災難が「サル」。福岡市民の“推し”お守り
社会科学部 4年
高見 知里(たかみ・ちさと)

福岡出身の人は、本当に福岡が大好きでたまらないといった人が多いと感じます。私もそんな人間の一人です。
都会すぎない空気感、たくさんのおいしいもの、単純で分かりやすい電車の便利さなど、全てをいとおしく思います。そんな愛すべき福岡名物の中から、今回は福岡県福岡市の住宅によく見られる、猿のお面についてご紹介したいと思います。
こちらがその猿のお面になります。福岡市民の多くは、これを玄関先に飾っています。「サル」=「去る」ことから、「災難が去る」「幸せを招く」との意味合いがあります。また「猿は木から落ちない」ことから受験生にも人気があるようです。

猿面。1,000円(税込み)。博多人形の職人が一つ一つ手作りで納めている。玄関の外壁に掛けることで、災難を避け幸福をもたらすと言われている

猿田彦神社。天照大御神(あまてらすおおみかみ)の命により天孫降臨した神様ニニギノミコトを道案内した猿田彦大神を祭っている
このお面は、福岡市早良区にある猿田彦神社で授与しています。60日ごとの庚申(かのえさる)の日に行われる庚申祭(こうしんさい)の日にお参りをすると、猿のお面を授けていただけます。その年初めての庚申祭である1月の「初庚申祭」では特にたくさんの方がお参りに来ます。縁起物である猿のお面を、年の初めにもらいたい方が多いようです。
猿の絵が描かれた金太郎飴(あめ)、「猿飴」が露店で売られていることもあり、私も幼い頃からよく買っていました。ユニークな猿の顔の飴が袋に入って並んでいる様子は、誰もが心奪われます。
私が住んでいたのは早良区のお隣、西区の姪浜(めいのはま)という街で、猿のお面を飾る文化がよく根付いている地域の一つだったのでしょう。わが家のある集合住宅の各玄関先には、おそろいで猿のお面が飾られていました。県外の方は干支(えと)の飾り物かと思われることが多いようですが、干支に関わらず、毎年ずっと飾っています。サイズは手の平ほど。一つずつ手作りのため、さまざまな表情があり、何とも言えずかわいらしいのです。
福岡を訪れる機会があったら、おいしいご飯を楽しんだ後、玄関先の猿のお面探しをするのも面白いかもしれません。

境内に入ると、赤いかぶり物をした猿像が出迎えてくれる
◎ 福岡県福岡市はこんなところ ◎
福岡県西部に位置し、人口は約162万人(2022年4月1日現在)。福岡県の県庁所在地であり、政令指定都市。東京23区を除いた全国の市で、横浜市、大阪市、名古屋市、札幌市に次いで5番目の人口を擁し、九州地方の行政・経済・交通の中心地として、同地方最大の人口を有する。また、辛子めんたいこ、博多ラーメン、もつ鍋など、食の宝庫としても有名。