コロナ禍でアニメを見るようになった。最初の緊急事態宣言で家にいるようになった息子が、動画配信サービスの画面を一緒にのぞき込み、「これ面白いよ」、「みんな見てるやつだ」と唆(そそのか)されたのがきっかけだ。実に多くの良作が日本に存在することをあらためて実感している。
アニメ作品は人気を博した漫画が基となるものが多いが、やはり動きや音楽や色彩も伴い、漫画よりインパクトが強い。中には社会問題に切り込む、あるいは哲学的なものもあるが、あくまでもエンターテインメントとして楽しみながら問題を共有できるところがいい。「この感動を学生に伝えたい」、「授業で使えそうだ」と思うものの、そこで躊躇(ちゅうちょ)する自分がいる。書物ではないものを授業で使い、大学生に薦めて良いのだろうかと。
それでもあえて言わせてもらえば、多くの学生に、楽しみながら、アニメを自らの生活や人生に、また、歴史や現代社会になぞらえてみてほしい。何でもできそうなアニメの主人公も、一寸先の未来や来るべき結果に恐れ慄(おのの)く平凡な若者であることが多い。時空間を楽々越えるアニメは、今の自分が変われば未来も変わることを教えてくれる。そしてどんなアニメでも、何だかおかしな現状や社会のあり方を変えるのは、普通を普通と思わない感覚をもった者の力である。それは「異能者」や「免罪体質」かもしれないし、変人や「バカ者」かもしれない。
この年になってアニメのキャラやその生き方に憧れてもいいのではないかと、私はひそかに「領域展開」を試みているのである。
(H)
第1099回