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映像制作歴12年超の早大生「VFX技術で体験としての価値を創造したい」

「クリエイターとして自分の世界を広く深く」

教育学部 2年 三宅 智之(みやけ・ともゆき)

皆さんはテレビドラマや映画などで、現実には存在しないシーンや、あり得ない事象を目にしたことはありませんか? 教育学部に在籍する三宅智之さんは、3DCGやVFX(※)制作を通して現実には存在しない世界をリアルに表現しています。ICT(情報通信技術)分野に関する独創的な人材の創出を目的とした総務省の「異能vation」プログラムに高校1年次に最年少で採択され、その後も『動画甲子園~高校生映像コンテスト~』(日本テレビ)や『沼にハマってきいてみた』(NHK)で作品を発表するなど、さまざまな場面で活躍されてきました。そんな三宅さんに映像制作の魅力や学生生活、今後の目標について聞きました。

※ビジュアル・エフェクツ(視覚効果)の略称。撮影された実写映像素材を基に、新たな映像効果を追加する技術のこと

――映像制作を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

きっかけは、小学1年生のころに見た『ALWAYS 三丁目の夕日』(山崎貴監督)という映画のシリーズでした。最も感銘を受けたのはシリーズ2作目の『ALWAYS 続 三丁目の夕日』の冒頭で、昭和の町並みがゴジラによって破壊され、三輪トラックが空を飛び、東京タワーがなぎ倒されるシーン。“巨大なモノの破壊”という、現実にはあまりないことを映像化することの魅力を知り、人工物のはかなさやモノが壊れる動きの美しさ、面白さに心引かれるようになりました。そのメーキング映像の中で山崎貴監督が「VFXは実写と模型とCGを組み合わせて、現実には撮影が難しい映像を作る技術だ」ということをおっしゃっていて、VFXという技術に興味を持ち、映像制作を始めるようになりました。最初は家にあったカメラを使ってできる実写撮影や、工作の延長線上でできるような模型を作っての撮影など、いわゆる「特撮」みたいなことから独学で少しずつ始めていきました。勉強していくにつれて『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズは、独特な大気の表現、実写パートとのなじませ方、色味、質感を出すためにいろいろな要素がうまく調整されていることが分かり、何度見ても勉強になります。特にシリーズ3作目の『ALWAYS 三丁目の夕日’64』のオープニングカットはカメラワークや空気感が衝撃的でした。そのようなVFXを作ることを最終目標にしています。

――映像制作を続ける中で、特に印象に残った出来事はありますか。

『DESTINY 鎌倉ものがたり』の撮影現場で山崎貴監督(左)と一緒に

これは全くの偶然なのですが、『ALWAYS三丁目の夕日』シリーズのプロデューサーである奥田誠治さんは、私と同じ中学校の出身で、一度卒業生として中学校の講演会にいらしたことがありました。その際、先生に奥田さんを紹介していただいたことが縁で、高校生のころに奥田さんに映画『DESTINY鎌倉ものがたり』(山崎貴監督)の撮影現場に連れて行ってもらったことが一番印象に残っています。山崎監督の映画は、自分が映像制作を始めた原点でもありますし、VFXやCGを多く使う現場だったので、本当に楽しかったですね。プロの現場はそれまでメーキングの中でしか見られなかったので、実際に肉眼を通して見ることができ、あらゆるモノや場所をスタジオの中に作り上げる映画美術の素晴らしさや技術力を実感しました。また、現場のスタッフの方たちともいろいろとお話ができ、ご飯を一緒にいただいたりもして、その現場の雰囲気を含めて全てが貴重な経験でした。

――最年少で総務省の「異能vation」プログラムに採択されるなど、既に目覚ましい活躍をされていますが、三宅さんの考える映像制作の魅力はどのようなところでしょうか。

映像制作に限らず、ものづくり全般に言えることだと思うのですが、自分の外にあるものを自分の内に取り込んで、それを自分なりに融合したり解釈したりすることで拡張し、それをまた外に向けて表現するのが楽しいところです。例えば、「魔法を使いたいな」とか、「現実にはない世界に行ってみたいな」とか、そういう自分の頭の中だけにあるふわふわした楽しい空想世界を、再現して人に見てもらえるのが映像制作の魅力だと思います。

中学3年生のころに作成したVFX短編映画『2045』

――現実には存在しないものに“リアル”を感じてもらうのは難しいと思います。その際に工夫していることがあれば教えてください。

私はCGとは現代の絵画技法の一つだと考えているので、やっぱり観察をすることが一番重要だと思います。デッサンする時に、描くことよりも被写体を長く見ることが大事になるのと同じで、現実にはない空想の世界だったとしても、リアリティーを持たせるためには現実を観察しなければなりません。例えば、空想の建物だったとしても、その建物を見たときに、「本当にありそう」と思わせるためにはリアルな汚れが必要だったり、現実にはないような近未来的なビルでも、エアコンの室外機が置いてあると生活感が増しますよね。そんな現実のものを取り入れるためにも、とにかく観察する必要があるんです。だから普段散歩している時にビルの雨だれがどうなっているかとか、サビがどう垂れていくかとかを見て、それを映像を作る際に取り入れています。

散歩をしながら描いているスケッチ。渋谷109(写真左)と屋上設備(写真右)

――映像制作にのめり込む中で、教育学部複合文化学科へ進学したのは意外な印象もあります。どういった理由があるのでしょうか。また、学生生活について教えてください。

CGが好きということもあって、理系に進もうか悩んでいた時期もあったんです。でも、CGの技術に関しては、独学と、仕事などの実践を通して学ぶのが自分に合っていると感じていました。また、その時の自分に必要なものがもっと多元的な教養だと感じていたため、教育学部の複合文化学科を選びました。いわゆる「道具の使い方」に関しては、仕事をする中で覚えていけばいい話なので、大学生で時間があるうちに、自分の中の世界観をどんどん複雑化させていきたいなと思っています。

実際に入学してみると、比較的自由に自分の興味のあることなどを幅広く学べていて、複合文化学科は自分に合っていると思いました。特に面白かったのが、「複合文化学の建築物」という必修科目です。「建築物」とはいっても建築について学ぶのではなくて、幅広い視点から文化について切り込んでいく授業で、大学での学びが楽しいと感じた授業でした。また、最近は3DCGを扱う映像制作会社やテレビ番組での映像制作に携わるアルバイトをしています。高校生までとは違い、プロの方から意見がもらえたりして、他人の目線が入ってくることで、新しい気付きがたくさんあります。

昨年は高校の卒業式も大学の入学式もなく、いつの間にか大学生活が始まり、気付いたらサークルの新歓も終わっていました。授業は全てオンラインで、誰が受けているかすらも分からない授業が春学期は特に多かったので、少し残念な気持ちもありました。その一方で、オンラインの恩恵として時間がたくさんできたので、映像をじっくりと学ぶ時間が増えたり、CGのバイトをガッツリできたり、CG・映像系情報サイト「CGWORLD.jp」のライターの仕事にも取り組めました。大学に関しては、まだ授業と図書館くらいしか利用できていないのですが、今後キャンパスに通えるようになったらもっと施設やサービスを活用していきたいです。

――近年はさまざまなメディアが新しく登場してきています。これから映像制作は社会の中でどのような価値を持っていくと思いますか? 今後の夢や目標についても聞かせてください。

映像ってかなり現実の体験に近い感覚を味わえると思うんです。もちろん小説も音楽もそうですけど、作った人の目線で世界を見られるという面白さが映像には特にありますよね。そんな「体験としての価値」があるからこそ、今後も映像は生活の中で必要とされると信じています。

高校2年生のころに制作した作品『購買戦争』。空間を操れる能力を得た高校生が校内を暴れまわるカット。教科書やロッカーなど、人以外はほぼ全てをCGで作成したという

表現の方法は映像だとしても、そこには何でも詰め込めると思うんです。なので、目指すところとしては、広く深く学んでいって、いろんなことを表現できるようになりたいです。これから人工知能(AI)が進歩して、今自分がやっているCGの細かい作業などはどんどんAIに置き換わって自動化していくと考えています。そのため、クリエイターとして生きていくためにも、大学生としての時間の許す限りはいろいろなことを学んでいきたいと思っています。

第782回

取材・文:早稲田ウィークリーレポーター(SJC学生スタッフ
社会科学部 3年 勝部 千穂

【プロフィール】

東京都出身。早稲田大学本庄高等学院卒業。小学1年生から映像制作を始め、2016年度に総務省の「異能vation」プログラムに採択。本庄高等学院の後輩へ向けた卒論報告会では、「VFX根性論―個人で起こす映像革命」を発表。趣味は、映画鑑賞やデジタル画を描くこと。CGに関しては、スティーブ・ライト著の『ノードベースのデジタルコンポジット―コンポジターのための理論と手法―』(ボーンデジタル)を繰り返し読むことで理解を深めているという。

Twitterアカウント:@38912_DIGITAL

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