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カメラ歴約2年で総フォロワー10万人 早大生写真家が写し出す日常

「写真を通じて、身の回りの日常の美しさを届けていきたい」

教育学部 4年 井上 哲志(いのうえ・さとし)

「心を動かす、何ともない素敵な日常」をテーマに、写真家「イノウエ」として活躍する井上哲志さん。現在SNSの総フォロワー数は10万人を超える井上さんですが、実はカメラ歴はわずか2年ほど。SNSの活動にとどまらず、フォトブック企画の実施や写真教室の開催など、写真家として精力的に活動する井上さんに、カメラを始めたきっかけ、SNSでの反響、今後の目標について聞きました。

――井上さんがカメラを始めたきっかけを教えてください。

「早稲田祭2019」にて、所属する早稲田祭運営スタッフでパレード企画を担当した

カメラを買ったきっかけは、純粋に「きれいなものを撮りたい」という思い、そして高校生の頃から映像に興味を持っていたことです。また、所属するサークル内に一眼レフを持っている友人が多く、カメラが身近な存在であったことから、自分も始めてみようと1年生の12月に購入しました。しかしその直後、新型コロナウイルス感染拡大により、遠出して撮影することが難しくなり、次第にカメラは遠い存在に…。

コロナ禍でサークル活動も休止するなど、自分の中で大学生活が止まってしまったような感覚に陥りました。そんな中で「何か面白いこと、新しいことをしたい」という思いに駆られていたところ、机の片隅でインテリア化していたカメラを発見。このカメラで何か面白いことをと、2020年5月からSNSで写真の投稿を始めました。

――井上さんは、「日常」をテーマに写真を投稿されていますね。

周りの日常や身近なものにフォーカスを当てて、撮影することを一つの方向性にしています。これは、コロナ禍で遠出が難しい状況で、地元の千葉県・九十九里で撮影を始めたことが大きく影響しています。九十九里という田舎で撮影する中で、素朴な部分をいかに良く見せるかという点を意識した、いや、意識せざるを得なかったように思います(笑)。

また、僕が投稿を始めた当時、SNSでは東京の夜景や自然の大絶景など、いわゆる「映える」写真が席巻していました。そんな流行に逆らう形で、僕自身のありふれた日常にフォーカスし、何か一つ意思を投じることができればと考えていました。僕も、写真を始めた当初は、東京スカイツリーからの夜景などを撮っていましたが、コロナ禍により地元で多くの時間を過ごす中で、撮る題材や意識が変化していったんです。

九十九里浜で撮影した井上さんお気に入りの一枚。九十九里は名前のごとく砂浜が長く続き、よく見ても終わりが見えない点に魅力を感じるそう

――これまでの写真家としての活動の中で、特に印象に残っていることを教えてください。

印象に残っている活動は二つあります。一つは、「次世代スター発掘キャンペーン」というフォトコンテストで審査員特別賞を受賞できたこと。コンテストには6,000近い応募があり、1次審査で30人ほどに絞られました。2次審査では、Canonのサービスを使ったフォトレシピ(※)をSNSに投稿する課題がありました。2次審査に進出でき、「これは大きなチャンスだぞ」と気を引き締め、多くのフォトレシピを投稿しました。結果は審査員特別賞。この受賞をきっかけにCanonとつながることができ、写真家としてのターニングポイントになりました。

二つ目は、フォトコンテスト後にCanonとフォトブックのプロモーション企画を行ったことです。この活動は、自分が初めてメーカーとタッグを組んで行った大きな企画でした。フォトブックは自分にとって初の試みだったので、担当の方に「フォトブックってそもそもどんなものですか」など初歩的な質問をしたことが記憶に残っています(笑)。手取り足取り教えていただいたおかげで企画もうまくいき、Canon以外からも仕事を頂けるようになりました。

これら二つの活動を通して、写真家としてのスタートラインに立つことができました。2019年12月にカメラを購入してから、2020年5月にSNSへ投稿開始、6月にはフォトコンテストでの受賞、9月、10月にフォトブック企画の実現と2020年は僕にとって激動の期間でした。

(※)撮影コミュニティーサービス”fotomoti(フォトモチ)“では、写真とその撮影コンセプトやコツ、使用機材といった撮影に関連する情報を「フォトレシピ」として投稿できる

 

写真家人生が始まって1年も満たない中でのCanonとのフォトブック企画に挑戦。打ち合わせからとても緊張したと語る

――Twitterに投稿を始めてわずか4カ月半でフォロワー数1万人を達成し、今ではInstagramと合わせて10万人以上に。投稿は多くの「いいね」を獲得するなど反響を得ていますが、どのような点が評価されていると思いますか。

テーマとしている「日常」を美しく見せている点と、光の捉え方でしょうか。

僕がフォーカスを当てているのは、電車の車窓から見える日常の景色など、街のふとした瞬間。そこで暮らす人にとっては、ありふれた日常で、わざわざカメラに収めないような身近な部分を美しく切り取ることを意識しています。日々暮らす中に潜む美しさを引き出した点を、多くの方から共感していただけているように思います。

光の捉え方についてですが、僕の写真はコントラストが低く、フワッとした描写が特徴です。写真撮影での重要な点として、構図や光の捉え方が挙げられます。僕は、あえて逆光寄りで撮影し、光をフワッと入れることを心掛けています。アニメの世界ではよく使われている表現方法で、特に新海誠監督の作品が特徴的です。新海監督の作品は、太陽の光がフワッと入っているシーンが多いと思うのですが、この表現方法を写真に落とし込んで撮影する方は、実は少ないんです。というのも逆光で撮影すると、白飛びしてしまうことが多いためです。カメラでは珍しい手法ですが、逆に評価していただいているように思います。

浅草・上野・日暮里エリアで撮影した、井上さんお気に入りの投稿。Twitterは新規の方にも写真を見てもらえるチャンスが多く、横のつながりを広げる意識で投稿しているという

――井上さんは、フォトコンテストでの受賞など短期間で実績を残されていますが、どのように写真の技術を磨きましたか。

カメラはSONY α7Ⅲに単焦点レンズをつけ撮影している。ノスタルジックな写りをするためお気に入りのレンズだそう

主に独学で勉強しました。たくさん写真を撮ることはもちろんですが、インプットも重要だと思い、他の人の作品を積極的に見るようにしてきました。SNSには毎日多くの写真が投稿され、自分より技術に秀でた方がたくさんおり、いわば学び放題の環境です。例えば、「この構図ってどんな撮り方をしているのだろう」、「この写真の色はどのように出しているのだろう」など、気に入った写真をかみ砕いた上で、自分が九十九里で撮影してきた写真に落とし込み、技術を磨いてきました。

――最後に、写真家としての目標を教えてください。

「日常をより素敵に」という自分の軸を変えることなく、活動を充実させていきたいです。写真に対する反響が増え、周囲の環境が変化する中でも、これまでの2年間、自分の核となる軸は変化していません。この軸が、自分の強みだと思うからです。今後はSNSでの活動はもちろん、より多くの人に写真を届けるために、積極的に活動していきたいと思います。「スタイルは変えずに、やることを大きく」これが今後の目標です。

また、大学卒業後は民間企業に就職予定です。写真家としての活動は趣味、副業の範囲にはなりますが、写真を通じて、日常の素晴らしさを伝え続けていきたいです。

第811回

取材・文:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
教育学部 4年 長谷川 拓海

【プロフィール】

千葉県出身。東邦大学付属東邦高等学校卒業。趣味は写真撮影、漫画鑑賞。早稲田祭運営スタッフにも所属。最近は高田馬場など大学周辺でも撮影を行っているそう。

Twitter:@metaphor_472
Instagram:@metaphor_472
note:https://note.com/metaphor_472/

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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