“To be or not to be? That is the question.” シェイクスピアの戯曲「ハムレット」で最も有名な台詞(せりふ)である。この台詞は訳すのが非常に困難なことでも有名である。草創期の早稲田大学で教鞭(きょうべん)をとった坪内逍遥は「世に在る、在らぬ、それが疑問じゃ」と直訳した。現在では「復讐(ふくしゅう)をすべきかすべきでないか」あるいは「生きるべきか死ぬべきか」とハムレットが逡巡(しゅんじゅん)する意訳が多く見られる。
COVID-19の世界的な蔓延(パンデミック)により早稲田大学でも対面授業や部活動・サークル活動の制限が長引いている。さまざまな我慢を強いられている学生の皆さんの不満は、われわれ教員・職員も深く共有するものである。活気のあるキャンパスの日常を取り戻すにはパンデミックの収束が必須であり、そのためにはみんながワクチンによる予防接種を受けるほかにない。
着々とワクチン接種が進み、パンデミックの収束が見えつつある欧米諸国と比べ、65歳未満の「若者」へのワクチン接種のめどすら立っていない、わが国の嘆かわしい状況はさておき、私が懸念するのはワクチンの副反応や恐怖を煽(あお)るプロパガンダがメディアやSNSを中心に拡散していることである。
うわさやデマ(※1)に惑わされずに信頼のおけるソース(※2)に基づいて、ワクチンのリスクと恩恵を判断できるかどうかこそが現代社会に必須な「知性と教養」ではないだろうか? 困難な状況においても皆さんの知性と教養が健やかに育まれることを願って。
“To vax or not to vax?”
(※1)著者の意見が必ずしも正しいとは限りません。
(※2)信頼のおけるワクチンに関するソースの例
(SY)
第1101回