、国際的に高く評価されています。アフロビートとは、ファンクやジャズの流れをくむナイジェリア起源のアフリカ音楽で、アフリカのパーカッションを用いたテンポよく明るい音楽。私が好きなアーティストは、大御所のフェラ・クティで、アフロビートのパイオニアとして知られています。また、最近では第65回グラミー賞にノミネートされたバーナ・ボーイもお勧めです。ハリウッドの大ヒット映画『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022年)の劇中にも彼の曲が採用され、世界的にブレイク中。新旧アフロビートを聴き比べ、その変遷をたどるのもいいかもしれません。
ナイジェリアは長年、石油と農業が主な経済基盤となっていますが、近年ではハイテク産業の集積地となっていて、日系企業も多く進出しています。私はナイジェリアの日本大使館に3年間勤務する中で、日本企業と関わる業務に携わる機会があり、その経験からナイジェリアと日本をつなぎ、両者の可能性を広げることに貢献したいと思うようになり、早稲田大学に留学しました。
ナイジェリアの素晴らしい音楽文化を広げるべく、ICC(異文化交流センター)のイベントで、ジャンベというパーカッションを来場者にレクチャーしました。大隈ガーデンホールにて
経済的な発展やインターネットの普及に伴い、ナイジェリア独自の文化が世界でも認知・評価されるようになりましたが、日本人の中にはナイジェリアを遠く未知の国と感じている方も多いかもしれません。ぜひ、ナイジェリアの映画や音楽から、その豊かなパワーに触れてみてください。
以前SNSに投稿したナイジェリアの首都アブジャでの1シーン。日本から来たくまモンと見晴らしいのいい丘をハイキングし、アブジャ国立競技場(写真右)を案内している様子です(笑)
◎ ナイジェリアはこんなところ ◎
ナイジェリア連邦共和国(通称ナイジェリア)は、アフリカ大陸西南部に位置する連邦制共和国。首都はアブジャ。西にベナン、北をニジェール、北東がチャド、東はカメルーンとそれぞれ国境を接し、南はギニア湾に面している。面積は約92.4万平方キロメートルで、日本の約2.5倍。