計量分析を通じてできる限りの「真実」に近づきたい
大学院商学研究科 修士課程 2年
李 春江(り・しゅんこう)
私は知識を得ることに貪欲です。中国の大学では情報理工学部に在籍し、経営や経済、情報理工関連の授業をたくさんとって、知識を機械的に頭に入れました。機械的に知識を詰め込むことは必ずしも悪い学習方法ではなく、培った知識は将来必ず役に立つと信じています。しかし変化が激しい今の時代、情報はすぐに陳腐化するのでそれだけでは通用しません。単なる情報として知識を覚えるよりも多様な場面に応用できる考え方、フレームワークを身に付けることが重要だと思います。そこで私は考え方、分析のフレームワークを学ぶために計量経済学を自分の専門分野として選択しました。
計量経済学は統計的手法を用いてデータを分析し、社会経済現象のメカニズムを解明する学問です。計量経済学を学ぶことにより、表面的な印象のみで判断せず、仮説を立て本質を見抜くためのツールを習得することができます。例えば、データによりアイスクリームの売り上げが多い年ほど、溺死者が増えるという事象があるとします。では、溺死者を減らすためには、アイスクリームを規制すればよいのでしょうか? 実はデータをよく分析すると、アイスクリームの売り上げと溺死者には「暑さ」という共通の要因があることが分かります。暑いからアイスを買いたい人が増えます。そして、泳ぎに行きたい人が増えるので、溺死者も増えるのです。このように本当の要因を掘り出すことができます。
自分で考えた仮説は真実ではないかもしれません。それでも計量経済学のフレームワークで考えることには利点があると思います。まず、仮説に基づく予測が当たらなかったときに、なぜ当たらなかったかを検証できます。すると現状の理解が深まるし、仮説の修正につながるかもしれません。結果として、玉石混交の情報を取捨選択し、自分の判断軸に基づき考え行動することができるようになります。
計量経済学的なアプローチは、さまざまな分野で活用することができるので、自分が興味を持つトピックの分析に使えます。私は今、ゼミで原子力発電所の建設が町の豊かさに影響を与えるかどうかを研究しています。原発の建設は国からの補助金に関連付けられ、地元の産業と雇用に利益をもたらすかもしれません。その一方で、核廃棄物や放射性物質、さらには事故の可能性といった地元住民の健康と生活を脅かすリスクが存在します。豊かさの尺度は一つではないため、この問題は簡単ではないかもしれませんが、計量分析を通じてできる限りの「真実」に近づきたいと思っています。

早稲田キャンパス11号館地下1階、頂新国際グループ記念学生読書室で作業することも
ある日のスケジュール
- 07:00 起床(失敗し、二度寝)
- 08:00 起床
- 09:00 図書館で文献を読む
- 12:00 昼食
- 13:00 データで実証分析(音楽を聴きながら)
- 18:00 キャンパス内を散歩する(実証分析のことを考えながら)
- 19:00 夕食
- 21:00 『リングフィット アドベンチャー』をやる(現在のlevel:333)
- 23:00 入浴など
- 24:00 就寝
写真左:東京 2020 オリンピック競技大会にて。オリンピック放送機構(OBS)のスタッフとして働いた仲間と(右が筆者)
写真右:自分の部屋にはクレーンゲームで取ったぬいぐるみや、大好きな『鬼滅の刃』のイラストを飾っています。和室は、梅雨の時期は湿気が気になるものの、居心地が良いです