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同級生と無料学習塾を立ち上げた早大生 子どもたちのために奮闘中

「未来ある子どもたちが、家庭の事情によらず公平に教育を受けられる社会を作りたい」

学習支援×居場所づくりサークル Grow Seeds Waseda
代表 教育学部 2年 梅木 星輝(うめき・せら)

大学付近のレンタルスペース『みちくさくらす』にて

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、大学入学後キャンパスに通えない日々が続いた現2年生。そのような状況で、教育学部教育学科初等教育学専攻の同級生25人と共に、中学生を対象とした学習支援を行うサークル「Grow Seeds Waseda」を立ち上げた梅木星輝さん。今年1月、その取り組みが全国紙で取り上げられると、大きな反響を呼びました。サークルの代表として、無料学習塾を運営する梅木さんに、学習塾を立ち上げたきっかけや活動内容、そして今後の目標などを聞きました。

——現在のGrow Seeds Wasedaの活動について教えてください。

サークル名は、子どもを「種」に見立て、個性豊かな花を咲かせたり、立派な大木になったりしてほしいという思いから、梅木さんが命名した

中学生を対象に、平日週2回、早稲田大学付近のレンタルスペースで17時から20時まで個別指導で勉強を教えています。この活動を計画した当初は、通塾料金を月1,000円に設定する予定でしたが、クラウドファンディングを通じて多くの方からご支援いただき、現在は完全無料で運営できています。

また、当初は、対象を早稲田近隣の中学生に限定することを想定していましたが、全国紙での掲載をきっかけに、各方面からお問い合わせをいただきました。現在、生徒の中には千葉県や埼玉県から1時間かけて通っている子もいます。

——梅木さんが、Grow Seeds Wasedaを立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。

きっかけは2つあります。1つ目は、コロナ禍でキャンパスに通うことができない中、人の役に立ちたいと思い、行政が主催する学習支援事業と、子ども食堂でボランティアを始めたこと。ボランティアに携わる中で、生活困窮世帯向けの公的な学習支援の対象にはならないものの、金銭的事情により塾に通いたくても通えない子の存在を知りました。また、コロナ禍での失業・休業により、経済的に困窮する家庭も増加しています。貧困に苦しむ子どもたちの現状を目の当たりにして、心が痛みました。

毎週土曜日に、地元の千葉県松戸市のこがねはら子ども食堂でボランティアに携わっている。
子ども食堂の代表の方は、梅木さんが最も尊敬している人なのだそう(左端が梅木さん)

2つ目は、実践的な教育を学ぶ機会が減少していたこと。僕が在籍している初等教育学専攻では例年、カリキュラムの一環で小学校訪問を行っていましたが、昨年はコロナ禍で中止になってしまったんです。それならばと、自ら実践的教育機会の場を作り、子どもたちとの接し方や勉強の教え方などを学びたいと考えました。

僕は、今の状況を悲観するのではなく、常にポジティブに捉えるようにしています。コロナ禍で時間が多くあり、実践的教育機会が減少していたからこそ、Grow Seeds Wasedaの結成につながりました。

——その後、メンバーをどのように集めましたか。

オンライン授業で仲良くなったクラスメートに呼びかけ、初等教育学専攻の同級生を中心に活動メンバーを募りました。最初こそは教育支援に関心のない人もいたと思いますが、理解してもらうべくPowerPointを用いて活動目的や理念などを説明しました。そのかいあって、初等教育学専攻の同級生のうち25人から賛同をもらい、2020年11月にサークルGrow Seeds Wasedaを発足。それ以降、オンラインで定期的に話し合って計画を進め、現在は40人のメンバーが中心となって塾を運営しています。

——梅木さんは教育学部に在籍し、ボランティアでも子ども食堂などで支援を行っていますが、子どもの教育に関心を抱いたきっかけは何ですか。

もともと子どもと関わることが大好きで、教育の道を志しました。早稲田大学に入学してからは、これまで必死に勉強し、受験を乗り越えてきたこともあり、今まで自分が学んできたことや勉強の仕方などを子どもたちに伝えたいと思うようになりました。

現在、教育学部では初等教育課程の学習指導法などを学んでいます。中でも、細水保宏先生(教育学部非常勤講師)の「初等算数科教育法」の授業が印象に残っています。細水先生は、子どもたちが楽しみながら学べることを大切にしており、授業で教わった学習指導法はサークルでも実践しています。

活動場所の『みちくさくらす』で、生徒に指導している様子。
指導する大学生は当番制で回しており、1日あたり5人が担当する(右端が梅木さん)

——Grow Seeds Wasedaの活動で大切にしていることはありますか。

学習カードはパソコン作業が得意なメンバーが作成した(クリックして拡大)

子どもたちや保護者の方と密にコミュニケーションを取るように心掛けています。

例えば、「学習カード」というものを導入しています。子どもたちは塾に来て一番に、このカードにその日勉強することを記入します。そして授業終了後、指導する大学生が子どもたちへコメントを書きます。そのやり取りを繰り返し、月末に学習カードを保護者の方にお渡ししているんです。塾で子どもが何を勉強しているのか、どんな大学生が教えているかを伝え、保護者の方に少しでも安心してもらいたいと考えています。

このような工夫が、生徒と保護者の方からの信頼につながっていると思います。アンケートでも「娘が勉強に前向きになってくれました」「塾に通い始め、成績が上がりました」などうれしい報告を多くいただいています。

 

写真左:子どもたちと接するときは、目線の高さを合わせることを意識しているという
写真右:塾で使用する備品などは、クラウドファンディングで得たお金で購入したり、メンバーが以前使っていたものを活用したりしている。出版社から参考書を寄付してもらうこともあるそう

――これまでの活動を振り返って思うことや、今後の展望について教えてください。

立ち上げ段階では、このコロナ禍で僕たちの活動が世の中に受け入れられるのか、とても不安でした。それでも、全国の方々からご支援いただき、私たちの塾に毎週通っている子どもたちの姿を見ると、自分たちの活動は確かに“世の中で必要なもの”であると感じます。本当に「やってよかった」という一言に尽きます。

現在は、定員を10人として学習支援を行っていますが、今後はその生徒だけでなく幅広い支援を行いたいと思っています。コロナ禍で活動の制限がありますが、これからは体験型学習なども取り入れていきたいです。また今後、全国的にも教育支援の輪が広がっていくことを期待していますし、僕自身でその輪を広げていきたいです。 決して非のない、未来ある子どもたちが、経済的事情により教育機会を奪われることのない社会を目指して活動し続けます。

Grow Seeds Wasedaのメンバーで、早稲田キャンパス16号館前にて撮影。前列の5人で幹部を務めている(前列中央が梅木さん)

 

第797回
取材・文・撮影:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
教育学部 3年 長谷川 拓海

【プロフィール】
千葉県出身。本郷高等学校卒業。活動に尽力するうちに、今ではボランティアが趣味になったという。 現在は、小学校、中学校・高等学校(数学)、特別支援学校の教員免許取得を目指している。最近、大学院進学を視野に入れるようになったと語る。

【学習支援×居場所づくりサークル Grow Seeds Waseda】
中学生を対象に平日週2回、大学付近のレンタルスペース『みちくさくらす』にて17時から20時までボランティアで学習支援を行っている。「少しでも活動に興味を持った早大生はぜひご連絡ください! 活動見学も受け付けていますよ」(梅木さん)
Twitter: @GrowSeedsWaseda
Instagram: @growseedswaseda
Mail: [email protected]

早大生のための学生部公式Webマガジン『早稲田ウィークリー』。授業期間中の平日はほぼ毎日更新!活躍している早大生・卒業生の紹介やサークル・ワセメシ情報などを発信しています。

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